第167話 先生の部屋
というわけでまた先生の部屋の前に戻ってきた。
「言っておくけど無茶苦茶な開け方をするのは駄目だからね。他の生徒達に迷惑がかかるし」
そういって黒い長髪を揺らしてくっついてきたのはクロエである。生徒会長はやることがあるからと生徒会室に残っている。
というわけで、ミミミがかばんからごそごそと何かを探し始め、
「ウィ!」
「とりあえず扉を爆破します」
「だめに決まってんでしょ!」
「チッ!」
速攻でクロエに否定されたミミミは舌打ちする。仕方なく電動ドリルのような物を取り出して、潰された鍵穴を壊し始めた。
程なくして扉に穴が開けれて鍵が開けられる。ミミミが扉を開けようとしたのをみて、俺はふと思いつき、
(なあ、罠とかあったりしないか?)
(絶対にないとは言いませんが……)
(だろ? 俺が開けるから変わってくれよ)
そう言ってナナエから身体の主導権をもらう。ミミミたちに事情を話してから扉に手をかけ、
「まあ考えすぎだろうけど念の為にな――」
――次の瞬間俺の視界がブラック・アウトした――
……………
……………
……………
(……さん! おじさん!)
頭の中にナナエの声が響き渡り、俺の意識が徐々に戻り始めた。
「あたたたた……なんだ? どうなった?」
(おじさんの目が閉じていると私も何も見えません! 状況を!)
ナナエに急かされて俺がまだ痛む頭を擦りながら起き上がる。空には青空、下は芝生。眼の前には校舎がある。
って、なんで俺は外にいるんだよ。意味がわからん。
そう思って背後を振り返る。
「嘘だろ……」
(そんな!)
俺が絶句しナナエが絶叫する。ちょうど先生の教室があるところの校舎が破壊されモクモクと煙が上がっていた。
「マジで爆弾が仕掛けてあったのかよ……」
(ヒアリさんたちは!? どこですか!)
ナナエがパニックになってしまっているが無理もない。爆発の威力はそれなりに大きそうだ。近くにいたヒアリや工作部も巻き込まれている可能性がある。
俺は立ち上がろうとして――やばいことに気がついた。
「ナナちゃーん!」
ここでヒアリが駆け足でこっちに走ってきていた。そして、俺に抱きつこうとしてきたので、
「ストップ! 待て! いやこれはお前に抱きつかれたくないとかそういうのじゃなくて危険だから! そこで一旦停止!」
「――――っ!」
ヒアリが俺の言葉に従い、直前でピタリと身体を止める。なぜか直立姿勢で息を止めている。かわいいなぁ。
(どうしたんですかっ)
そうナナエに言われたので俺は周囲に散らばっていたそれを拾い上げて見せてやる。
(釘? なぜ……まさか)
「ああ、映画とかでみたことあるな。爆弾の中に鉄の破片とか釘とかを仕込んで爆発と同時に周りに飛散させて殺傷力を高めるやつだ。くそったれめ、あの先生、俺らを直接始末しに来たぞ」
俺はゆっくりと立ち上がり、釘を避けるように歩く。しかし、俺の身体のあちこちからも釘がバラバラと落ちていき、上手く歩けない。というか、この釘さっきまで俺の身体に大量に刺さってたってことか。身体が治るまで目を覚まさなくてよかった。
ようやく釘のゾーンから抜け出してきたところで、やっぱりヒアリが抱きついてきて、
「ナナちゃーん! 大丈夫だったー?」
「だからくっつくのはやめてください」
そう言ってナナエが引き離す。直前にナナエに身体の主導権を戻しておいて正解だった。
ナナエは一旦呼吸を整えてから、
「そんなことよりもです。被害状況を教えてください」
「う、うん。さっきの爆発で工作部の人たちはみんな無事だったんだけど風紀委員のクロエさんが腕に傷ができちゃって、保健室に工作部の人達が運んでるよ。そんなに大きな傷じゃないから大丈夫だってミミミちゃんが言ってたけど……」
不安そうな声で説明するヒアリ。そっちは専門の連中に任せるしかないだろう。とりあえず大事がなくてよかった。俺ならいくらふっとばされても平気だし、英女のヒアリなら爆弾程度なら死にはしないだろうが、工作部やクロエはひとたまりもない。
俺がこれからやることは、先生を見つけ出してこの落とし前をつけさせることだろう。そのためには全力で捜索しなければならない。場所はどこだ? とらえず、学校内を調べて……
ふと見ると、生徒たちが何が起きたのかとわらわらと教室から出てきていた。いきなり学校の一部が大爆発したんだから当然だ。
周りからナナエたちの無事を呼びかける言葉が飛んできたので、
「大丈夫です! 私もヒアリさんも無事です!」
そう答えるものの、次に何があったのか聞かれまくって言葉に詰まってしまう。
確かにここで先生の部屋が爆発したなんて言ったら生徒たちが困惑する。さらに先生が俺達を殺そうとしたと知られれば更に動揺が広がり、適正値にも影響が出てくるかもしれない。
その時だった。
「ウィ!」
突然ミミミが叫び声があたりに広がる。
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