第14話 敵襲

 …………

 だが、その後重い沈黙が場を支配する。気まずい。何か話を変えないと……


(そうだ。はきゃくってなんだよ。聞いたことない言葉なんだが)

「破壊の『破』と焼却の『却』をあわせて破却です。造語ではなく普通にある単語ですよ」

(聞いたことねぇな……まあ俺の知らない言葉なんて普通にあるだろうけど。そういや、こないだそのでかい銃をぶっぱなすときに破却しますとか言ってなかったか? あれも英女の呪文のなにかか?)

「え、あのそれは……」

(?)


 ナナエがなぜかもじもじし始めたかと思うと、


「特に意味はありません。ああいった方が当たるような気がするのでおまじないのようなものです」

(えー、あれ意味ないのかよ。『破却します!』とかキメていたのに)

「う、うるさいですね! 破蓋を確実に倒すためには気合を入れた方がいいんです。現に撃ち漏らしたことは一度もありませんからね! そんなことより実技の授業中なんですから真面目に訓練しますよ!」


 ふんとそっぽを向くナナエ。いつもの調子に戻ったようだ。

 その後、ナナエは対物狙撃銃を発砲し正確に目標を破壊し続ける。ただし、威力が引くところを見ると狙って撃っているだけのようだ。


「それにしても……」


 ナナエはまた発砲する。全身が震える発砲音と同時に目標の建物の残骸に直撃し派手に吹き飛ぶ。今のは神弾らしい。


「いい音だと思いませんか?」

(……は?)


 なんか物騒なことをいい出したぞこいつ。

 更にナナエは発砲しつつ、


「この威力を証明するかのようなこの音……身体の芯まで突き抜けるような衝撃……ふふっ、何度――いつ聞いてもいい音です」


 なんかこいつ顔がニヤけているように感じるぞ。うわあ、あぶねーやつだ。


 その後もナナエは実に楽しそうに射撃を続けていたが、唐突にスマフォに着信が入った。SNSではなく電話のようだ。画面には『コウサカ先生』と書かれている。

 それを見た途端にナナエは厳しい顔つきになり、応答のボタンを押した。なんだ、問題か?


「はい」

『ミチカワさん。3分前に大穴の最新観測地点で破蓋の上昇が確認されました。速度から計算して15分後に第6層に到達する予定です』

「形状は」

『新型ではありません。髪解型だと推察されます」

「わかりました。今ちょうど実技の時間で外に出ていたのでいったん戻って――」

『必要なものはハシラトさんに渡しました。そちらに向かわせているので合流して下さい』

「了解です」


 通話を終えるとナナエはため息を付いて、


「破蓋が現れました。2日連続です」

(珍しいのか?)

「昔は多くても一週間に一度程度でしたが、最近侵攻の頻度が上がっています。全く困ったものです」

(何か理由とか見当ないのかよ)

「こちら側では別になにも……ああ、おじさんがなぜか私の中に不法滞在しているぐらいですね」

(うるせーな。それは昨日からだし関係ないだろ――多分)

「どうだか。実はおじさんが破蓋の尖兵である可能性もありますからね」

(んなわけねーよ。そんな意志もないしな。てかそうならお前らの戦い方とかペラペラ喋っていいのかよ)

「うっ……」

(何も考えてなかったのかよ)

「そ、そんなことはありませんよ? わざとそこそこの情報を出しておじさんの正体をつかむべく探りを入れていただけですからね!」

(嘘くせえ)


 俺はナナエの抜けっぷりに呆れるしかない。

 とここで、


「ナナー! 服とか持ってきたよー!」


 空から荷物を抱えたミナミが降りてきた。

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