第88話 ロボット破蓋1
「ろぼっとってなんですか!」
ナナエは俺に訪ねたのと同時に大口径対物狙撃銃を発砲する。しかし、ロボットの形をした破蓋は背中に付けた――なんだっけ、確かスラスターとかいうのを吹かせてすばやく避けてしまった。
(人型機械だよ! しかもあれは見た感じ戦うための兵器だ!)
「人の形をした兵器……!? 確かに映画とかの宣伝でそういうものはみたことがありますがっ!」
再度ナナエは発砲するがこれもかわされる。この破蓋、やっぱりかなり動きが俊敏だ。
ロボット破蓋。アニメとかで出てくる人型機動兵器ってやつだ。ただ主人公とかが乗っているようなイケメンな顔立ちでかっこいい羽とかが生えているようなのではなく、丸い顔とか全体的にずんぐりむっくりしてるダサめでさらに1つ目の序盤に出てくる雑魚ロボみたいなのである。
ナナエはロボット破蓋に照準を定めつつ、
「破蓋は元になっている無機物がありましたが、まさか兵器のものが現れるとは……しかし、このような兵器は見たこともありません」
(いや兵器は兵器だろうが、こいつは現実の兵器じゃないと思う)
俺が即座に否定すると、ナナエは眉をひそめて、
「……どういうことですか?」
(あれは架空の兵器だよ。フィクションとかで見るやつ)
「フィクションってなんですか」
(創作物)
「空想の産物を元にしている破蓋なんて聞いたこともありません」
ナナエの疑問に俺も頷く。確かに妙だ。破蓋の存在も目的も謎だから断言はできないが、日用品が元ネタの破蓋ばっかりだったのにフィクションを元にした破蓋が現れるのはしっくり来ない。有機物の破蓋は今までなかったが、それを通り越して実態がないものから発生した破蓋? そんなのがありえるのか?
――そして、一番のひっかかりどころは俺はあのロボット破蓋の元ネタを知っていることだ。
(いいか。あいつはマシンガンみたいなのを持ってる。恐らくそれで攻撃してくるから気をつけろ」
「ましんがんってなんですか」
(機関銃だよ。連射できるやつだ。そこそこ距離が離れていてもこっちに攻撃できるぞ)
「……おじさんは何かあの破蓋について知ってるんですか?」
(説明するのが面倒だ。今は――)
「!」
俺がそういう前にナナエは一気に階段を走り始める。同時にヴィヴィヴィヴィンと変な音が聞こえてきた。
そう、あのロボット破蓋が持っているマシンガンは確かこんな音を鳴らしていたはず。
さらに多数の銃弾がナナエをかすめて大穴の壁に被弾していく。激しい衝撃で壁の破片が飛び散り土煙が上がった。
ナナエは走りながら真下のロボット破蓋の姿を確認する。いつの間にか浮上をやめ、マシンガンを発砲しこちらを攻撃し続けていた。
「おじさんの言ったとおりでしたね……! 装填数とかはわかりませんか?」
(すまんがそこまではわからねえ)
「なら、無限にウチ続ける可能性も考慮しておきます」
ひたすらナナエは走り、その後ろを銃弾が直撃していく。途中でタイミングを見て、階段を登ったり降りたりして交わし続ける。
『ナナちゃん大丈夫!? そっち行って加勢しようか!?』
耳につけていた通信機にヒアリからの声が届くが、
「いえ、この程度なら問題ありません。もう少し相手の戦力を確認したら呼びます!」
『危なくなったらすぐに呼んでね!』
一旦ヒアリからの連絡を終了する。あまりヒアリに戦闘させたくないが……そんな事を言っている場合ではない。
ここでナナエは大口径対物狙撃銃を構えて足元で浮かんでいるロボット破蓋に向けて2発発砲する。
ロボット破蓋は背中についているスラスターを更かして俊敏に交わした。
だが。
「ここっ!」
ナナエは間髪入れずにもう一発発砲した。その銃弾はロボット破蓋が前の二発を避けた先に向かって綺麗に向かった。そして、見事にロボット破蓋が手に持っていたマシンガンに直撃する。
少ししかロボット破蓋の動きを見てなかったのに完璧に見切って、銃弾を当てる。相変わらず大したやつだ。
しかし、破蓋は核以外を攻撃したとしても即座に再生する。当然、ロボット破蓋のマシンガンも破蓋の一部だからあっという間に修復されてしまった。
(核を壊さない限り無理っぽいな)
「ええ。しかし、もう核の位置は見えています」
ナナエの言う通り、ロボット破蓋のへその部分には赤い玉があった。あそこが核だろう。核がどこにあるのかわからない面倒な破蓋と違って丸見えである。
やがてロボット破蓋がマシンガンを再び発砲し始める。それを走って避けつつ、
「威力はこちらの対物狙撃銃よりも上です。しかし、気になるのは発砲音が全然違いますね。火薬を使っているとは思えない音です」
(確かレールガンだ)
「れーるがんってなんですかっ」
かなり激しい銃撃を受けたのでナナエは一旦大きく飛んで大穴の反対側の階段まで一気に移動する。ロボット破蓋はこちらの動きが予想できなかったのか発砲をやめて、大穴内部をぐるぐると飛んでこちらの様子を伺っていた。
この間に俺は記憶の位置をほじくり返し、
(確か火薬じゃなくて電気とか磁力とかで弾を発射するんだよ。だから音がぜんぜん違うってうっすらと聞いた覚えが……)
「近未来兵器の感じがしますね」
ナナエの言葉にはどこか余裕を感じた。相手は新型の破蓋の割には落ち着いている気がする。
ここで耳につけた通信機で連絡をとった。
「ヒアリさん、お願いします」
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