第52話 学校の変人たち2
(なんだこいつら……)
謎のテンションの高さに俺はげんなりとする。底辺現場ではたびたび意味のわからんテンションの高さで騒いでいるのがいたが、面倒なので避けていたので今回も逃げ出したくなる衝動に駆られてしまう。
が、どうやらそんな気分になっているのは俺だけではないらしい。事務(高等部)の生徒二人もげんなりした顔をしている。ナナエも困惑しているようだ。唯一、ヒアリだけはキラキラと目を輝かせている。
そんな中、部長――ハイリとか名乗ったやつがびしっとこちらを指さしてきて、
「というわけで全自動清掃車を作ってきたぞ! これを寮の敷地を走らせれば少人数で簡単に掃除が完了だ!」
「ウィ」
「休みの日に生徒が掃除する必要がなくなって自由に時間がつかえるようになるとて言ってます」
残りの二人――ミミミとマルとかいうのは全自動清掃車とやらに乗ったまま話している。
ナナエは頭痛を抑えるように額に手を当てて、
「あの人達はなんなんです?」
「ミチカワさん知らないの? 変人の群れってことで結構有名なんだけど」
事務の生徒に言われてナナエはうーんと記憶をほじくり返しているがやっぱりわからないらしく首を傾げる。
ふと、俺は工作部という名前を思い出し、
(工作部ってほらこないだ肉食って腹壊す前に見かけたところのじゃね? 変な機械いじっていたところがあったろ)
「あまり思い出したくない記憶ですが、確かにそのような部活がありましたね。しかし、私は部活動には入ってませんでしたし、付き合いも英女の活動もあって最低限にとどめていたので……」
(やっぱお前コミュ障だろ)
「こみゅしょうってなんですか」
(人付き合いが悪い)
「あえて否定はしません。様々な事情を勘案してそうしていただけですが」
そうナナエはプイとそっぽを向いてしまう。相変わらず素直に認めないやつだ。
事務の人もはぁとため息を付き、
「この学校でも最悪の変人集団よ。あまり適正値が高くなくて神々様から恐らく選ばれないだろうってことになって、それ以降ろくに授業にも出ないで得体の知れないモノを作り続けているのよ。こないだは全自動卵割り機、その次は寮の棟に簡易型の昇降機を作ったけどすぐ壊れて欠陥品だったという終わり方、その次は寮の部屋の扉を自動開閉にするんだと言って勝手に作り変えて開かずの扉を大完成と」
「えぇ……」
ナナエは更に呆れ顔で首を振ってしまう――と思ったら急にニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべ始めた。
そして、俺だけに聞こえるように小声で、
「つまり私は適正値では測れない部分で英女の才能を見出されたということですね! なんということでしょう、測定で測れない未知の力を私が保持しているなんて!」
(前にも言ったが、すぐにそういうことを言い出すから適正値が低いんだと思うぞ)
俺が呆れるものの、ナナエは全く耳に届いていないようで、フフフと勝ち誇った笑みを浮かべている。
「なんかすごーい!」
一方ヒアリはやっぱり楽しそうだ。
ここで事務はハイリのところに近づき、
「ちょうどいいわ。話があるから――」
「はっはっは。まあそんなに急かすな。とりあえず我が全自動清掃車の働きっぷりを見せてやろう」
「いやそれはいいから、あなた達の部屋について――」
「遠慮しなくていいぞ。さあ、ミミミ発進だ!」
「ウィ!」
「私たちの力を見るがいい、だそうです」
そう言って全自動清掃車のブオンブオンとエンジンを鳴らし始めた。さらに車体の周りに取り付けられているブラシみたいなものまで回り始める。そういやうちの近くをこんな感じの清掃車が走っていったな。
しかし、突然エンジン音が止まってしまう。高笑いを続けていたハイリだったがすぐに笑いを止め、
「あれ?」
「ウィ……」
「エンジンが止まってしまったどうしよう、だそうです」
ミミミは「ウィ」しか言ってないが、マルが通訳みたいにその意味を伝えてくる。あれでよく意味がわかるな。付き合いが長いんだろうか。
ここでハイリはミミミの肩をポンポン叩くと、
「しゃーなししゃーなし! どこかの天才も失敗を重ねて発明を生み出すのだみたいなことを言っていたし、今日は一旦帰って直して再チャレンジしよう!」
「……ウィ!」
「がんばる、だそうです」
マルの通訳が終わるのと同時にハイリは自動車をケツから押し始め、
「また来まーす」
そう言って立ち去ろうとしたので、事務の人は慌てて停めて、
「だーかーらー! 今はあなた達に用事があるのよ! はいはい、管理事務所の中に入って!」
「えー、早く帰って開発したーい」
さっきのテンションはどこへやらめんどくさいオーラ丸出しのハイリだ。
結局三人共管理事務所と押し込まれた。
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