RPG
「……よ。…者よ。」
睡眠中、何者かに呼ばれている気がする。
目を覚ますと、そこには
「勇者よ。目覚めなさい。」
「は?母さん?え、勇者って何?」
「あなたも今日で16歳。旅立ちの日ですね。さぁ王様に会いに行くのです。」
「だから、一体何事?王様って何?」
「さぁ、王様に会いに行くのです。」
ダメだ。返事してくれない。
正確には同じことしか言ってくれない。
「母さん、いい歳して何言って「さぁ、王様に会いに行くのです。」セリフは一緒なのに何か圧があるんですけど!?怖っ!」
ゴゴゴゴゴって言う効果音が聞こえてきそうな圧を感じる。
表情もセリフも変わらないのが余計に恐怖を掻き立てる。
どうやら夢を見ているようだ。それなら適当に動き回るか。
そう考えて家を出ると見知った顔を見かける。
「竹塚。」
「ここは始まりの街です。」
「お前もか。」
「スタートボタンを押すとメニューを開けますよ。」
「スタートボタンってどこだよ。」
『竹塚 が 仲間になった!』
「え、お前仲間になるの?まあいいや。王様ってどこにいるんだ?お城か?それっぽい建物はどこにも無いけど。」
「王様は2-Bの教室にいますよ。」
言ってることはファンタジーなRPGっぽいけど周囲は完全に私の住んでいる街だ。
どうせ親方辺りが魔王とかのポジションなんだろうな。
「よく来たなぁ、勇者よ。待ってたぞ。」
「親方は魔王じゃなくて王様の方だったか。貫禄があるから配役としては合ってるな。」
「この近隣まで覇王の魔の手が伸びて来ている。勇者よ、覇王を倒し、世界に平和をもたらすのだ。」
「王様が戦った方が強いんじゃ「準備金として100,000ゴールドを持っていくがよい。」覇王の討伐!任せてくれ!」
流石親方。気前が良い。これだけ資金があれば何でも買えるんじゃないだろうか。
とりあえず何か装備を売ってそうなところに行くとしよう。
「hey竹!武器防具を売ってる店はどこだ?」
「体育倉庫には商人がいます。」
体育倉庫か、武器にバット、防具にボールを入れるカゴでもあるんだろうか。
いや現実にありそうなものではなく、あえてファンタジーな物があるかも知れないな。
「武器や防具は、装備しないと意味がないよ。」
「お次は伊江か。」
『伊江 が 仲間になった!』
「え!?お前も!?どうやってアイテムを購入すればいいんだよ!」
「勇者に装備できそうな武器はこれだな。」
伊江が何かを差し出してくる。
なんだ、仲間になってもアイテムをくれるのか。
さて、これは………
「傘じゃないか!もっと他に何かないの?」
「600ゴールドだな。」
「はい、お金。で他に何かないの?」
「勇者に装備できそうな防具はこれだな。」
またしても何かを差し出してくる。
「雨ガッパ。」
「2,000ゴールドだな。」
「まぁ、水属性の耐性が付きそうだし、うん。」
初期装備がしょぼいのはRPG的に仕方が無いか。
むしろ耐性付きの装備が手に入ったからラッキーかも。
「ちなみに他にはどんなアイテムがあるんだ?」
「他にはAK-47やRPG-7があるよ。」
品揃えを確認しようとすると、おもむろにライフル銃やロケットランチャーを取り出す伊江。どっから出した。
てか、
「いや、そんな武器あるならそっちを寄越せよ!絶対そっちの方が強いだろ!」
「合計で90,000ゴールドだ。」
「よし、買った!」
こんな兵器があれば覇王だろうが魔王だろうが余裕だろう!
「使用するには弾薬が必要だな。」
「え?」
「残念だが、金が足りないようだな。」
それを先に言えよ。素寒貧だよ。
まぁでも、装備してるだけで威嚇にはなるだろうし。
もしモンスターとかが現れても、これで脅せば逃げてくれる。と思う。
「その武器は勇者には装備出来ないみたいですね。」
「え?」
「それじゃ、今まで世話になったな。旅の無事を祈ってるよ。」
『伊江 が パーティーから離脱した!』
「待てぇ!金返せぇ!って足速っ!?お前現実ではそんなに足速くないだろ!」
人間離れした速さで詐欺師が逃げていく。
あいつ絶対敵の手先だろ。荷物が増えて金が減っただけとか、どうすればいいんだろうか。
ポツリ、ポツリと雨が降ってきた。
手に入れた装備が早速役に立ったことだけが幸運か。
トボトボと歩いていると、
「あんたが勇者ね。」
「この声は!」
聞きなれた声で呼ばれる。
声の方へと振り向くと、
「沙耶!ってえぇぇ!?」
そこにいたのは世紀末で覇者をやっているんじゃないかってくらい覇王感溢れる装備をして巨大な馬に乗った沙耶だった。
覇王ってお前かよ。勝てる気がしない。
そもそもラスボスが初戦で出てくるなよ。
「あたしの軍門に降るのであれば「喜んで降参します!」いいわよ。降伏を認めるわ。まずは手始めにあんたんとこの王を倒してきなさい。」
おっと?一難去ってまた一難。
親方を倒して来いと来たか。ムリゲーでは?
いや、今ならまだ沙耶に降参したのはバレていないはず!今がチャンスだ!
「おや?珍しく隣人が増えたね。君は一体何をやって投獄されたんだい?」
気が付けば牢屋に閉じ込められていた。
対面の牢屋には青井が捕まっていて、私に話しかける。
「いや、ちょっと王様に会いに行ったんだけど覇王に降参したのが何故かバレていて入り口のところで捕まった。」
「国家反逆罪か。中々にファンキーだね。まぁ、ここの食事はマズくはないし、ゆっくりしようじゃないか。」
脱獄のアイデアを聞こうとしたら、いつの間にか竹塚が居なくなっている。
仕方がない、一人で脱獄の方法でも考えながら休むとしよう。
そうして気が付くと、
「敦、起きなさい。学校に遅刻するわよ~。」
知っている天井だ。
夢は覚めたけど、なんかモヤっとする終わり方だったな。
まぁいいや。朝の支度をするとしよう。
続く………?
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