第134話 おもちゃ戦艦破蓋1
(でけえ……!)
俺は感嘆の声を上げてしまった。第6層直下の観測所で確認されたおもちゃ戦艦破蓋の画像を見ても思ったが、それ以上にインパクトのある光景が俺の目に入ってきている。
「ここから破蓋の姿が見えるなんて初めてですよ……!」
ナナエも驚きを隠さない。今俺たちがいるのは第3層。おもちゃ戦艦破蓋が今いるのは第6層よりも下。距離としては1500メートルはあるはずなのにここからばっちりその姿が見えている。直径数百メートルある大穴の8割ぐらいはあるだろう。こんなのが地上に現れたら何がどうなるか考えたくもない。
ここでナナエは耳に当てている通信機を通して、
「ミミミさん、マルさん、無人機をできるだけ下におろしてもらっていいですか? ここから攻撃を加えて早い段階で足止めします」
『ウイぃ!』
『任せてください』
目の前を無人機が降下していく。すぐにヒアリがテクニカルに乗り込みエンジンを掛け、ナナエも荷台の銃座に座る。
そして、大穴の真下が見える位置までテクニカルを移動し、真下に見える破蓋に対空機関砲を向ける。
一旦ナナエは携帯端末を取り出して、おもちゃ戦艦破蓋の画像データを確認し、
「おじさん、この破蓋になにか知っていることはありませんか?」
俺は破蓋の画像を見てしばらく見てて、やがてピンと閃いた。
(あったあった。でっかいプラモでこんなのが通販倉庫にあったのを憶えてる。すげえでかくてパレット――ええとでっかい荷物運び用の頑丈の板の上に山積みで置かれてた。やっぱりおもちゃだったんだな)
「攻撃手段とかは?」
(中身を見たわけじゃないけど箱には機関砲みたいなのをバンバン撃ちまくってた絵が書かれてたな……)
「飛び道具ですか。なら接近されると厄介ですね……」
(あとなんか敵の攻撃を受けても簡単に壊れない感じの絵だったと思う。恐らく相当頑丈だ。あと、あの破蓋の先端に細くなった2つの突起があるだろ? あそこに乗ってロボ――人型機械の破蓋が飛び出してくるはず)
いわゆるカタパルトってやつだ。あそこからどんどんロボット破蓋が出てくるんだろう。
ナナエは再び対空機関砲を握り、
「では、先手必勝で行きます!」
激しい発砲が始まる。体の芯まで砕け散りそうな爆音とともに大量の薬莢が周囲にばらまかれた。
いつもならロボット破蓋を貫通したり木っ端微塵にしていたが、おもちゃ戦艦破蓋に全段命中してもびくともしない。恐らく跳ね返った弾が周囲に散乱しているらしく、次々と大穴の壁が削られて土煙が湧き上がり始める。
「やはり硬いようですね……っ!」
ナナエはさらに連射するが、おもちゃ戦艦破蓋はびくともせずに浮上し続けてくる。
「ナナちゃん! 破蓋さんになにか動きがあるよ!」
「移動してください!」
ヒアリの声にナナエは即座に指示を飛ばした。
次の瞬間、さっきまでテクニカルがいた位置の足場が吹き飛ぶ。さらに大穴の下から赤い閃光がまるで吹き上がるように飛んできた。
『ウィウィ!』
『気をつけてください。敵からの攻撃です。恐らくこちらと同じ対空兵器か何かだと思います』
さっきナナエと話した通りの攻撃を仕掛けてきた。しかし、連射速度が半端ない。またテクニカルを足場スレスレにつけて浮上してきている破蓋を見下ろすと、おもちゃ戦艦破蓋のいたるところから激しい弾丸の雨あられが発射されている。
ナナエも負けずと対空機関砲を真下めがけて撃ちまくるが、全て弾き返されて全く通じる気配がない。まずいな、このままだと……
『ウィ!』
『気をつけてください! また破蓋に動きがあります!』
ミミミたちの情報を聞いて、おもちゃ戦艦破蓋の様子をうかがうと、カタパルトから次々とロボット破蓋が発進し始めていた。
ナナエは即座に対空機関砲で次々とロボット破蓋を撃破していくが、ふっとんだ破蓋の破片が次々とおもちゃ戦艦破蓋に吸い寄せられ溶け込んでいき、またロボット破蓋が発進し始める。
(きりがねえ!)
「それでも今は撃ち落とすしかありません!」
再びナナエがロボット破蓋を撃墜するが、同時におもちゃ戦艦破蓋からの一斉攻撃が来たので、ヒアリが別の位置にテクニカルを移動させる。
「ナナちゃんどうしよう!? このままだと破蓋さんがここにたどり着いちゃうよ!」
ヒアリがこちらに顔を向けてくる。テクニカルの車内にはミミミたちの無人機からの映像が流れているので、このままではまずいと判断したのだろう。
ナナエもやや焦りの表情を浮かべながら、
「ミミミさん、こないだの件、今も確認できてますか?」
『ウィー』
『すべて観測済みです。間違いないでしょう。あとはハイリさんが戻ってくればすぐに実行できます』
ここ最近のミミミの調査によりロボット破蓋の動きを止める方法が考案されていた。その機器をハイリが受け取りに言っているんだが、タイミングが最悪すぎた。
ナナエはまた対空機関砲を握ると、
「では、このままここで時間を稼ぎます!」
『しかし、それあくまでも人型の破蓋に対するものだけです。頑強な本体については別の手を考えなければなりません。くれぐれも無理をしないようにしてください』
マルの言葉通り、ハイリが戻ってきてできるのはロボット破蓋と止めることだけ。一番厄介な本体はどうするのか。
激しい銃撃の中、俺は必死に突破口を探る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます