第152話 スパナ破蓋+缶?破蓋1
スパナ破蓋と缶?の破蓋が二体とも第3層から見える位置まで浮上してきていた。ナナエは接近戦用に設置されている広い足場から大口径対物狙撃銃を構えてスパナ破蓋の核を狙う。
作戦は単純でとりあえずスパナ破蓋を撃破、その後にヒアリに少し上の方に移動してもらって、缶破蓋を狙撃し、その正体を探るだけ。
しっかりと確実に狙いを定めていたナナエだったが、
――従え、そして、抗え――
また例の呼びかけが聞こえてきた。しつこいやつだな。何度言われても従う義理はないぞ。
ふと、ナナエはヒアリの方に振り向いた。鉈を構えていたヒアリはその視線に気が付き、
「あっ、大丈夫だよ。私に力を貸してくれる神々様ももうあの声に惑わされたりしないって言ってるから」
「わかりました。なら集中できます」
ナナエはほっと胸をなでおろしてから、再びスパナ破蓋を狙った――だが、ここでスパナ破蓋が突然高速でグルグルと回りだした。ただし、全身ではなく頭のネジをひねる部分のところだけだ。そして、一気にこちらに向かって高速ですっ飛んできた。
「――――!?」
ナナエとヒアリは一気にその場を離れた。そこにスパナ破蓋が高速で突き抜けていく。そのまま、第3層の足場の上を飛翔し続けていた。危ない危ない……あんなのにあたったら痛いなんてもんじゃないからな。
……というか何だ今のは?
スパナ破蓋はそのままヒアリに襲いかかるが、鉈で綺麗に弾き返されていた。スパナといえば重くて頑丈な鉄の固まり。頭をぶん殴ったら人が殺せるレベルの凶器なので直撃を受けると防御してもふっとばされるほどの力がある。
しかし、今のスパナ破蓋は軽かった――というかなんか小さくなってないか? スパナの頭のところしかないが……
「ナナちゃん! ねじ回しさんが2ついるよ!」
ヒアリの声を聞いて、すぐさまスパナ破蓋を確認する。第3層にいるのとは別に缶破蓋の隣で高速回転しているスパナ破蓋がいた。あれでは核が狙いにくくなる。
もう一回第3層の方をナナエは確認して、
「ねじ回しの破蓋が2つに分裂した……? 今までこんなことはなかったんですが」
困惑してしまっているが、俺は攻撃を仕掛けてきたほうの破蓋の見た目で大体状況がわかった。
(ヘッドが外れてるんだな。故障したか意図的に外したかわからないが)
「へっどってなんですか」
説明する暇がないと思ったが、ヒアリがスパナ破蓋とキンキンカンカン戦っていたので今のうちに、
(あの破蓋のねじを回す部分のところだよ。ヘッド――頭だな。そこが外れてる)
「外れるものなのですか?」
(特殊なタイプでヘッドが動くやつがあるんだよ。それを使いすぎた結果、壊れてヘッドだけ本体から外れちゃったって感じかもな)
ふむとナナエが理解し、
「そうなると、ねじ回しの破蓋が2体ということになりますが、見た感じでは核は一つしかありません。ならば、本体の方を叩けば終わることです」
核を倒せばヘッドの方も消えるだろう。まあ妥当な判断である。
缶破蓋はジリジリと浮上を続けて、そのそばをスパナ本体破蓋(柄の部分)がものすごい勢いで回転している。一方スパナヘッド破蓋は速い動きでナナエやヒアリに襲いかかってきていた。
「ナナちゃん! こっちは任せて!」
「了解しました。私は核を狙います」
ヒアリはスパナヘッド破蓋を相手にしているが、本体だけなので重量は減ったと思うが、やはり威力は強いので、ヒアリが鉈で斬りかかるたびに弾き返され、さらにスパナヘッド破蓋が襲ってきたのをなんとか弾き返すの繰り返しだ。
なので本体の核を狙わなければならないんだが……
「くっ!」
ナナエが大口径対物狙撃銃で核を撃ち抜こうとするも凄まじい勢いで回転しているので核に当たらない。
(むう……あれじゃ狙いにくいな。めんどくせえ)
「見くびらないでください。あの程度の動きならば撃ち抜いてみせます。やりにくいのはそちらではありません」
ナナエの反論に俺は意味がわからないと思ったが、照準の先を見てピンときた。スパナ破蓋の後ろにはピタリと缶の破蓋がついている。
(核を撃ち抜けばそのまま缶のやつにも直撃するってことか)
「はい。これではうかつに狙えません」
(待てよ? 逆に撃たせようとしているんじゃないか? 缶を撃ち抜くように誘っているのかもしれない)
俺の言葉にナナエは少し移動して再び狙撃の照準を合わせるが、スパナ破蓋の本体も缶破蓋の前に立つように移動する。
「恐らくおじさんの読みどおりでしょう。缶の破蓋を守っているふりをして実は缶を破蓋させるのが目的です。回転しているのはごまかしかと」
(2体で連携してやがんのか。しかもこっちを欺くようなことをしてきやがってめんどくせえ)
俺が愚痴る一方でヒアリがスパナ破蓋のヘッドとの激しい戦いを続けている。コツを掴んだのかそれともヒアリの力がますます強まったのか、今では綺麗にヘッドを叩き切っているものの、核を破壊しない限り破蓋は復活するのでキリがない状態だ。
さて……どうする?
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