第211話 控えめに言ってもヤバイ
ついでに、大穴に落ちた以降の話をいろいろする。俺の前にいた世界は滅ぼされていたこと、破蓋の中にも天蓋の戦えという呼びかけに従っていないものがいること。破蓋の中に天蓋の呼びかけに強く応えているものがいること。天蓋に従ってない破蓋がヒアリに従っていること。
クロエは頭を抱えながら、
「情報が多すぎて整理するのに時間がかかりそうだわ……でも今の話だと先生という破蓋が地上に出ただけでは別に人類滅亡とかにはならないのは証明できてるってことね」
「そうそう。ただ問題は外に出ていった先生が『実は私は破蓋でーす!』とか言って暴れだしたらヤバイ。さっきも言ったとおり俺たちが世界を滅亡させるために先生を送り出したって見られる可能性が出てくる」
しばらく情報の整理をし始めたクロエに変わってハイリが首を突っ込んできて、
「なーなー、おっさんもなにかわかったんだろ? 妙に破蓋のことに詳しい感じじゃん。もっと教えてくれよなー」
「あー、まだ確証はないんだが、どうやら俺は破蓋というより天蓋のなにか――一部って感じらしい」
「え?」
俺の言葉にハイリがキョトンとしてしまい、
「破蓋の王たる天蓋がここにいいいいいいいいいい! いやあああ殺されるうううううううううう!」
「破蓋どころか天蓋の実験もできるとは最高じゃねえか……!」
ミミミは錯乱するマルを放置して俺に今度は鋭利な刃物を向けてくる。おいこら物騒なものを近づけてくるな。怖いから、まじで怖いからやめろ、目も怖いぞこいつ!
「おじさんにひどいことしちゃだめだよっ!」
そういってヒアリが俺を抱きかかえるようにして守ってくれる。おお……いい匂いで暖かくて柔らかいヒアリの感触が俺の全身の神経を伝って幸福という感情を生み出して――
「いて!」
いきなりカーテン野郎にひっぱたかれた。そして、俺とヒアリの間に割って入る。どうやらヒアリに触れるなといういいたいらしい。独占欲強すぎだろこいつ。
話を戻して、
「いや俺自身も記憶が曖昧でわからないことばっかりだ。というかそもそも天蓋にまともな意思があるのかもわからないんだから、仮に俺が天蓋の一部だったとしても、記憶とか全然ないかもしれない」
「推測の話ばっかりだなー。こっちはまだ情報不足ってところかー」
ハイリがなーんだと残念そうにする。
ちょっと話していたら疲れてきたので、ナナエに身体の主導権を返した。
おほんと席をしたナナエは、
「お互い情報は出たと思いますが、ハイリさんたちが外とつながる門にいたのは破蓋との和解を叫んで向こうに伝えることが目的だったということですか?」
「あー、それも目的だったけど、別にやることがあったんだよ」
そう言ってハイリは鞄からSDカードみたいなものを取り出してきた。この世界にもあったのかこれ。
そして、生徒会室においてあるパソコンを開いてアダプターを通してSDカードを接続する。
ハイリがパソコンをいじってSDカード内のファイルを実行した。すぐに映像が再生され始めたので映像ファイルのようだ。
そこに映し出されたのはかなり高い位置から撮影されたものだった。ハイリたちが真下に小さく見えるレベル。これは恐らく工作部が作っていたドローンで撮影しているんだろう。こんなところに飛ばして何を見るんだ?
そう疑問を持ちながら映像を見ていくと、しばらくしたらあちこちに移動し始めた。さらにカメラが望遠モードになり、かなり遠くのものもはっきり大きく見えるようになる。
それからもしばらくカメラを動かしながら飛んでいたが、前に聞いたとおり、学校の周りにはなにもない。砂漠とも違い、キレーに真っ平らに整備されている学校のグラウンドのようだ。クロエはここに核爆弾が大量に埋め込まれているという噂があるといっていたが、こんなところで炸裂したら英女学校の生徒は全滅だろう。噂だけであった欲しいね。
やがて、ドローンは動きを止めて学校からかなり離れた敷地外の方に近づき始めた。そして、望遠を最大にしてそこにあるものを移す。
「これは……!?」
最初に声を上げたのがナナエだった。映像に映っているのは黒っぽい何かが動いたりしている様子で俺には何が何だか分からない。
ハイリは頭に腕を組んで、
「まーまー、もうちょっとしたらはっきり撮影した映像になるからお楽しみにしておいてよ」
そう言っているうちに映像が鮮明になり始めていた。そこで俺もやっとナナエが驚いた理由を理解した。
あったのは大量の戦車や装甲車、大砲みたいなのも見えるし、近くには戦闘ヘリが飛び回っている。テントも大量に設営されていて、まるで、
(軍事基地じゃねーか!)
思わす叫んでしまったが、ナナエもすぐに同意して、
「これは一体どういうことなんですか。大穴のあるここは神聖な地であり政府でも立ち入りに厳しく制限を設定している場所です」
これにハイリがうーんと唸って、
「あたしらもよくわからないけど言えることは一つだけだねー」
そう言ってため息をついて、
「この学校に戦争を仕掛けようとしている可能性がある」
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