作り話
「安達くん、知っているかい?」
「なんだよ、長谷道。」
放課後、いつものメンバーではなく、長谷道と話をしていた。
なんだか碌でもない話題を振られそうな予感がするぞ。
「ソーラン節ってかつお節の一種なんだよ。」
「マジで!?………とでも言うと思ったか?」
「あれ?おかしいな?」
大方竹塚から聞いたんだろう。
「竹塚くんは昔『ソーラン節はかつお節の一種だって話をしたら信じられた』って言ってたんだけどな。」
やっぱり竹塚から聞いたのか。
余計な事を吹き込むんじゃない。
「今でも信じてると思ってたから、もしも一緒にスーパーにお使いを頼むことがあったら『ソーラン節買って来て』って頼もうと思ってたんだけど。」
「止めろ。そもそもお前に頼まれてお使いに行くってシチュエーション自体が無いと思うけど、もしも今でも信じてて店員さんに『ソーラン節ってどこですか?』って聞いちゃったらどうするんだよ。」
「とても面白いと思うよ。」
「私は何一つとして面白くない。」
恥ずかしいだろうし、店員さんも困惑するだろう。
『ソーラン節ってどこですか?』って質問だと、ソーラン節の発祥の地がどこであるか聞かれてると勘違いされてもおかしくはないし、そもそもスーパーの店員さんにそんな質問をする状況が既に意味不明だ。
「それなら『人面軒』って言う中華料理屋があるのは知ってるかい?」
「マジで!?………って言うと思ったか?」
絶対会話の流れ的に作り話だろ。
せめてそっちの話題を先に出されてたら聞く耳を持っていただろうに。
「なんとか軒って付けると中華料理屋っぽくなるのは分かるけど、流石に人面軒は嘘だろ。絶対『人面犬ってイントネーション替えたら中華料理屋って言っても信じてもらえそう』とか思って言っただろ。」
「竹塚くんの話なら素直に信じるのに、私の話は信用ならないと思ってないかな?」
「思ってる。とっても思ってる。」
だって大体、碌でもない話しかしないじゃん。
日頃の言動の結果じゃん。
自業自得ってやつじゃん。
「でも人面軒なら探していて他人に聞いても、馬鹿と思われるよりも珍しい生物を探している変人くらいで済むかも知れないよ。」
「なんで常識的に生きている私が変人扱いされる前提なんだよ。」
「え?」
「え?」
おい、なんでそこで疑問を抱くんだよ。
少なくとも長谷道にだけは変人扱いされたくは無いぞ。
「とにかく探さないから、そんな中華料理屋。」
「街中で人面軒の場所を聞いてまわる安達くんを見たかったんだけどな。」
「絶対に嫌だぞ。」
なんでこいつは私に変な事をさせようとするんだよ。
いや見てて面白そうだからってだけなんだろうけど。
「おかしいなぁ、竹塚くんの話ではどんな話でも信じる単純、じゃなくて純粋な人だと言ってたんだけど。」
「誰が単純だ。あと竹塚は作り話をよく話すけど、それで私の事を騙して何かさせようとはしてないから。」
「騙すだなんて人聞きの悪い!私はただ安達くんで………安達くんと遊ぼうと思っていただけなんだよ!誰だって親友と楽しいひと時を過ごしたいと思うのは当然の事じゃないか!」
勢いで押し切ろうとしてるけど、私『で』遊ぼうとしてた部分はしっかり聞こえているからな。
「今日は用事で来れない竹塚くんの分まで安達くんを楽しませてあげようと思ったんだけど………。」
「気持ちだけは受け取っておく。あと竹塚は用事って言うか、私の課題を手伝うのとゲームを並べた結果、ゲームの方を優先した感じだ。」
まぁ長谷道は変人なりに考えて発言してたんだな。
結局内容は変な事だったけど。
「今日は竹塚くんに見捨てられた哀れな安達くんを楽しませてあげようと思ったんだけどな………。」
「気持ちも受け取らないでおく。むしろゴミ箱に捨ててやりたいくらいだ。」
長谷道は変人なりに考えて煽って来てるんだな。
やっぱりコイツ、関わらない方がいい奴なのでは?
「まぁまぁ、そんな事を言わないでくれよ。私達は親友じゃないか!そして親友が課題で困っている時に手伝ってあげてるのは親友の役目だとも!」
「…………そうだな!私たちは、うん、アレだな。親友、的な?」
こんな変人なのに勉強は出来るというのが納得出来ない。
納得出来ないが、課題を手伝ってもらえるなら気にするべき問題ではないな!
しかし私の周りには、私には無い長所を持った奴らがいるけど、それ以上に目を瞑りたくても瞑れない程の欠点を持ってるんだよなぁ。
目の前の変人とか。
特に生徒会のメンバーとか、各委員会の委員長とか、癖があり過ぎる。
この学校、大丈夫なんだろうか。
「さて、お遊びの時間は終わりにして、そろそろ課題を手伝ってあげようじゃないか。」
「頼んだ!」
まぁ私が気にする事じゃないか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます