第136話 おもちゃ戦艦破蓋3
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装置が起動しても何も変化が起きない。聞こえてくるのは破蓋の攻撃の音だけだ。
だが、ロボット破蓋4機が再び第3層に到達した瞬間に、その装置が正常に可動していることが証明された。突然4機がコントロールを失ったようにフラフラしはじめて、大穴の底へと落ちていったのである。
「……おっしゃああああああああ!」
それを見てハイリは雄叫びを上げた。
ここで野営を始めてからミミミがずっと調査していることがある。ロボット破蓋がどうやって動いているのかについてだ。
本体のおもちゃ戦艦破蓋とロボット破蓋は離れていても行動している。しかし、この2つは同一の破蓋だ。なら、その2つをつないでいるものがなにかあるはずだということで、ミミミはまっさきに電波を使った遠隔操作の可能性に思い当たった。
そういうわけで工作部は爆弾づくりに励むのと同時に、たびたび襲来するロボット破蓋が来るたびに電波の拾って調べ続けていたが、そのたびに特定の周波数の電波がこの辺りに来ることがわかった。
ならあとはその電波を妨害してしまえばいい。幸いなことにこの世界にもジャミング装置はあったので、先生を経由して工作部に届けてもらっていたが、変なタイミングでおもちゃ戦艦破蓋が浮上してきてしまったのは想定外だった。まあこれでうまくいくかどうかの保証もなかったし、実験もせずぶっつけ本番になったが、ミミミの推測が正しかったらしい。
再びおもちゃ戦艦破蓋から複数のロボット破蓋が発進してくるが、すぐにコントロールを失い、大穴の壁に激突したり底めがけて落下していった。
とりあえずこれでもうロボット野郎は来ねえ。あとは本体のおもちゃ戦艦破蓋だけ倒せばいいだけだ。
ナナエは効果を見届けた後、第3層の足場のできるだけ安全なところにハイリを移動させると、
「あとは私たち英女の仕事です。ハイリさんはそこで妨害装置を稼働させておいてください」
「任せとけー! ってヒアリは?」
ハイリの言葉にナナエが振り返ると、ヒアリが補助歩行措置で飛び跳ねて、一気に大穴の下めがけて飛び降りていた。何やってんだあいつ!?
すぐさまナナエが足場の縁まで向かい耳につけた通信機で、
「ヒアリさん! 無茶は駄目だと約束を――!」
『無茶じゃないよ!』
そう文句を行ったが、即ヒアリに反論されてしまった。
ヒアリは一直線におもちゃ戦艦破蓋めがけて飛び降り続けている。一方ロボット破蓋が発進できないと気がついたのか、破蓋は全身のあちこちにつけられている対空砲らしきものを乱射し始めた。
このすさまじい弾幕ではヒアリは避けられない――
『無茶じゃないよ! 私は強くなって敵を圧倒するって決めたんだから! それでたくさん頑張って強くなった! だからこの程度の攻撃いくらされても――』
ヒアリに押し寄せる弾幕。しかし、それを両手に持っている鉈で当たりそうなものだけをきれいに弾き返していく。
『絶対に当たらない!』
本当に敵の弾丸には全く当たらずにどんどんおもちゃ戦艦破蓋へと迫っていくヒアリ。もはやすごすぎてい呆れてくるレベルだ。
「そんな事を言っても一発でも当たれば――」
(いやいやもうやっちまったもんはしょうがないから、俺らもできることをやろうぜ。とりあえずお前の持ってる銃で、対空砲みたいなのなら破壊できないか? 装甲は固くて無理だったけどこっちはそんなに固くないだろ。アニメだとああいうのは簡単に壊せるのがおおかったからな)
「は、はい!」
ナナエは慌てて対物狙撃銃で対空砲めがけて発砲する。相変わらずの的確な射撃で見事に一つ命中――した途端に大爆発して攻撃ができなくなった。
(おっこいつは行けるぜ!)
「次!」
ナナエはさらに他の対空砲を破壊して回る。しかし、これは一時的なものだ。破蓋は核を破壊しない限り、無限に再生する。当然、破壊した対空砲もゆっくりと治り始めている。
しかし、攻撃がひるんだスキをヒアリは逃さず、そのままおもちゃ戦艦破蓋の上にたどり着いた。
「たああああああああああー!」
今度はヒアリはおもちゃ戦艦破蓋の装甲に鉈を突き刺すとそのまま巨大なパンケーキでも切るかのように走り出す。きれいに切り裂かれていくところをみると、こいつの装甲でもヒアリの斬撃は防げないようだ。
そのままおもちゃ破蓋をずたずたにしていくヒアリに続いて、ナナエも破蓋の上に降り立つ。そして、再生し始めていた破蓋の対空砲を的確に潰して回る。
そんなこんなを続けていて、ついにおもちゃ戦艦破蓋の表面が大きくえぐられた状態になる。そこからは内部が丸見えだ。
「ナナちゃん!」
「……ええ、見えてます」
ヒアリとナナエはそこにある破蓋の核を見つけた。あとはこいつを破壊すればこの長かったこいつとの戦いも終わりだ。
―――――
一瞬何かが聞こえた気がしたが、今はどうでもいい。ナナエが集中して対物狙撃銃を構えて、引き金を――
――従え、そして、抗え――
聞こえた。あの言葉が。そして、同時におもちゃ戦艦破蓋の身体が柔らかくなったようにうねりだし、俺たちを押しつぶした。
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