6月17日(木) 20:00〜
「あの、お風呂って借りてもいいですか?」
「ん?いいけど……」
部屋に置いてあったサイドテーブルを引っ張り出して、勉強をしていた氷室さんがそう言ったのは、氷室さん特製のうどんを食べ終え、一応市販の薬を飲んでベッドに横になっていた時だった。
「ありがとうございます」
「お風呂も溜めたかったら、溜めてもいいぞ」
「本当ですか!?」
「あぁ」
「じゃあ、遠慮なく溜めさせてもらいますね」
「どうぞ」
氷室さんは一旦部屋から出て行って、お風呂場に向かい、お湯を張り始めると、再び部屋に戻ってきた。
「何分くらいで溜まりますか?」
「そうだな。だいたい15分くらいかな」
「分かりました。タイマーセットして、その間、勉強しておきます」
「本当に勉強熱心だな」
「今日、早退しちゃいましたからね」
「ごめん。俺のせいだな」
「いえ、私が勝手にしたことですから。むしろ、迷惑じゃなかったですか?」
「迷惑なわけないだろ。来てくれてめっちゃ助かったよ。ありがとう」
「なら、よかったです。どういたしまして」
本当に氷室さんが来てくれて助かった。
もしも来てくれなかったら、ここまで早く体調が良くなることはなかっただろう。
この調子だと明日は学校に行けそうだな。
「このお礼はちゃんとするよ」
「お礼なんて、いいですよ。これでお相子なんですから。前回は私が看病してもらいましたから」
「なら、また氷室さんが体調を崩したら、次は俺の番だな」
「その時はよろしくお願いしますね」
氷室さんはウインクをして、そう言った。
そのしぐさがあまりにも可愛くて、俺の顔が火照っていくのが分かった。そのまま氷室さんと見つめ合っていたら、また熱が出てきそうだった。
と、そこで氷室さんがセットしていたタイマーが鳴った。
「お風呂、見てきますね」
「あ、あぁ……」
寝よう……。
氷室さんがお風呂に入っている間に寝てしまおう。
今日はもうこれ以上『氷室熱』を浴びてはいけない……。
俺の体がそう言っていた。
氷室さんが笑顔で部屋に戻ってきた。
「お風呂溜まってました。なので、入ってきますね」
「うん、いってらっしゃい」
「はい。行ってきます。王野君は寝ててもいいですからね?私、お風呂長いですから」
「分かった」
というか、そのつもりだった。
氷室さんには申し訳ないけど、寝る。
「それじゃあ、今日はもうおやすみですかね」
「そうだな。おやすみ。の前に、氷室さんの寝るとこ決めてなかったな」
「それなら、大丈夫です」
「え?」
「とにかく、大丈夫ですから、王野君は寝ててください。分かりましたね?」
「う、うん」
なぜかよく分からなかったが氷室さんの寝るところは決まっているらしい。
本人がそう言っているのならいいか。
もしかしたら、俺が寝た後に家に帰るかもしれないしな。ないと思うけど……。
「今度こそ、お風呂行ってきますね」
「うん。ゆっくりと温まってきて」
「はい!」
氷室さんが部屋から出ていくのを見送ると、俺は布団を目深に被って静かに目を瞑った。
☆☆☆
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