第114話 作戦会議2

「玩具? どういうことですか」


 ナナエが意味がわからないと聞いてくる。


(あのロボット――破蓋はおもちゃが元なんだよ。アニメの番組とかで登場したキャラクター――人物とか機械とかを現実で立体的なおもちゃにして売る。俺が妙に細かいところまで覚えていたのは、CM――ええっと放送で流れてる広告で言ってたからだ)


 俺の説明を聞いた後に、ナナエが工作部とヒアリにも説明する。これにハイリが頷いて、


「なるほどなー。アニメから破蓋がでてきたんじゃなくて、アニメをもとに作られたおもちゃが破蓋になったってことかー。それなら辻褄合うじゃん」

「ウィウィ!」

「しかし、それでは核がない理由にはつながりませんと言っています。私も同感ですね」


 ミミミとマルの指摘にナナエも頷く。そうなんだよな。おもちゃが破蓋になったのなら今までどおり核を持っていないとおかしい。


「おじさん、他になにか覚えてないんですか?」

(うーん……)


 俺はしばらく唸ったあと、


(正直そのアニメのことはこれ以上思い出せそうにない。ほとんどの話を見てないし、見た内容も覚えてないからな。ただ、あの手のロボットっていうのは他のアニメでもよく出てくる。大体みんな同じような兵器としての使い方だし、それがヒントに繋がるかもしれない)

(ヒントってなんですか)

(なんだっけ? やべえ、適切な言葉が思いつかない。何かを見つけるためのきっかけとか暗示みたいなのだったような)

(はあ)

(とにかくここにいる連中にもアニメを見たことがあるなら、あんなロボットが戦うアニメの内容を聞いてみてくれよ)

 

 ナナエが他の連中に説明すると、ヒアリが手を挙げて、


「はいはーい! 私、ああいう――ろぼっとっていうのをアニメで見たことあるよ! こうでっかい空飛ぶお船から飛び出してきて、板に乗って海を走っていく感じの!」


 ロボットがサーフィンでもやっているアニメか? 想像しにくい。

 次にマルが手を挙げて、


「私も見ました。地上の移動要塞から出てきて、足についた車輪で大地を疾走して戦うんです。むせるという言葉が印象的なアニメでしたね」


 どこかで聞いたことがあるセリフだな……いろいろ混じってる気がするが……

 最後にハイリが手を挙げて、


「あたしは宇宙が舞台のをみたことあるなー。火星が地球みたいに開発されていく中、突然謎の無人兵器が襲ってきて、主人公がロボットに乗って戦うっていうやつ。その後戦艦みたいなので宇宙に上がって地球に戻ったりしてたかなー」


 似たようなアニメが俺の世界でもありそうだが、創作物なんて似たような世界では同じようなものしか生まれないのかもしれない。この国は神神うるさいけど創作物に規制とかはあまりないんだろうか。

 とりあえず同じ話を聞いたのを頭の中でまとめると、共通点があることに気がついた。


(そういやロボットアニメといえば大体いつも母艦が出てくるな……)

「どういう意味ですか」

(ほら兵器といってもそれだけで戦い続けるのは無理だから、補給したり修理したり運んだりするでかい船とかがあるんだよ。それをアニメとかじゃ母艦と呼んでる)

「まさか……」


 ナナエはすぐさま他の連中にそのことを伝える。そう。ロボット兵器には母艦がつきもの。つまりあのロボット破蓋にも本体に当たる母艦があるかもしれない。


 ハイリはおーと手を叩いて、


「あの破蓋は実は本体である破蓋の一部でしかなくて、核は本体の方にある。こう考えれば全部辻褄が合うじゃん!」 

「ウィ!」

「その可能性は高いとミミミさんも言ってます」


 マルとミミミも頷く。確証はない。だから、この説が正しいか確認することがまず最初にやるべきことだろう。


「ウィ……ウィ」

「ミミミさんの推測では恐らく破蓋の本体は大穴のずっと下の方にいるということです。恐らく深度10000よりもでしょう。人類は生存できませんが、破蓋であれば可能のはずです。そこを浮上してきていますから」


 その話を聞いたナナエは天を仰ぎ、


「難しいですね……その場所まで行くには英女の力だけでは無理です。しかし、このままでは最悪毎日やってくる破蓋と戦い続けることになります。なにかいい手があればいいんですか……」


 ここでヒアリが鼻息を荒くして、


「大丈夫だよっ! 私がすっごい強くなって破蓋さんを圧倒するから! 今日から頑張って特訓してすごい英女になるよっ!」

「言いたいことはわかりますが、漠然としすぎです……」


 ハイリが手を上げて、


「なーなー、ヒアリがすっげー強いのはわかるけど、ナナエも強くなるっていう選択肢はないのかー。ふたりとも強くなればもっと簡単に敵を倒せるし、大穴の底の底まで行けるかもしれないぞ」

「それはどういう……」


 ナナエがビキビキと神経を浮かべ始めたので、ハイリが慌てて、


「いやいや違う違うって。ナナエもすごいって執行部の連中から聞いてるし、弱いとかじゃないから。風紀委員に言わせりゃ、ナナエだけでも過去類を見ない強さで今の英女の二人は過去最高の戦力になってるとか」

「ま、まあ当然でしょう。私も苦労してきましたからね」


 褒められて急に得意げになるナナエ。なんてちょろいやつだ。

 俺は少し考えてから、


(まずはひとつずつ問題を解決していこうぜ。とりあえずあのロボット破蓋を簡単に倒せる方法を考えよう。それで簡単に倒せるようになったら、次に大穴の下の方にいるであろう母艦の倒し方を考える)

「確かに」


 ナナエは俺の話を工作部に伝えると、ミミミが手を挙げて、


「ウィウィ!」

「武器の強化をしてみたらどうだろうと言ってます。ナナエさんは大口径対物狙撃銃で、ヒアリさんが鉈二つなのでより強力な武器を持つことは可能なのかと」


 マルの通訳にヒアリは少し思案顔で、


「基本的に英女が使っている武器は現代の現在の軍隊で使用されているものと同じです。それを神々様の能力で強化しているので、威力が高い兵器が入手できれば当然破蓋にも有効な攻撃が行なえます。ただ――」

(なんかあったのか?)


 ナナエは少し思い出してから、


「破蓋の攻撃は極めて強力であり、当たれば致命傷になります。そのため英女は常に動き続けなければなりません。また固定砲台などを置いたところで即座に破壊されてしまうため、予算の無駄になるということで英女の武装は個人で携行し、なおかつ移動を妨げないもののみという形になっています」

(戦車とか戦闘機とか使えばいいじゃん)

(あの大穴でどうやってそんなものを使えと言うんですか。昔は地上に設置してそこから大穴内部を攻撃したこともあったらしいですが、実質最終防衛戦だけで戦うようなもので危険すぎるんです。英女は二人しかいませんから、できるだけ下の階層で破却しなければなりません)


 めんどくせえ。神々様もケチらずに英女を100人ぐらいに増やせばいいのに。ブラック現場そのものだな。

 

 その説明にハイリはしばらく考えていたが、


「てことはさ、強力だけど動き回れる武器なら良いってことだよな?」


 そうニヤリと笑みを浮かべた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る