星の光

「聞いたか、丹野?」

「あぁ、よーく聞いてたぜ。」

「信じられるか、丹野?」

「信じられねぇぜ。」

「だよな。まさか、






夜空に浮かぶ星の光は、ずっと昔に星が爆発した時の光だなんて………。」


あの光、『きれいだなー。』とか思ってたけど、そんなに物騒な物だったのか。


「てか、それだとしたらヤバいんじゃねぇか?」

「どうして?」

「爆発が地球まで来たら地球が吹き飛んじまう可能性だってあるんだぜ?」


はっ!そうか。その可能性は考慮していなかった。

丹野、たまに、ごく稀に鋭い男だ。


「確かに言われてみれば、大きな星や小さな星があるけれど、あれって星の爆発が迫ってきているからなのか!」

「きっとそうだぜ!『えんきんほー』?だったか?遠くのものは小さく見えて、近くの物は大きく見えるんだ。」

「これってヒーローになるチャンスなんじゃないか?」

「確かに!迫り来る星々の爆発から地球を守れたらヒーローだぜ!」


これで進路希望調査でヒーローって書いても怒られないぞ。

世の為、人の為の仕事だし、むしろ推奨される可能性もあるな。


「でもどうやって爆発から地球を守るんだ?」

「………なんか、こう、ヒーローの不思議なパワーで…………。」

「無理そうって事だけは伝わって来たぜ。」


まだ思い付いてないだけだから。

急に爆発から地球を守るとなっても思い浮かばないだろ。

そうだ。


「普段映画とかではアメリカ軍とか自衛隊がボコボコにされたりしてるけど、きっと現実では活躍してくれるだろう。」

「自分で地球を守ることを諦めてるんじゃねぇよ。」

「丹野、落ち着いて考えてみろ。素手で武器も特に持ってない私が、戦闘機とか戦車みたいな兵器を使える人たちよりも活躍できる訳が無いだろ。私は私に出来る範囲で地球を守るよ。だから決して諦めた訳ではない。」


人には向き不向きがある。

それぞれがそれぞれの得意分野で頑張る事で世の中は成り立っているんだ。

だから私の考え方は間違っていない。


「出来る範囲って、具体的に何するんだよ?」

「応援とか?」

「ショボいぜ。」

「じゃあ丹野ならどうするんだよ?」

「そりゃお前、オレは自衛隊に入って地球を守るぜ。体力には自信があるんだ。」

「丹野、自衛隊に入るのには頭の良さも必要だと思うぞ。」


人の事をショボいとか言ってるが、お前の頭だってショボいからな。

脳筋に自衛隊は無理だぞ。


「それに自衛隊って平和を守るために存在するんだから、平和を乱すような事態を待ち望んでるような奴には相応しくないと思うぞ。」

「くっ、安達のくせに正論だと!?否定できないぜ。」


『くせに』ってなんだよ、『くせに』って。

私はいつだって真面目で正しい事を言っているだろう。


「そうだ!それなら組織を作れば良いんだ!オレは地球防衛軍を組織するぜ!」

「丹野、お前…………」


私の正論でショックでも受けたのか?


「天才か!?」

「だろ?」


きっとショックを受けたせいで天才的な発想に至ったんだな。

つまり私のお陰って事か。


「自分たちがトップに立てば、自分の力でどうにかする必要はない。部下を使えば良いんだから。そして部下に指示を出した功績で地球を守ったって事に出来る訳だ。」

「つまり楽して地球を守ったヒーローになれるって事だぜ!」

「丹野、やっぱりそう言う組織には天才的な、馬鹿なリーダーを支えてやれるNo.2が必要だと思うんだ。」

「そうだな。オレも優秀な部下がいた方が良いと思うぜ。」

「つまり、私「竹塚に力を貸してもらうぜ。」を、うん、竹塚は優秀だな。けど、私達の様に互いに信じ合える相棒的な要素も必要だと思うんだ。」

「なるほど。でも安達よりも竹塚の方が圧倒的に優秀だし………。」

「それを言われると否定できないんだけど。」


そりゃ竹塚の頭の良さは日頃、課題を手伝ってもらったり、勉強を見てもらったりして理解している。

いくら私でも、竹塚と比べられては分が悪いだろう。

たぶん友達の中で、と言うか学校の中でもトップクラスに頭が良いだろうし。






「そんな訳で協力してくれ、竹塚!」

「とりあえず安達と丹野は今日も授業を全く聞いていなかったという事だけはよく分かりました。」

「聞いてたぞ。」

「だからヒーローの話をしてたんだぜ。」


竹塚こそ、もっと私たちの話をしっかり聞いて理解してほしいぞ。


「良いですか?正確には爆発と言うよりも核融合反応によって恒星における水素がヘリウムに変わった際に発生した熱と光なんですよ。」

「「?????」」


竹塚が謎の呪文を唱え始めた。

私達は混乱した。


「まぁそうですね。もしも将来、そんな危機的な状況とやらになったら協力してあげますよ。」

「本当か、竹塚!」

「やったぜ!」


なるほど。

とりあえず協力を取り付けられて何よりだ。


「なので今は今日の授業内容を復習しましょうか。」

「「え?」」

「言ったでしょう。『2人とも今日の授業を全く聞いていなかったという事だけは理解出来た』と。」


おかしい、私達は地球を守るための話をしていたはずなのに………。

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