猿と戦車
「聞いたか、丹野?」
「あぁ、聞いてたぜ、安達。」
「やっぱり超古代文明って存在したんだな。」
「あぁ、やっぱり今の人類が生まれる前に凄い連中がいたに決まってるぜ。」
「なんたって、
大昔に戦車があったくらいなんだから。」
世界史の授業で話が脇道に逸れて聞いた話では、古代から戦車が使われていたらしい。
結構近代的な兵器のイメージがあったが、まさかそんな昔からあっただなんて。
「ストーンヘンジとか、重機も無いのに作れる訳がないし、ピラミッドだって人力で組み上げられる訳が無いぜ。」
「クリスタルスカルとか、モアイ像とかもだ。やっぱりアレって超古代文明が作ったんだよ。」
「超古代文明ってすげぇ。」
やっぱり超古代文明。
我々の予想を遥かに上回る技術力。
ロマンの塊だ。
「でもどうして超古代文明って今は残ってないんだろう。」
「そこが謎なんだよ。」
「いや、待てよ。実は超古代文明って人じゃないのかも知れないぞ。」
「は?一体どういう事だよ。」
「私はこの前、猿が凄い知能を持って文明を築いていたって言う映画を見たんだ。」
「って事は!」
「そう、人類以外の生物。それでいて知性のある存在。つまり猿こそが超古代文明を築き上げたんだ!」
世界中に猿はいるし、昔から存在しているし、度々賢さアピールしてるし、これはもう超古代文明と関連性ばっちりだろう。
「実際、猿は賢いし器用だ。人間も賢いし器用だ。超古代文明は人間が築いていたと勘違いしても仕方がない。」
「猿が戦車に乗ってストーンヘンジやピラミッドを作ったのか。すげぇぜ。」
1つ問題があるとすれば、現在の猿はなんで超古代文明を捨て去って野生で生きているのかって事くらいだ。
わざわざ築き上げた超古代文明を捨てる理由なんてあるんだろうか。
「でもよ、猿って人間の進化前だぜ?それなら進化後の人間の方がもっとすげぇんじゃねぇの?」
「確かに!丹野にしては珍しく良い事を言うな。」
「珍しくってのは余計だぜ。」
それを言われると否定できない。
でもどちらにせよ超古代文明を捨てた理由とは一体なんだろうか………。
「さっきから話を聞いていましたが、別に猿は人間の進化前という訳ではありませんよ。」
「え?そうなのか?」
「進化の過程で人間に進化したか、猿に進化したかの違いです。」
「???猿は人間になれそうな位に賢くて手先が器用だぞ?」
「結局のところ、いくら賢くて手先が器用でも人類になる前に枝分かれした別の生物と言う事です。」
しかしそれでも映画に登場した猿が忘れられない。
あの賢さを見てしまっては忘れられないのだ。
「でも猿って文明を築くくらい賢いらしいじゃん!もしかしたら超古代文明を築いたのも猿かも知れないじゃん!」
「確かに猿の方が安達や丹野よりも賢いと思うので、そう勘違いしてしまうのも仕方が無いですね。」
「ん?なんで丹野はともかく私まで猿以下と言う認識で納得してるんだ?嫌味か?挑発か?」
「でも猿って賢いじゃないですか。安達と丹野って馬鹿じゃないですか。じゃあ猿の方が上なんじゃないかと。」
「人間基準で馬鹿なのと動物基準で賢いのを比較するんじゃない。」
同じ人間レベルの基準で比較したら私の方が圧倒的に賢いだろう。
まさか竹塚、本気で私が猿以下なんて思ってない、よな?
だからその残念そうな奴を見る目で私を見るんじゃない。
「あと古代の戦車と現代の戦車は違いますよ。」
「え?マジで?戦車に現代とか古代とかあるのか?」
「現代の戦車は機械で出来ていてガソリンで動きますが、古代の戦車は馬車的な物です。」
「でも戦車だぜ?強いのに変わりは無いはずだぜ?」
「当然、古代の戦車は大砲なんて積んでいないので砲撃は出来ないです。」
「まぁ車って事は遠くまで行けるだろうし、便利なのに変わりはないんじゃねぇのか?」
「現代の戦車はキャタピラで走破性が高いですが、古代の戦車は車輪なので悪路に弱いです。」
ドンドン残念な実態が明らかになって行く超古代兵器戦車。
丹野も食い下がり、思い描いていた超古代兵器戦車の良いところを探す。
そして竹塚はことごとくそれを否定していく。
夢やロマンは無いのか。
「でも戦車って響きの時点でメッチャ強そうだぜ?やっぱり超古代文明が作り出した兵器じゃないのか?」
「運用の難しかった古代の戦車は騎兵の登場と共に衰退していったのですよ。つまり超古代文明の産物ではなく普通の古代文明の産廃ですね。」
「戦車って言うカッコいい響きなのにダセいぜ………。産廃なのになんで戦車なんて名前つけたんだよ。」
「戦える車輪の付いた乗り物って事じゃないですかね。」
いつもなら良い感じの作り話で私たちの会話を盛り上げてくれるのに………。
一体どうしたんだよ、竹塚!
「竹塚!いつものロマン溢れる作り話はしてくれないのか!?今日はやけに冷たいぞ!」
「そんな事はありませんよ。時として友人に現実を教えるのも友人としての務めなので。」
「本気でそんな事思ってるか?もしかしてソシャゲのガチャで爆死したとかじゃねぇだろうな。」
「……………そんな事ある訳が無いじゃないですか。」
「おい、もう一度今のセリフをこっち向いて言ってみろ。」
絶対に爆死のせいだろ。
自分の不幸を理由に私達にまで被害を及ぼすな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます