武器

「漫画とかゲームのキャラが使いそうで使ってない武器協議会の開催だ。」

「は?」

「安達、よく協議会だなんて単語知ってましたね。」


伊江は訳が分からないと言いたげな表情をし、竹塚は着目してほしいポイントとまったく無関係の言葉について言及する。


「天啓が舞い降りたんだ。」

「つまりいつもの思い付きって事だよな。」


天啓と言え。天啓と。思い付きって言葉よりカッコいいだろう。


「僕もいろいろな漫画を読んだり、ゲームをやって来たので一家言ありますよ。」

「流石竹塚。特に抵抗なく話に乗ってくれる。」

「友達がいきなり変な事言い出したらツッコミくらい入れるんだよな。」


伊江、もう少し柔軟になろう。細かい事は気にしない方が人生楽しめると思うぞ。


「まずは消去法で考えていくか。」

「まぁそういう創作とかでだったら剣とか魔法とかは王道だよな。」

「そうですね。他にも槍や斧、弓に銃なんかもありますね。」

「鎌とかメリケンサックとか、ハンマーやメイスみたいな鈍器とかも結構見るな。」


あーだこーだ言いながら話は盛り上がっていく。

そろそろ本格的にこれは武器として使われていないのではないかという物を探していこう。


「ハサミを武器にするキャラクターっていないと思う。」

「いえ、待って下さい。巨大なハサミなら武器として扱ってみて見栄えが良いと思いませんか?」

「確かに。それならフォークみたいな食器は………。」

「グルメなバトルものでありそうだな。」


考えてみるといろいろな物が武器にされてるな。

日常は武器に囲まれていたのか?恐ろしい。


「いっそ掃除機とか。」

「それが主人公の武器になってるゲームがあるんですよ。」

「掃除機が?」

「はい、掃除機が。」


とんでもない物で戦うキャラクターも居たものだ。

しかしそんな物まで武器にするだなんて、やっぱり武器にされていない物を見つける方が難しいかも知れない。


「キリがないですし、教科ごと使う道具を上げていって武器になってなさそうな物を探しましょう。」

「そうだな。それじゃまずは国語、現文とか古文だな。」

「うぅん、本とか?」


国語で使う道具って言っても基本教科書くらいしか使わないような気がする。


「本を武器として装備するゲームはあった気がするな。次は数学。」

「定規やコンパスとか?」

「大きな三角定規って武器として使ってるキャラクター居そうですよね。大きなコンパスも。」


確かに昔は三角定規を盾に、コンパスを武器に見立てて遊んだりもしたな。


「地理や歴史、公民とかの社会だったら?」

「地球儀とか地図とか?」

「あぁ、それは武器にしているキャラクターを思い浮かびませんね。」


ここまで話してようやく光明が見えてきた。

確かに地球儀や地図を武器にする発想は普通ないだろう。


「この調子でいこう。生物、物理、化学とかの科学。」

「薬品系とか、人体模型とか?」

「薬品は毒を扱うキャラクターが居そうですし、人体模型も人形と言うカテゴリーで見れば武器にするキャラクターが居ますね。」


科学は確かに結構武器が豊富にありそうなイメージがあるな。


「英語?」

「これも教科書くらいしか使わないな。」

「というか必殺技の名前が英語っていうパターンなら結構ありますけどね。」


確かに感じとかに英語を当てはめて読む場合も結構あるな。そう言った意味では武器ではないけれどポイント高いぞ。


「基本的な五教科で考えてみたが、結構あるもんだな。」

「世界には武器が満ち溢れていたんですね。」

「だから争いが無くならないのか。納得だ。」

「なんでそうなる。」


天啓で武器になってそうで武器になってない物を探していったが、そうか。

きっと私に世界は争いに満ち溢れているという事を悟る為に天啓が降り立ったのか。


「そうですよ、安達。武器があるから人が争うのではないのです。人がいるから争いがあり、争いがあるから武器があるのですよ。」

「いやまぁそうなんだけど、俺達そんな大それた話してなかっただろ。拡大解釈し過ぎだからな。」

「確かに竹塚の言う通りだ。だったらどうすれば争いが無くなると言うんだ?」

「安達も安達で雑談を大きく捉え過ぎだからな。」


伊江が何か言っているが、それはさておき、竹塚は目を瞑り、重々しく語り出す。


「安達、人々から争いを無くす方法が無いわけではありません。しかしそれは茨の道ですよ。覚悟はありますか?」

「もちろんだ!」

「ならば君は魔王となるのです。人が存在し無くなれば人間同士の争いは無くなります。それに人類を滅ぼすことは出来なくとも共通の敵が居れば人類は団結するでしょう。」


そ、そんな。魔王だなんて。


「その役割は、真実に辿り着く事の出来た安達にしか務まらないでしょう。」

「そうか。分かった。私は魔王になろう。」


それが世界の、人々の為ならば仕方がない。

覚悟を決めよう。






「って言う事があったから私は将来、魔王になろうと思うんだ。」

「馬鹿じゃないの?いや、そもそもあんたは馬鹿だったわね。」


後日、沙耶に竹塚と伊江と話し、魔王になる決意を固めた話をしたら罵声が返って来た。

言葉だって強力な武器になるんだと痛感した。

そして改めてこの世の中は武器で溢れかえっていると感じるのであった。

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