お供

「桃太郎っているじゃん。」

「居ると言うか、物語として存在していますね。」

「私は思ったんだ。」

「きび団子を食べたいとかですか?実はそんなに美味しいわけじゃないらしいですね。食べた事は無いですけど。」

「マジで!?………いやきび団子の味は確かに気になるけど、今回はそっちじゃなくて。」


美味しくは無いのか………。

あらゆる動物が要求して来るから、てっきりそれほどまでに美味しいのかと思ってしまった。

私の心の中の沙耶も残念そうに溜め息を付いているぞ。


「じゃあきび団子の消費期限についてですか?」

「それも違う。と言うか普通そこに目を付けたりはしないだろ。」

「安達は普通じゃないので。」

「やっぱり私の天才性は何をしていなくても溢れ出てきてしまうのか。」


まぁそう言われてしまっては許さざるを得ない。

確かに私の天才的な発想を予想しようにも、それは難しいだろうからな。


「安達は普通じゃないくらい馬鹿なので。」

「酷いぞ。」


サラッと馬鹿にされた。

許せない。

私の発想が斜め下過ぎて予想するのが難しいと言いたいのか。

いや、今重要なのはそこではない。

私が言いたいのは、


「桃太郎って鬼が登場するじゃん。」

「そうですね。むしろ鬼が登場しなかったら桃から人間が生まれると言う、ちょっと不思議なだけの話で終わっちゃいますからね。」

「で、鬼って強そうじゃん。ゲームとかでも中盤から終盤くらいに登場しそうだし、ボスキャラとかで出てくることもあるし。」

「そうですね。鬼が強くないと桃太郎が活躍する前に人間に対峙されてお終いですからね。」

「そうなると、だ。味方が犬、猿、雉だけで勝つ桃太郎ってヤバくないか?」




「そう言う事ですか。安達の言いたい事は良く分かりました。」

「桃太郎マジヤバい。桃に乗って川下りするだけはあるぞ。」

「別に自らの意思で川下りをしていた訳じゃないと思いますけどね。」


未だに日本全国で語り継がれる事はある。

恐らく桃太郎の存在を知らない者など存在しないだろう。

それもそのはず。

きび団子で買収した動物を引き連れて鬼を退治すると言う偉業をやってのけたのだから。


「安達、良い事を教えてあげましょう。」

「なんだ?」

「桃太郎を育てたお爺さんは多くの伝説的ボディビルダーを育て上げたインストラクターだったんです。」

「インストラクター!?」


つまり桃太郎はムッキムキの筋肉モリモリマッチョマンだったのか!?

確かに鬼と同程度、いやそれをも上回る体格と筋肉だったら、もしかしたら桃太郎単独でも鬼退治を成し遂げられるのかも知れない。


「桃太郎を育てたお婆さんは古くから伝わる一子相伝の武術を修めた天下一の武芸者だったのです。」

「天下一の武芸者!?」


しかも一子相伝の武術だと!?

それじゃあお爺さんに授けられた圧倒的パワーに加えてお婆さんからは天下一のテクニックを授けられていたのか!?

しかしそう考えるときび団子の必要性とは………いや、きっとプロテインとか、栄養バランスがメッチャ良い感じの携帯食料だった可能性もあるし。


「犬は闘犬で有名な土佐犬です。」

「土佐犬!?」


あの厳つくて強そうな!?

確かに土佐犬なら鬼相手でも引けを取らないかも知れない。

むしろ瞬殺する可能性まである。


「猿は太閤豊臣秀吉です。」

「豊臣秀吉!?」


私でも知っているレベルの有名人だ。

確か天下を取ったらしいし、部下も沢山引き連れているだろう。

桃太郎サイドは人数が少なすぎるのでは、と思ったが、豊臣秀吉が部下を連れて来ていたら人数的な不利も解消できるだろう。


「雉は新聞や週刊誌などに記載されている記事です。」

「記事!?」


記事!?

……………いや記事!?

ここに来て異色過ぎる仲間が現れたぞ!?

他の情報は鬼と戦う上で納得出来る情報だったが、記事だけは想像が出来ないぞ?

紙って結構鋭いし、こう、素早く『シュッ!』っとやって斬る、とか?

いやショボいな。

他のメンバーがメンバーだけに、記事だけがショボい。

圧倒的に浮いていると言えるだろう。


「安達は記事と聞いて理解出来ていないでしょう。」

「うん。全然分からん。」

「彼は情報戦を担当します。」


情報戦!

なんかカッコいい響きだ!

………具体的に何をするか分からないけど。


「鬼側の秘密を暴露して士気を下げ、桃太郎側が正義であることを示すとともに、鬼を退治した後にお宝を全て奪っても正義の行いである、と情報を操作して民衆に良いイメージを抱かせるのです。」

「1人だけベクトルが違い過ぎる。」


ある意味一番怖いまであるぞ、記事。

隠し撮りとか捏造した内容の記事とかを流されて外を歩けなくなってしまう。


「確かにこのメンバーなら鬼にだって余裕で勝てると思うぞ。と言うか、なんならお爺さんとお婆さんだけでも鬼退治出来てたんじゃないか?」

「そうでしょうそうでしょう。しかしお爺さんとお婆さんが鬼退治に行く訳にはいかなかったのです。」

「どうしてだ?」

「2人とも通販を頼んでたので、家にいないとマズかったんです。」

「あぁ、なるほど。」


それは仕方がない。

納得せざるを得ない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る