第220話 情報が筒抜けだ
「盗聴?」
ガスボンベ破蓋を倒した2日後。ナナエはヒアリと工作部とクロエを寮のナナエの部屋に集めていた。ちなみになんで2日後なのかというと破蓋を倒した後に大爆睡してついさっき起きたからだ。
ナナエは周りに向かって、
「先生――というより破蓋の浮上に計画性を感じました。私達が向こうの世界から帰ってきて疲労困憊の状態であのような強力な破蓋3体を浮上させるというのは、偶然とは思えません」
「それで盗聴って話になるのか……ってこの部屋に盗聴器が仕掛けられていたらこの話も完全に漏れるわよ!?」
そうクロエが仰天してあたりをキョロキョロし始める。
しかし、ナナエは頭を振って、
「それはないと思います。先生と前に対峙して話したときに私の中にいるおじさんのことは全く知りませんでした。もしこの部屋に盗聴器が仕掛けられているのであれば絶対に知っているはずです」
(まあそうだよな)
俺も同意する。
もし学校のあらゆる場所に盗聴器が仕込まれていたらこんな話もできやしない。というわけで絶対にないナナエの部屋に集まっているというわけだ。
さらにミミミが座っている床を軽く指で叩きながら、
「一応、あたしら工作部でもこの部屋に盗聴器がないか確認したが見つからなかった。目視での妙な機械が隠されていなかったし、この部屋から不審な電波も発信されてない。で、ついでに生徒会室を調べてみたんだが、4箇所ぐらいから見つかったわ。あの先生、かなり抜け目ないやつなのは間違いねえ」
「全部取り外したんでしょうね!?」
そうクロエに詰め寄られるミミミは動じず、
「はずしてねぇよ。そんなことをしたら先生に盗聴器の存在を勘づかれたとしられちまうだろ。だからあえて放置してある」
「た、確かに……しかし、生徒会室の話が先生にだだ漏れだったとは……会長や他の執行部の人たちとかなり不満を言い合ってたのに……」
「まっ、知ってたんだろうよ。だから余計に……ああ、別にいいわ。話を続けろ」
ミミミから話のバトンがナナエに帰ってきたので、
「学校や大穴の情報が先生に流れている可能性が高いです。早めにすべて見つけて取り外すべきだと考えています。ただ、ミミミさんのいうとおりそうした場合先生が別の手段を切り替える可能性もあるので、安易にやるわけには行きません。事前にこちらも対抗策を考えなければならないと思います」
「とはいえ学校がこの状況じゃ調査もなにも……」
そうクロエはため息をついて窓から外を見る。寮から少し離れたところに見える校舎のあちこちの窓ガラスが割れ、校庭も木々が散乱し、備品や設備もめちゃくちゃになっている。ガスボンベ破蓋を誘爆させたときの衝撃で学校が大被害を食らってしまったのだ。当然この寮もあちこちがボコボコである。ナナエやヒアリの部屋は無事だったが、場所によっては窓ガラスが吹っ飛んで部屋の中が使い物にならなくなっているそうだ。
そのため今は学校のあらゆる運営を停止して生徒総出で片付けをやっているそうだ。俺とナナエ(と多分ヒアリも)も寝てたからさっき聞いた話だが。
まあこっちは時間をかけて掃除すればなんとかなる話だが……
「大穴の方はどうしようもならねぇな。あたしらでどうこうできる状況を超えてやがる」
そう隣ではミミミがノートPCで映像を見ながら腕を組んでいる。大穴から離れた学校や寮がこのザマだ。誘爆が起きた大穴がどうなっているかなんて言葉にする必要もないだろう。
「第1層から第6層までの全部の足場も階段も崩壊消滅大炎上! 明かりもつけられなくなったので真っ暗です! これでは戦うことなんて不可能なんですよ! 次に破蓋が浮上してきたら大穴内部では戦えませんよおおおおおおおおおおおお!」
工作部がドローンで内部の様子を撮影してきた動画を見ながらマルがまた発狂している。相変わらずやかましい反応をするやつだ。
そんなマルの頭をミミミがなでながら、
「ウィウィ……うだうだ文句をいったところでどうにもならねえ。だが、マルの言う通りこれ以上の大穴内部での戦闘は無理だ。直す技術も資材もないんだからな。次に戦うなら地上でしかねえ」
「でもよー。それって毎回破蓋が地上に出てきちゃうってことだろー? つまりさっきの破蓋を浮上させていたのが先生なら目的を見事に達成ちゃったってことじゃないのかー?」
ハイリの指摘にミミミは頷き、
「ムカつく話だが先生は今回の攻撃で大穴内部の防御陣地の全てを破壊するという目的を達成してやがるんだよ。本気でムカつくが事実だ。受け入れなきゃならねえ」
「なにか対策は考えてますか?」
「バカの一つ覚えみたいなやり方になるが当面は煙幕で視界を遮るぐらいしか思い出せねーなぁ」
ナナエの問いにミミミは肩をすくめるだけ。地味な方法だなぁとおもっても他にやることが思いつかない。これから大穴バトルじゃなくて地上でバトルになるのか。巻き添えが大きくてやりにくいからこれも対策を考えていかないとならない。めんどくせー。
「ヒアリさんの意見も……ヒアリさん?」
ナナエが話を振ったら部屋の隅でヒアリがカーテン破蓋に包まれてすやすや寝息を立てていた。まだ眠り足りないのだろう。
(寝かせておこうぜ。必要なことはあとでお前から教えりゃいいよ)
「しかし、居眠りはよくないので……」
(お前が起こそうとしたところでそこのカーテン野郎が断固阻止する構えだぞ)
見ればヒアリをくるんでいるカーテン破蓋は動かないものの、触れるな!という感じのオーラをムンムンだしている。無理やり引っ剥がそうとしたら間違いなく暴れだすだろう。
「……わかりました。ヒアリさんにはあとで纏めて伝えます」
そうため息をついた。
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