第120話 長時間戦闘
ナナエは気を取り直してから、
「ま、まあとりあえず細かいことは脇に置いておきましょう。とにかく現状で破蓋の本体がいると思われる場所を調査するのは困難です」
「でもでも、このままだと――」
ヒアリが困り顔で話そうとしたときだった。ナナエとヒアリの携帯からいつもの破蓋の浮上を知らせている不気味な警報音が鳴り響く。
ナナエはため息をついて、
「これでは落ち着いて話し合いもできません」
そう愚痴りながらヒアリと工作部とともに大穴に向かった。
で、ここから面倒だから細かい話は省くが、ひどい目に遭った。
前回同様、工作部の作った対空機関砲搭載軽トラック――テクニカルでどんどんやってきたロボット破蓋を倒しまくったんだが、今回はしつこいなんてもんじゃない。
「ナナちゃん! ちょっと自動車さんの動きがおかしくなってきたかも!」
「無茶な動きの上にこの対空機関砲の反動は大きいですからね! 相当負担がかかりますから、どこかに不具合が起きてもおかしくありません!」
ひたすら大穴の第3層でロボット破蓋めがけて撃ちまくっていたせいでいい加減こっちの装備にもガタが出始めている。すでに今回の戦闘が始まってから10時間を超えているんだから無理もない。
「私も外に出て戦ったほうがいいかな!?」
「いえ壊れるまではこのまま行きましょう!」
「了解だよ!」
ちょっと前ならナナエを守るためとかいって飛び出していったヒアリもすっかりナナエの指示と合わせるようになってる。この二人の関係がギスギスしなくなったおかげで俺のストレスも減って助かるね。
また迫ってきたロボット破蓋3機をまとめて撃破した辺りでナナエが焦りだす。
「しかしまずいですね。弾薬がつきそうです」
近くに置いてあった対空機関砲の弾薬がみるみると減っていた。第3層の足場にはすでにおびただしい薬莢が転がっている。
『へーい、おまちー!』
ここでハイリの声がナナエの耳につけている通信機に入る。見上げると、いつも偵察に使っている無人機よりも一回り大きいものが弾薬を掴んで降下してきていた。
『これなら戦闘中でもそっちにあまり近づかなずに物が遅れるだろー。上の方にもっと集めてあるからどんどん使ってもらっていいぞー。でもこっちから掴んでいる物資を切り離すことはできないから取ってくれよ』
「助かります!」
ナナエは即座に無人機が掴んでいた弾薬を手に取るとテクニカルの荷台に置く。これでしばらくは持ちそうだ。
そうしている間にまた5機のロボット破蓋が浮上してきたので撃ちまくって全て叩き落とす。
これでしばらく補給が復活して戦えるようになった。しかし、
『あー!』
「どうかしましたか!?」
突然ハイリの叫び声が通信機に飛び込んできてきた。ナナエが上の方にいる工作部たちのほうに何か遭ったのかと顔を青くするが、すぐにその理由がわかった。
眼の前で弾薬を運んできていた大きめのドローンがフラフラと制御を失って大穴の底の方に落ちていってしまっている。
『悪い! 急造だったせいで壊れちゃったみたいだ!』
ハイリが謝ってくるが、ナナエは逆にホッとして、
「仕方ありません! こちらでなんとかします!」
そう言って再び浮上してきたロボット破蓋4機を撃退する。
その後も激しい射撃音と爆発音だけが大穴に響き渡り続けた――
――そして。
一体何機倒したのかわからないぐらいロボット破蓋を撃破し続けることをなんと14時間。
「も、もう来ないよね……」
「そ、そうして欲しいところです……もはや弾薬も体力も限界ですし……」
ヒアリとナナエはげっそりとした顔つきで大穴の底を見つめていた。最後にロボット破蓋を撃破してから30分が経過しているが、今の所浮上してくる気配がない。頼むからそろそろ終わりにしてくれよ。
弾薬はすっかり尽き果て、テクニカルも何度も動きが止まるような有様でふたりともボロボロだ。これ以上は流石にピンチになる。
『……ウィ』
『最深部の観測所からの情報を見る限り、破蓋はもう浮上してきていないようです。これ以上は大丈夫でしょう』
ミミミとマルの報告に、
「疲れましたー!」
「終わったよー!」
そう叫びながらナナエとヒアリは地面にひっくり返ってしまった。
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