真・RPG

※このお話は『続々・RPG』の続編です。ご注意下さい。




やっぱり夢を見る。

相変わらずRPG風な夢だ。

この前はミッションをクリアして丹野を仲間にした。そして王様役の親方と覇王役の沙耶の戦いを止め、大団円を迎えたと思ったら竹塚が魔王っぽい恰好とポーズをしていたのだった。


「竹塚、お前が魔王ポジションとかマジかよ。」

「勇者よ、よくぞここまで辿り着きましたね。」

「いや辿り着いたって、ほぼ初期地点なんだが。」

「その実力と勇気を称え、ある提案をしてあげましょう。」


こちら発言が全て無視されたぞ。こいつも会話がRPGに縛られているのか。

それにしても提案?もしかしてアレか?王道RPGで伝説のあのセリフ。実際にプレイしたことは無いけれど、それでも聞いたことのある、あのセリフが出てくるのか!?


「もし僕と手を組むのであれば………」

「ゴクリ……!」


来るか?来るのか!?あのセリフが!


「僕が喜びます。」

「いや喜ぶだけかよ。私に一切メリット無い提案じゃないか。」


むしろなんでそれで協力を仰げると思った。

そこは世界の半分を条件にするところだろう。

しかし、


「例えどのような条件であったとしても、私は魔王に与することなんてしない!世界の平和は私が守る!」


ふっ、決まった。これは相当カッコいいだろう。夢の中とは言え、初めて勇者っぽい事言ったぞ。


「そうですか。それは残念です。それでは決着をつけるしかないようですね。」


竹塚が構える。

あれ、でもちょっと待てよ?私、旅に出てから一度も戦ってないからレベル1のままだぞ?

これは死んだのでは?いやこんなところでラスボス戦が始まる訳がないだろう。上手い事説得してお帰り頂こう。

さもなくば命は無い。私の。


「なぁ、竹塚。こんな状態で戦うのもアレだし、いったん仕切り直さないか?な?」

「では戦いの前に君たちを回復してあげましょう。」


『勇者たちは 完全回復した!』


「あ、ちょっとこの後予定が………。」

「知ってますか?魔王からは逃げられない。」


ヤバい、逃げ道が塞がれた。

今度こそ死か?教会で復活できるんだろうか。


「見てらんないわね。仕方が無いから手を貸してあげるわよ。」

「沙耶!?」

「俺の城で好き勝手な事させてたまるかってぇの。力を貸すぜ、勇者。」

「親方!?」


ついさっきまで対立し、そして手を取り合った二人が手を貸してくれるとは。

これほど心強い援軍を得られたんだ。これなら魔王にだって勝てるかも知れない!


『王様(Lv99) が 仲間になった!

 覇王(Lv99) が 仲間になった!』


いや強過ぎでは?私要らなくない?

さっき説得に失敗してたら存在ごと抹消されていた可能性もあるぞ。


「応援なら任せておくれ。」

「頑張れー、負けるなー。」


一方で強力な仲間が加入して青井と丹野は観戦モードだ。サボるんじゃない。と言うか私もそっちに行きたい。魔王とか絶対強そうじゃん。


「ふっふっふ。その二人を仲間にしましたか。」


ほら、まだ余裕そうだし。私がいても足を引っ張るだけだと思うから。


「勇者よ、見たところ君は碌に戦闘経験を積んでいないようですね。」

「ソ、ソンナコトナイヨ?」


ヤバい、私だけ弱いとバレたら集中的に攻撃される危険性が。なんとか誤魔化して狙われないようにしなくては。


「しかし僕はフェアに戦おうと思います。」

「フェアに?」

「そう、フェアに、です。」


一体何を言っているんだ?

なんかすごい魔法のパワーで私をレベルアップさせてくれるのか?

それとも私レベルまで弱体化してくれるのか?


「具体的に言うとじゃんけんで勝負しましょう。」

「じゃんけん。」

「それから人数が多くなると決着が付きづらくなるので僕と君の一騎打ちです。」

「じゃんけん。」


え?この魔王は何を言っているんだ?世界の命運を賭けた戦いをじゃんけん?

まともに戦えない私が言うのもなんだけど、それでいいのか。

初めてだよ、じゃんけんで全てが解決する世界の命運なんて。


「繰り返し言いますが、そこの二人はくれぐれも参戦しないように。あくまでも勇者と魔王の戦いなので。」


なんだこの念の押しようは。なんでそこまで勇者と魔王の一騎打ちにこだわるんだ?

確かにその構図は非常に絵になるし、ロマンが溢れているが………。

待てよ?


「竹塚、お前のレベルは何だ?」

「魔王にレベルとか無いです。」

「竹塚、お前親方と沙耶に勝てるのか?」

「魔王を舐めてもらっては困りますね。勇者なんて瞬殺ですよ、瞬殺。」


なるほど。


「よし、親方、沙耶!魔王竹塚を打倒して世界を守るぞ!」

「せっかく人が慈悲を見せたというのに。ですが仕方がありません。僕も本気を出すとしましょう。」


そう言うと竹塚は両手を掲げ、威圧感を放つ。

あれ?実は弱いからじゃんけんで決着をつけようとしたのではないのか?判断ミスったか?

実は強いとかだったら私死んじゃうぞ。


「降参します!許してください!この通りです!」

「は?」


竹塚が動き出し、目を瞑り身構えるが攻撃が来る事は無かった。

目を開けるとそこには五体投地する竹塚の姿が。


「いや本当に弱かったのかよ。」

「ふっ、僕の事をあまり侮らないでほしいですね。勇者と普通に一騎打ちしたって負ける自信があるんですよ。」


頭を上げず、自信満々に答える魔王。

だいぶ情けないぞ。


「なんでそんな実力で魔王なんてやってんだよ?世界征服か?ロマンがあるもんな。世界征服。」

「だって魔王ってカッコいいじゃないですか。」

「分かる。」


確かに魔王ポジションはカッコいいから仕方が無いね。

実力が伴っていなかったけど。






こうして世界に平和が訪れたのであった。






~CAST~


勇者 安達敦


勇者の母 安達母


王様 梅嶋牛雄


武器屋 伊江浩二


覇王 入屋沙耶


囚人 青井葵


兵士 丹野弾吾


魔王 竹塚武司




Fin






『ピピピピピ!』


電子音で目が覚める。

普通、夢の中までスタッフロール的なのって流れるものか。

それにしても




「変な夢だった。」

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