第84話 スマフォ破蓋6
「さあ、行きましょう!」
「うん!」
スマフォ破蓋が第3層に到達する。同時にその周りを漂っていた電動シェイバー破蓋4体がナナエたちに襲いかかってきた。
いつの間にか復活したガラケー破蓋がスマフォ破蓋の核を守り、その近くに急須破蓋もいる。
二人は破蓋とひたすら戦い始める。今回は倒すのが目的じゃない。できるだけ長く戦い続け、スマフォ破蓋に別の破蓋を操作させ続けるのが目的だ。
ここは階段の他に大穴を囲うように広い足場が用意されているので戦いやすい場所で、長期戦にはうってつけの場所でもある。
「できるだけ粘りますよ! 付いて来てください!」
「任せて!」
二人は見事な連携で襲いかかる多数の破蓋と戦い続ける。
ナナエが発砲して電動シェイバー破蓋をふっとばす。
ナナエに向けて急須破蓋が回転しながら襲いかかる。
ヒアリが急須破蓋を蹴っ飛ばす。
ナナエの射撃でふっとばされた電動シェイバー破蓋がヒアリに襲いかかる。
スマフォ破蓋のディスプレイにアプリダウンロードの表示が現れる。
側面の核が丸見えになった電動シェイバー破蓋の核をナナエが撃ち抜く。
新しくハサミ破蓋が現れる。
スマフォ破蓋に⚠マークが表示される。
急須破蓋が消える。
ヒアリがハサミ破蓋をたたっ斬る。
ヘアブラシ破蓋が出現する。
ヘアブラシ破蓋がトゲトゲを飛ばしてきたのでナナエが拳銃でひたすら撃ち落とす。
かなりの熱気が周囲に広がり始める。
電動シェイバー破蓋の内1体が消える。
ナナエが手榴弾でヘアブラシ破蓋のトゲをまとめて吹き飛ばす。
ガラケー破蓋が消える、同時にペットボトル破蓋が現れる――
そんなことを数十分ぐらい繰り返していたときだった。
(――来た!)
突然全ての破蓋が消滅し、スマフォ破蓋のディスプレイ表示が真っ黒になったのだ。爆熱スマフォで起きるトラブル――発熱しすぎてスマフォのOSが強制終了ってやつである。どうやらこっちの予想通りにことが運んでくれたらしい。
これにヒアリが手を叩いて、
「ナナちゃんすごいよ! 上手くいっちゃった!」
「これでこちらの勝ちです!」
もはやスマフォ破蓋はただの平べったい板だ。あとは側面についている電源ボタン――核を撃ち抜けばいいだけ。そして、ナナエがこの距離で外す可能性はまったくない。
これで勝った。そう確信した瞬間だった・。
「――ナナちゃん!」
ヒアリの叫び声。その瞬間、ナナエに猛烈な衝撃が加わり、身体が空中に投げ出される。
――なんだ? 何が起こった――
衝撃で視界は揺れたが、身体の主導権を持たない俺は唐突の出来事に混乱する。だが、一瞬だけ見えた光景ですぐに何が起きたのか理解した。
さっきまでナナエがいたところに白い紐がうごめいている。
そう、あのスマフォ破蓋にくくりつけられていた携帯ストラップだ。地面に落とすのを防止するために首や手にくくりつける長いタイプのものである。それが触手のようにナナエの身体に叩きつけられたのだ。
やがて、ナナエが目を閉じてしまったのか視界が真っ暗になり、激しい衝突音だけが俺の耳に届いた。何も見えないが、音から察するに第3層の足場に落ちたようだ。大穴の下に真っ逆さまじゃないのは助かった。
にしてもなんで今更携帯ストラップを使って攻撃を――ってよく考えれば当然だ。破蓋は触手のように使えるものがある場合はそれを鞭のように振るって攻撃してくるとナナエが前に言っていた。スマフォ破蓋がアプリ実行の機能が停止した場合、残っている攻撃手段が携帯ストラップに切り替わるのは当たり前だ。
そもそもこの不意打ちはヘアブラシ破蓋のときに食らったのと同じパターンだ。同じミスをまたやらかすとは失態も良いところだ。
(おい、大丈夫か? 一回入れ替わるぞ)
俺は舌打ちしながらナナエに言う。完全にミスった。ナナエが直接ダメージを受けてしまった以上、ナナエの精神的ダメージが回復するまでは俺が身体の主導権を握って耐えるしかない。その間にスマフォ破蓋は発熱が引き、再起動するだろう。
また一からやり直しだが、仕方がない。攻略法はもうわかってる。だったらもう一回やればいいだけのこと……
(てか、おいナナエ、早くしろ。またいつ襲ってくるかわからないぞ)
相変わらず視界は真っ暗。そして、ナナエは黙ったまま。どうしたんだ? いつもならすぐに変わるはずなんだが……
俺は耳を澄ます。すると不規則な呼吸音だけが聞こえてくる。これはまさか……気絶してんのか!?
「ナナちゃん大丈夫!? まずいよ、あの携帯電話の破蓋さんの画面に起動するって出ちゃってるよ!」
駆け寄ってきたヒアリの声がするが、ナナエは全く反応しない。
(おい! 聞こえないのか!? ヤバイぞ!)
俺も呼びかけるがナナエは全く反応しない。おいおいおいおいおい! どうすりゃいいんだこれ!
「ナナちゃん気を失っちゃってるの!? 危ないから一旦ここから離れるよっ!」
ヒアリの走り出す足音だけが聞こえてきた。
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