第117話 ロボット破蓋9
一気に大穴の下からロボット破蓋が浮上してきた。
『ウィウィ!』
『無人機と観測所からの情報を見る限り、破蓋は8体いるとミミミさんは言っています』
工作部からの情報で俺はげんなりする。一度に8機とか今までよりずっと多い。だんだん増えてきていたが、この調子だとそのうち100機ぐらいで押し寄せてくる日も来たりしそうだ。
ナナエは対空機関砲の台座を調整した後に、
「では――まだ破却はできませんが、圧倒させてもらいます!」
そう言って対空機関砲を発射する。前の試し撃ちとは違い、今回は神々様の力を乗せているので、弾の速度と威力が桁外れだ。当然、発砲音も半端ない。俺の精神が木っ端微塵になりそうなほどの強烈な音だ。
しかし、その威力だけあって、凄まじい破壊力を見せた。向かってきていたロボット破蓋8機の内、ちょうど並んで飛んでいた3機が一発で全部貫通して大爆発を起こしたのだ。
(すっげ)
俺は驚嘆の声を上げる。一方ナナエは気を良くしたのか更に連射して、
「このまま一気に――!」
「ナナちゃん! 車体が浮いちゃってるよ!」
ヒアリが焦って止めてきた。気がつけば武装軽トラック――テクニカルの車輪が片方側から持ち上げられ、このままだと横転しかねない状態になっている。
『ウィ!』
『前に説明したとおり、ある程度連射を続ければその反動で車体がひっくり返ります!』
ミミミとマルの指摘にナナエも慌てて発砲を止める。
一見無敵に見えるこのテクニカルだが、突貫作業で作ったんだから当然問題も抱えていた。元々空に向かって撃つ対空機関砲を下に向けて撃たないと行けないため、台座を置いて車体からやや高い上から発射しているわけだが、当然バランスが悪い。下にめがけて発泡すればその反動で車体が下から持ち上げられる力が加えられるため、撃ちまくるとだんだん車体が落ち上がり、最後は横転してしまう。
「す、すいません!」
(おい、撃ってきたぞ!)
俺達がバタバタやっている間に残りのロボット破蓋5機が一斉にレールガンを撃ち始めた。数は多いが今回はロケットランチャーを装備しているやつはいないらしい。これは助かる。
「移動するよー!」
ヒアリは運転席につけられたモニター画面を見ながら、巧みな運転でロボット破蓋の攻撃を避けていく。近くでは工作部のドローンがしっかりロボット破蓋の映像を送信しているので、ヒアリからでも戦況が確認できている。
第3層の足場をぐるっと周り、ロボット破蓋の攻撃が来なくなったタイミングで、再び大穴スレスレの足場の位置にテクニカルを止める。
そして、再び対空機関砲を発射した。こちらの動きがつかめていなかったのか、あちこち飛び回っていたロボット破蓋を次々と撃破していく。
「ナナちゃんすっごーい!」
「移動してください!」
再び、ヒアリがテクニカルを運転してロボット破蓋からうまく距離を取る。
『ウウウウィ』
『これまでで7機撃墜しました。残り1機です!』
工作部の情報に俺は驚愕する。あれだけ手こずっていたロボット破蓋を一瞬の内に7機。こいつは今後の仕事が楽になりそうだ。
「まだ1機残ってます! 油断はしてはなりません!」
「りょーかい!」
ナナエとヒアリは気合を引き締めて、残り1機の撃破に集中する。
しかし、こちらがいい攻撃ポジションを探っている間にロボット破蓋が第3層にまで到達してしまった。
ナナエとロボット破蓋の視線が合う――
「ここで!」
そう言ってナナエは対空機関砲をぶっ放した。その弾丸はきれいに、そして確実にロボット破蓋に直撃し、木っ端微塵に砕く。
よっしゃと俺が叫ぼうとしたが、それどころではなかった。テクニカルがあっという間に横転してしまったのである。
大きな轟音と砂煙が舞う中には、横倒しになったテクニカルとふっとばされて足場に倒れ込んだナナエが残った。ヒアリは横転したままのテクニカルの中でなぜか楽しそうに笑っている。
『……ゥィ』
『真下に撃てば車体が持ち上がる程度ですが、水平に近い撃ち方をするとあっさりひっくり返るから注意が必要だ、とミミミさんが言ってます。小さい声で』
どうやらミミミも水平状態で発射したらどうなるかまでは考えが及んでなかったらしい。突貫だったから仕方がない。
とはいえ、またロボット破蓋が戻ってきたら大変なのでナナエとヒアリはテクニカルから離れて、大穴の下の方を見る。
「いないねー」
ヒアリがそう言うと、工作部が飛ばしていた小型無人機がすーっと下の方に向かっていき、
『こっちにも破蓋らしきものはみえないぞー。その下の観測所にも特になんも映ってない。逃げたんじゃないか?』
ハイリの報告に俺はほっと安堵する。前回はしつこく戻ってきたが今回はさっさとお帰りになってくれたらしい。
「やったー! みんなすっごーい!」
ヒアリが歓喜の声を上げてナナエに抱きついてきた。
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