第183話 クリスマス編part5 二人で観る映画⑤

 そして12月15日。

 姫香が主演を務めた映画の公開日を迎えた。

 そして、俺と姫香はさっそく映画を観るために映画館に足を運んでいた。

 

「そういえば、歩たちからすでによかったって連絡が来てたぞ」

「私のところにも真美さんから連絡が来てました」


 そう言って姫香は嬉しそうに肩をすくめた。

 俺達は昼の部のやつに行くことにしていたが、歩達は朝の部を見に行ったらしく、しばらくスマホの通知が鳴り止まなかった。

 電源を落としてやろうかと思ったくらいだ。

 そして映画館到着し、二人分のチケットとポップコーンと飲み物を買って列に並んだ。

 

「姫香は本当に人気者なんだな」

「もしかして疑ってたんですか?」


 マスクをしてるから分からないが、おそらく頬を膨らませている。

 姫香は当然、変装をしていた。 

 地味な服装、マスク、サングラス、帽子、その様は一見しただけでは姫香だとは誰も分からないだろう。

 ただ、その特徴的な白い髪の毛は出したままなので、じっくりと見られたら姫香だと気が付く人がいるかもしれない。

 

「別に疑ってたわけじゃないけど、改めてこの行列を見ると実感するなと思っただけ」

「安心してください。翔君の彼女は人気者ですよ」

「それは良いんだか、悪いんだかな」


 俺は苦笑いを浮かべてストローに口を付けた。

 それから姫香と雑談をしていると列は徐々に進んでいき、俺たちは真っ暗な館内へと入った。

 足場に気を付けながらちょうどいい感じの席に座る。

 上映時間になるころには席はすべての席が埋まっていた。 


「いよいよですね」

「そ、そうだな」

「もしかして、緊張してますか?」

「少しだけな。一応、俺も出てるし」


 声だけだけど……。


「楽しみですね。どんな風になってるか」

「姫香はもう知ってるだろ」

「はい。知ってますよ。かっこよかったですよ」

「そっか。ならよかった」


 なんて安心してると上映時間になりスクリーンの幕が開いた。

 

☆☆☆


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