叩いてかぶってジャンケンポン
ある日の放課後。
「叩いてかぶってジャンケンポンをしよう。」
「バラエティー番組を見たに1票だな。」
「買い物に行った時におもちゃコーナーを見たに1票ですね。」
「私を無視して話をするんじゃない。あとバラエティー番組に影響された訳でもなければおもちゃコーナーに影響されたからでもない。」
確かにテレビで見たことをやろうとしたことはあるけど。
昔を思い出して何かやろうとしたこともあるけど。
しかし今回はそうじゃないんだ。
私は掃除用具を入れているロッカーの上に置いてある段ボールを指差す。
「ほら、あれを見ろ。」
「防災用具ですね。」
「その中の1つに何がある?」
「………ヘルメットだな。」
「つまりはそういう事だ。」
そこにあるヘルメットを見て思いついた。
思いついたので提案した。
「ちなみに道具はあるんですか?」
「無い!」
「よくそんな状態で提案出来たな。」
「今思いつたんだから仕方がないだろ。と言う訳で今度ピコピコハンマーを持ってくるから。」
ヘルメット以外は何も無い。
ピコピコハンマーも無い。
かと言ってヘルメットで叩くのは危ないし、後日やる事にしよう。
そして数日後の放課後。
「それじゃあ始めるぞ!」
「あ、僕の代理を呼んでいるのでもう少し待って下さい。」
「代理?」
叩いてかぶってジャンケンポンを開始しようとしたところで竹塚が待ったをかける。
一体誰の事だ、と問いかけようとしたタイミングで教室の扉が開かれる。
「呼んだかぁ?」
「親方!?」
「わざわざ悪いですね。僕の代わりに叩いてかぶってジャンケンポンをしてもらいたいんですよ。」
「下駄箱の所で『助けて下さい。』ってメッセージが来たから何かと思えば、そんな事かよぉ………。まぁ今日は家の手伝いはねぇからいいけどよぉ。」
現れたのは親方だった。
よりにもよって代理で親方を呼ぶなよ。
これには抗議せざるを得ないぞ。
「待ってくれ。親方は反則だろ。頭が潰されるぞ。」
「遊びで殺傷沙汰にするのは良くないと思うけどな。」
「ふっふっふ、命乞いをするなら今のうちですよ。」
「おめぇらは俺の事をなんだと思ってんだぁ?んな事する訳ねぇだろぉ。」
だって親方だし。
実際凄まじいパワーの持ち主であることは事実だし。
「安達が言い出しっぺだよな。先に親方との対戦は譲っておくな。」
「譲らなくていい。譲らなくていい。」
「それじゃぁ始めるかぁ。」
「親方が既にスタンバイしてるし!」
親方は既に席に着いており、拳をゴキゴキと鳴らしている。
明らかにじゃんけんをする体勢には見えないぞ。
どちらかと言うとこれから他校に殴り込みに行くようにすら見える。
そんな親方に恐れをなした伊江は私の背中をグイグイと押して着席させる。
やるしかないのか………!?
はっ、そうだ!良い事を考えたぞ!
「「最初はグー!ジャンケンポン!」」
「安達はグー、親方はパーを出しましたね。」
「葬式には出席してやるからな。」
ジャンケンの結果は負け。
しかし私の秘策はこの結果の先にある!
「おっと!?安達がピコピコハンマーを手に取りました!」
「殺られる前に殺るって事だろうな。」
勝った!
これで親方の攻撃を免れる!
「そりゃルール違反だろぉ!」
「ぐはぁ!」
「しかし安達が親方を叩くよりも先に親方のチョップが安達の頭にヒットしました!」
「用意したヘルメットも被ってないし、致命傷だな。」
と思ったがそんな事は無かった。
痛い。
めっちゃ痛い。
私がピコピコハンマーを振りかぶった瞬間には親方の手が私の頭に目掛けて振り下ろされていたのだ。
痛みの中で『これ、素直にヘルメットかぶって受けておいた方が痛くなかったのでは?』と思うのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます