忍者
「なぁ、忍者って本当にいると思うか?」
「おいおい丹野、何寝ぼけた事言ってんだよ。」
「そうだな。そんな事言われるまでもないな。」
「いるに決まってるだろう。」「いないに決まってるな。」
「「は?」」
丹野が忍者は本当にいるのか、なんて外国人みたいな事を言い出した。
それに対して私と伊江は当然の事実を突きつけたと思ったんだが、何やら認識に食い違いが発生しているようだ。
「お前ら、忍者は今や創作の中にしかいないに決まってるからな。」
「夢がない事言うんじゃない。いるかも知れないだろ、忍者。私は見たことあるぞ。漫画で。」
「創作じゃねぇか。」
「それに私は実は極秘情報を握っているんだよ。」
「極秘情報?」
この情報を知らないのであれば、確かに忍者は存在しないと思ってしまうのも仕方がない。
しかし、この情報を知ればその認識も覆るだろう。
「これは竹塚から聞いたんだ。極秘情報だから本来なら内緒だけど特別にって教えてくれてな。私もこの話をするべきではないと思うが、お前らを信用して話をするとしよう。」
「竹塚が、特別に。」
「一気に信憑性が下がったな。」
「いいから聞けって。なんでも皇居の守衛さんは全員忍術を習得していて、更には日本各地に小規模な隠れ里があるらしいんだ。そして海外には整形手術と体型管理によって現地人のように振舞う忍者が諜報活動を日夜行っているらしいんだよ。」
私もこの話を聞いた時は驚いた。
でもやっぱり忍者はロマンがある存在だ。海外でも活動していると思うと、忍者はいると信じている外国人も出会ったことがあるからこそ、忍者が実在すると言っているんだろう。
しかし敢えて大袈裟に忍者を信じていると言う事で密かに活動している忍者の存在に目が向かないようにする。
つまり彼らもまた協力者だったという訳だ。
「スゲー!やっぱり忍者って実在したんだ!」
「そうだぞ丹野。なんでも昔から国際的に活動していて冷戦を終結させたりするのにも一役買ったって竹塚が言ってた。それに人々には知られていないが、世界の危機を何度も救っているんだってさ。」
「うおぉ!やっぱり忍者って凄いな!世界の救世主だぜ!」
「ゲームとか漫画とかで敢えて題材にされることで創作の存在であるかのように見せて自身の活動を隠しているんだ。情報操作で自身を隠すとか流石忍者だろ。」
「やっぱり忍者って言ったら戦闘だけじゃなくて裏の仕事も完璧にこなすのか。」
丹野は目を輝かせて話を聞き、忍者の凄さに感服している。
私も竹塚からこの話を聞いた時は同じ表情をしていただろう。
それほどまでに感動的で、ロマンが溢れているからだ。
「そうか、バレていたんだな。」
「え!?伊江!?」
「まさか、お前!」
「真実に気が付いてしまったんなら、どうなるか分かるよな?」
なんてこった!実は伊江が忍者だったなんて!
秘密を知った者は消される。これは忍者物でよくある展開だ。
くぅ、ロマン溢れる展開だけど、このままでは………!
「まぁ冗談だけどな。」
「冗談かよ!」
「本気で信じちまったじゃねぇか!」
真剣な表情を一転、伊江はケラケラと笑って冗談だと言ってきた。
迫真の演技過ぎだろ。演劇部にでも入部したらいいんじゃないだろうか。
「まぁ実際のところ作り話だろうな。なんたって竹塚の話だぞ。それに仮に本当だったとして、なんであいつがその事を知ってるんだっての。」
「実は竹塚の家族は忍者をやってるからとか?」
「あいつ自身が忍者だったりして。」
「信憑性に欠けるな。」
それでも信じたいじゃないか。ロマンのある話を。
それに、
「私は思うんだ。」
「何を?」
「演劇部の部長に大久保ってやつがいるんだけど、知ってるか?」
「あぁ、何でも凄い演技力の持ち主で、姿まで役になり切って変えているとか聞いたことがあるな。」
そう、演劇部の部長は役によって顔、体型、雰囲気を変えている。
劇によって見た目が別人レベルで全然違うのだ。
それを考えると、
「大久保って忍者なんじゃないかと思うんだ。もしくは忍者じゃないにしても、あれだけの技術があるなら実際に忍者が居ても不思議ではないと思うんだよ。」
「それを言われると確かにおかしくはない、のか?」
身近に凄まじい技能を持った人間がいる事で伊江も説得できそうだ。
そりゃいつも見るたびに別人のような姿をしている奴がいたら忍者だっているんじゃないかと思うだろう。
「それに実際に見たことが無いなら、間違いなく実在するとは言えないかも知れないけど、間違いなく存在しないとも言えないだろ?だったら忍者はいるって考えた方がロマンがあるじゃん。」
「まぁ、それもそうだな。」
どうやら伊江も納得したようだ。
やっぱりロマンがあった方が良いからな。
そして雑談を終えて帰宅しようと廊下を歩いていると男子生徒とすれ違った。
その瞬間、
「内緒ですよ?」
と聞こえたような気がした。
振り向くとそこには誰もいなかった。
「ん?どうした?」
「いや、何でもない。」
気のせい、なんだろうか………。
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