第162話 体育祭編part16 百メートル走②

(姫香視点)


 心臓がドキドキなっています。

 百メートル走がスタートし、私の順番が少しずつ近づいてきます。

 翔君には緊張してないと言いましたが、実はもの凄く緊張してます。

 今にも心臓が飛び出そうです。

 今まで感じてきたどの緊張とも違った緊張感です。

 ふと、テントの方を見ると真美さんと目が合い、その口は「頑張って」と言ってるように見えました。

 私はそんな真美さんに「頑張ります」と口パクで返しました。

 そして、いよいよ私の番が回ってきました。

 体育委員の山崎さんのに案内されスタートラインに立ちます。

 足には少し自信がありますが、この緊張でうまく足が回ってくれるかは分かりません。

 山崎さんの「位置についてよーい。ドン!」の掛け声で一斉にスタートしました。

 出だしはいい感じでした。私は七人中三位でした。

 半分を過ぎるまでその順位をキープしてました。

(そろそろ、ギアをあげましょう。ゴールで翔君が待っていますからね)

 一番最後に走る翔君はゴールのところに立って私のことを応援してくれてました。

 ここまで来るともう緊張はどこかに飛んでいってしまっていました。

 私の足は思い通りに動いてくれて、スピードをどんどんと上げていきます。

 二位の人を抜いて、そのまま一位の人と並びました。

 あと少しでゴール。


「姫香頑張れ!」


 翔君の応援により最後の力を振り絞りました。

 一位の人を抜き、ゴールテープを切ると翔君に抱きつきました。


「ひ、姫香!?」


 きっとこんなことをしたら生徒たちは大騒ぎでしょう。翔君も目を見開いて驚いていますが関係ありません。


「やりました!私一位です!」


 この嬉しさは私の一番大事な人に伝えたいのですから。

 

「そうだな。おめでとう」

「ありがとうございます。次は翔君の番ですね!」


 私が満面の笑みでそう言うと、翔君は優しく微笑んで「頑張るよ」と言い、頭をポンポンとしてくれました。

 翔君を送り出すと私は一位の人が座っている列の一番後ろに座りました。


「姫香ちゃんもなかなか大胆だね〜」


 さっきのを見られていたらしく山崎さんが近くにやってきました。


「山崎さん。嬉しくて、つい」

「いいね!その調子でどんどん翔を魅了していってね!」

「いいんですか?」

「もちろん!」

「分かりました!頑張ります!」


 私が頷くと山崎さんは満足気な顔をしてスタートラインに向かって行きました。

 後数組もすれば翔君の番になります。

 私は自分が走る時よりも緊張していました。

 きっと翔君ならやってくれるはずです。私はそう確信していました。

 そして、翔君がスタートラインに立ちました。


☆☆☆

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る