第119話 調査
放課後。工作部とヒアリを連れてナナエの部屋に集まっていた。
「というわけで今日の議題だ!」
ハイリがホワイトボードにキュッキュと文字を書く。内容は『破蓋の本体を探ろう』。
ロボット破蓋にはあらゆる破蓋に存在し弱点である核がない。ロボット破蓋の元ネタがロボットアニメのおもちゃであり、戦闘用ロボといえば母艦があるので、恐らく母艦がずっと下の方にいるのだろうというのが前に出した予想だ。なので、それが本当なのか調べる必要がある。
「ウィウィ」
「あの破蓋が現れて以降の深度10000の最新観測所の映像を全て洗いましたが、人型機動兵器の破蓋以外通過したことはありませんでした。なので本体はそれより下にいるのは間違いないでしょう」
ミミミとマルの話にナナエは腕を組んで、
「厄介ですね。最新観測所よりも下は超高熱地帯です。人類の技術力では到達できない世界であり、英女であっても恐らく生き延びることはできないでしょう」
「やれとは言わないけど理屈的にはナナエならいけるんだろ? 死なないわけだし」
ハイリの指摘にナナエは頷いて、
「恐らく可能でしょうけど、大穴は基本的に縦穴ですし、登ってくる手段はありません。一度落ちたら帰ってこれないでしょう。まあ私は身体は大丈夫でも負傷すると精神的に参ってしまうのでおじさんに頑張ってもらうことになりますが」
(えっ、やだよ。まっ黒焦げになりながら死ぬこともできずに苦しみ続けるとか無間地獄じゃないか)
俺は想像しただけでも背筋が寒くなってしまう。ガスコンロ破蓋のときみたいな大火力攻撃を食らって黒焦げ+窒息とかいう拷問はもうやりたくない。
「おじさんも嫌がってますし、そもそも帰ってこれないのであれば調査の意味をなしてないでしょう」
「そーだよなー」
ハイリはうーんと唸って天を仰ぐ。
(そういや大穴って55年前にできたんだろ? そんなに経ってたら新技術とかでもっと深い穴を掘れるようになったりしてないのか? 確か俺の世界だと12000ぐらいまで掘ってたような憶えがあるんだが……)
ネットでちらっと見ただけだから詳しくないが、それだけ時間が経てばなにか新しい技術をが確立していてもおかしくない。
ナナエは思案顔で、
「そう言われても私達の国は鎖国状態であまり外国の情報は入ってきませんし……」
(そういやそうだった。そんな鎖国さっさと解いちまえよ)
「私に言われても困ります。そもそも神々様を中心とした我が国において安易に外国文化を流入させることは神聖な神々様を汚す行為に繋がりかねず――」
(あーはいはい。それは今度聞いてやるから次行こう)
「むう」
話を遮られて頬をふくらませるナナエ。
ここでマルが携帯端末を動かして、
「私達もそういった情報がないか電網を使って探しましたが、使えそうな技術などはありませんでしたね。そもそも資源採掘ならもっと浅くていいですし、深度10000より下を掘るというのは科学調査ぐらいしか意味を持たないので誰もやってないそうです」
マルの話にナナエが困惑して、
「ちょ、ちょっと待ってください。この学校辺りの電網は検閲がかかってて特定の情報以外を見ることができないはずですが……」
「邪魔なので突破しました」
「ウィ」
マルが平然と答え、ミミミがピースしている。更にナナエは頭を抱えて、
「か、仮にここの検閲を超えられても外国の情報は遮断されていて見ることができないはずです」
「調べたいことがあったからそれも突破してます」
「ウィ」
マルがまた平然と答えて、ミミミがダブルピースしている。相変わらずこいつらやべえな。
ハイリがはっはっはと笑いながら、
「国内は検閲されまくりでろくな情報がないしなー。外国の電網はすげーよ? 爆弾や銃器の作り方から使い方まで何でも転がってる。あたしらにとっては宝の山さ。おかげで爆弾でも無人機でも作り放題だ」
「…………」
ナナエは頭を抱えてしまった。
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