第233話 爆弾破蓋2
俺は叫ぶ。ナナエではなく少し離れてしまったヒアリにだ。
(ヒアリ! 今学校の生徒でナナエにメッセージ――なんか通話しているやついるか!?)
「えっ……えっ?」
ギリギリ届いたらしい。ヒアリがあたりをキョロキョロし始める。さらにミミミにも同じ話をしたようで、他の連中も聞いて回り始めた。
そして、
「おじさーん! 今誰もナナちゃんに電文送ってないってー!」
俺は最悪の回答に愕然とする。このメッセージは生徒たちが送ったものじゃない。別の誰かが生徒に偽装して送りつけてきたものだ。
「今までとは……違う……?」
ナナエはポツリとそうつぶやいた。俺は思いっきり大声で、
(おい! 聞こてるのか! こっちの声を聞け!)
「え、あ、はっはいっ!」
やっと俺の言葉が届いたナナエは身体を大きく震わせて答えた。
(とりあえずその端末の画面消しとけ。いっそのことぶっ壊せ)
「意味不明なことを言わないでください。せっかく生徒たちからの励ましの電文が届いて――」
(誰もそれ送ってないってよ)
「はい?」
一瞬キョトンとしてしまうナナエ。それで慌てて生徒たちのいる方を振り返るとミミミが手を振りながら、
「大丈夫かああああ!? 今ナナエと通話しているやつこっちにはいねえぞおおおお!」
ぎょっとしてナナエはまた端末の画面を見てしまう。
「で、ではこれは一体――」
(いや、だから消せって)
「は、はい」
やっとこさ画面を消すナナエ。俺はため息をついて、
(この状況で端末にこんな物を送ってくるやつは1人しかいねえ。先生だろう)
「先生が? しかし、一体何が目的なんですか?」
俺は答えようかと思ったが、
(細かい事を言っている場合じゃねえし、今はあの爆弾野郎を倒すほうが先だ。お前じゃ近寄っただけでヘタれるから今のうちに代わっとけ)
「わかりました」
そう言ってナナエから身体の主導権を借り――れない。
(おい、代われてないぞ。俺がお前の身体を動かせてねえ)
「え。そんなはずは……」
ナナエはぎゅっと強く目をつぶって、俺に身体の主導権を渡そうと試みているようだが、やっぱりだめだった。俺の意志ではこいつの身体の指一つ動かせてない。
「な、なんでですか……」
がっくりうなだれてしまうナナエ。
これと同時にまた爆弾破蓋が大爆発を起こして衝撃波が身体を揺るがす……いや、明らかにそれだけじゃなくてナナエの身体が自ら怯えるように震えていた。
クソめ。俺は心のなかで舌打ちする。ナナエが先生が変なメッセージを送ってきた意図を読みきれてなかったから今のうちにさっさと代わっておこうと思ったのに時既に遅しだった。
俺はため息をついて、
(しかたねーわ。俺だってあんな大爆発を見せつけられたらビビるし)
「……何を言ってるんですか。一体どういう意味で――」
(お前もビビっちゃったんだよ。もしかしたら、あの爆弾野郎の攻撃が直撃したら不死身の能力も意味がなくてしんじまうんじゃないかってさ)
俺がそういうとナナエは目くじらを立てて、
「馬鹿げたことを言わないでください! 今までどれほどの攻撃を受けたところですべて傷は治っています! 大体、今までどれだけの仲間が犠牲になったのか誰よりも理解しているのに、こんなときに自己保身に走るなんてありえません!」
そう激高し始めた。ちょっと煽ってみたが、案の定怒り出してくれてわかりやすい。
爆弾破蓋の破壊力はすさまじい。今までにあんなものとは一度も戦ってないし、過去全ての破蓋にもいないだろう。もしいたらとっくに大穴がぶっ壊れていたはずだ。
そんな前例のない攻撃を受けたら、ナナエはどうなってしまうのか? こいつはどんなダメージを受けても即時回復する不死身の能力を持っている。だが、あの爆発を至近距離で受ければ、身体にダメージどころか木っ端微塵、下手したら蒸発してしまうかもしれない。
果たしてそんな攻撃を受けても不死身の能力は通用するのだろうか。そういう疑問をナナエは持ってしまった。もし俺に身体の主導権を渡してしまえば、自分の意志で戦いをやめることができなくなる。だから俺と代われなくなってしまったのだろう。
先生のやり口は恐らくこんなところだろう。全く嫌がらせのテクニックだけは呆れるほどうまくて腹立たしい。
ナナエは踏ん張りながら、
「いいからおじさんはさっさと私と代わってください!」
(できたらそうしてるっての)
「なぜなんですかっ!?」
ただひたすら苛立ちを募らせるナナエ。
俺はため息をついて。
(あんな大爆発を食らったら何がどうなるかわからねーしな。不安に思うのは仕方がないと思うぞ)
「そんなことを言ってる場合ではないんですっ!」
そんなことを言い合ってると、このタイミングで突然ナナエの携帯端末に着信が入った。
先生からだ。
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