第229話 とりあえず問題は先送り?
『現在、神国議会では非常に厳しい論戦が続いています。今回の英女学校への襲撃について、
(しんけいってなんだ?)
「警察のことですよ」
(相変わらず神神うるせー国だな)
「我が国は神々様を崇め奉る国なんですから当然です」
場所は生徒会室。ヒアリと工作部、クロエたちと一緒にテレビの報道を見ていた。
先日の学校襲撃事件はやはり政府は完全に寝耳に水だったようで、一時は明かさないようにしていたが、あっさりマスコミにリークされて大騒動になっている。
「まあ情報を漏らしたのはあたしらだけどなー」
ニヒヒヒとか笑うのはハイリだ。政府が隠蔽して問題が停滞しそうだったのを察知したので、今回の襲撃事件の顛末をネット経由でばらまいたのだ。もちろん使ったのは先生がこっそり下水道を伝って学校に引いていた回線である。
その結果、国中大騒動になってテレビ番組もこの問題を報じっぱなしである。元々先生が英女が反乱を企てているとかデマを流して騒ぎになっていたところにさらに油が注がれた形だ。
ここでピロリンピロリンとテレビからアラームみたいな音が流れて報道速報のテロップが表示された。そして、先生の身柄確保が決定して今警察が住んでいたところに突入したとされている。
「先生はこれからどうなっちゃうんだろう……?」
隣で同じようにテレビを見ていたヒアリがポツリとこぼす。ナナエはしばらく考えてから、
「はっきりといってしまいますが、この大穴周辺は神々様と侵略者である破蓋の最前線です。これを攻撃したというのは神々様への反逆と同じですので……まあその……」
「死刑ですね☆」
ナナエが言葉を濁らせているのにマルがはっきり言ってしまった。しかもニッコリとした笑顔で。予めナナエから聞いていたが、神々様への露骨な不信仰は死刑以外はないらしい。この国も相当あぶねーなぁ。
まあしかし、マルがキレているのもわかる。襲撃事件のせいで怪我だらけ。今でも頭に包帯を巻いてるし、顔には絆創膏やらガーゼやら当てられている。ハイリも同様だ。危うく爆殺されそうになったんだから仕方ないと言えるだろう。クロエはこんなもんいつも工作部がやってる生傷の耐えない活動から考えれば、無傷みたいなもんと言ってたが。
「まっ、これで少しは落ち着いてくれりゃいいんだがな……」
「あの下水道はやっぱり爆破して塞いだほうがいいんじゃないですか?」
机に肘をついているミミミにナナエが言う。襲撃者が通ってきた下水道は今の所そのままになっている。下水道の回線は必要だからだ。
ミミミは首を振って、
「あそこの電網へつながってる回線はあたしらにとっての切り札だ。今回のことで先生のほうが誤解を流しているとわかって通常の回線がまた使えるようになったとしても政府の監視は残るだろうからな。検閲がかからない回線は持っておきたいんだよ。一応警報装置はつけたからまた侵入してきたらナナエが蹴飛ばしておいてくれな」
「簡単に言わないでくださいよ」
ナナエはため息をつく。
今度はテレビの報道番組の方で動きがあった。アナウンサーが書類を確認しながら読み上げ始める。
「えー、たった今入った情報です。英女学校で神々様に対する反乱が企てられていると告発していた女性についてですが、身柄確保のために神警が住居へ立ち入ったところ既に姿はなかったとのことです。これにより神警は逃亡したと判断し、周辺の封鎖を指示。捜査中とのことです。繰り返します……」
「……逃げられたか」
この情報を聞いてクロエが舌打ちする。一方ヒアリは顔には出してないがどこかほっとした感じになっていた。優しい子だからむざむざ死刑になるのを喜んだりすることはないだろう。同時にマルやハイリの気持ちも察しているから黙っているようだ。
「まずいな」
「ですね」
ミミミとナナエが同時に頷く。ハイリもうーんと唸って、
「先生が行方不明になったってことは明らかに目指しているのはここだよなー。とはいえ、学校の周囲は地雷だらけだし、通れる道は政府の監視の目があるからなー。帰ってこれる道があの下水道だけだと考えると、やっぱり塞いでおいたほうがいいんじゃないのかー?」
「……………」
ミミミもこの問題に頭を悩ませているようだ。実際問題、まだ政府の誤解が完全に解けたという話はないし、そもそも国会みたいなところでどうでもいいレスバトルみたいなのが続けていて話が進んでる感じもしてない。その間にここから外に情報を流すのはあの回線が必須だ。
クロエも塞ぐのには反対のようで、
「電網の回線の話ばっかりしてるけどあそこは下水道よ? 塞いだら学校や寮の便所が逆流起こしてそのへんに汚水が溢れかえるわ。手出し禁止だからね」
「へいへい」
ミミミは別の方法を考えるかとうなり始める。
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