第42話 適性試験
修繕作業が終わって数日後、破蓋が来ない平穏な日常が続く中、学校で適正値の測定試験が行われた。
神々様から力を与えてもらえるかどうか測るための試験とかいうから、てっきり宗教儀式みたいに滝壺で水を浴びたり、オカルトパワー全開みたいな試合みたいなのをすると思いきや、内容はただのペーパーテストで拍子抜けだ。
質問事項に答えたり、提示された事柄で簡単な論文を書いたりするだけだから、h暇でたまらん。ナナエが試験を受けている間、俺もその内容が見えていたが、よくわからないので面倒だから考えずにただ見守っていた。
ナナエは結構緊張して試験を受けていた。他の生徒達もかなり緊迫した空気で臨んでいる。なんせ、この適正値が低いと家に送り返されるので必死なのだろう。
そんなこんなで2時間の試験が終わる。
「疲れました」
ナナエは机に突っ伏してしまった。
――――
翌日、適性試験の検査結果が戻ってくる。
担任(高等部の生徒)が封筒に入った結果を生徒に返して行っている。ナナエはそわそわと自分の名前を呼ばれるのを待っていた。
(ずいぶん早いな)
「そうですか? こんなものだと思いますが」
(病院での検査とかは結果が一週間後とかよくあるからな。俺もモヤモヤしながら待っていたもんだが)
「英女の適正値検査と病気を一緒にしないでください――」
「ミチカワさん」
「はひっ!」
突然名前を呼ばれてナナエは変な声を上げてしまった。やれやれ。
顔を真っ赤にしながらそそくさと結果を受け取り、自分の席に戻ってくる。しかし、封筒を開けずにじっと見つめたまま動かない。
ほどなくして休み時間のチャイムが鳴ったので、ナナエはそそくさと外に出て老化の隅に行く。人前で見たくないようだ。
しかし、それでもなおナナエは封筒を開けようとはしない。
(なんだよ、結果見ないのか?)
俺がそう言うと、
「……見ないでくださいよ? なんだか恥ずかしいので」
(その気持ちは理解できるがお前が見たら俺にも見えちまうから無理)
「じゃあ今すぐこの場で眠ってください」
(無理を言うなって。なら今は開けずに夜に俺が寝たあとで見ればいい)
「それはそうなんですが……むむむむ」
ナナエはそわそわとしながら、
「……結果が気になって仕方がありません」
堪え性がなさすぎる。重要な結果だからさっさと確認して楽になりたいってのはわかるが。
ここでナナエは頭を振って、
「いちいちおじさんの目を気にしていたら話が進みません。ここは覚悟を決めます」
そう言って封を破って結果を見た。
グラフだの点数だのいろいろ書かれていて俺からはよくわからない内容だった。一方ナナエの頬が緩んでいることに気がつく。
(もしかして上がったのか?)
「はい。ここに適正値が書いてあるでしょう? 前回よりも1割ぐらい上がってます」
(下がるかもとか言ってたのに上がってたのかよ。こっそり試験勉強でもしていたのか?)
「前にも言いましたが、適正値はそんなものでは上がりませんよ」
(じゃあなんでだよ)
ナナエはぐっと拳を上げて、
「つまりこれはおじさんという人として駄目な部分を知ったために、相対的に私の人徳が上がり適正値上昇につながったということですね!」
そう自信に満ちた声を上げる。
(そういうことをすぐ言い出すから適正値が低いんだと思うぞ)
「フフフ、適正値上昇、私の人徳上昇、人間としての各上昇、フフフ……」
俺のツッコミは機嫌が良すぎるナナエには届かなかった。
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