第48話 すったもんだ

 放課後、先生の部屋へやってきたナナエ(と俺)。

 先生はディスプレイに向かったまま、


「転校生のカナデ・ヒアリさんとはもう会いましたか?」

「はい」

「うまくやっていけそうですか?」

「え、えっと……まだ会ったばかりなので、まだ判断しかねます」

「そうですか」


 そこまで聞くと、カタカタとパソコンのキーボードを叩き始める。恐らくナナエの話について記録でも残しているのだろう。そういやパソコンとキーボードってなんて呼べばいいんだろうな。電子計算機と入力装置といったところか。

 

 と、ここで入り口が勢いよく開き、


「すいませーん、ここに来るように言われたんですけどー。あ、ナナちゃんだ!」


 ヒアリが中に入ってきた。そして、すぐにナナエを見つけて、

 

「えへへ、また会ったね。よろしく!」


 びしっと手をこちら側に突き出して勢いよく語りかけてくる。これにナナエは面食らってしまい、


「は、はいっ。えっと――」

「カナデ・ヒアリだよ。ヒアリって呼んでね。あ、私もナナちゃんって呼んでいい? もうさっき呼んじゃったけど」

「え? あ、はい、問題ありません」


 グイグイ押してくるヒアリに押されっぱなしのナナエ。かわいいんだが、この押しの強さは俺もビビる。会って5秒で友達になるのが信条だっけ? いかがわしいビデオに似たタイトルがあったような記憶があるが……


「なにか変なことを考えてませんか? 破却しますよ?」

(い、いえ別に)


 すごい目で睨んでくるナナエに、俺はしらばっくれておく。

 しかし、睨んだ先にはヒアリがいるので驚いてしまい、


「ごめんね! また脅かせちゃったみたいで、私つい仲良くなろうと押しを強くしちゃって」


 自分の行動に問題が会ってナナエを怒らせてしまったと勘違いし、誤り始めてしまった。それになぜかナナエもペコペコと誤り始めて、


「い、いえ! ヒアリさんのせいではありません。ちょっと私の近くに邪悪な獣の気配を感じたので撃退しておいたんです」


 ヒアリは仰天し、 


「獣!? 破蓋っていうのがもう来ていたの?」

「それとは別のものがいただけですよ。そう私の心の中に不法占拠しているような何かがです。全く困ったのものですね」

「そうなんだ。大変なんだねー」


 二人でそんな話をしていると、先生が椅子に座ったたままこちらを向いて、


「カナデさん、お待ちしてました」

「はい! 今日からよろしくおねがいします!」

 

 元気よく手を挙げて挨拶をするヒアリ。一方の先生は手を合わせようとはせず、メガネの位置を調整して、


「私から言えることは多くありません。英女としての使命はとても難易度が高く、最悪命を落としてしまうことも多々あります」

「命を……落とす……」


 ナナエは元気を引っ込めて厳しい表情でその現実を噛み締めている。


「あなたの適正値は過去最大のもの。そのため誰よりも他者に対する自己奉仕心の心が強く、神々様もすでにあなたに答え、高い能力を与えました。実際どの程度なのかは訓練の中でわかっていくと思います。あとはミチカワさんに聞いてみてくださいね。ミチカワさん、あとをお願いします」

「はい!」


 そうナナエはびしっと了承の返事を返す。って新人教育もナナエに任せっきりかよ。新人教育の手当はちゃんと出ているんだろうな?


 その後、ヒアリはカバンに入れていた書類を先生に手渡す。その中一枚だけナナエの方に差し出し、


「はーい、私はナナちゃんと同じ部屋になりたいです!」

「えっ!?」


 なんか話がややこしくなってきそうだ。

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