類は友を呼んだ
「類は友を呼ぶって言いますが、よくよく考えると安達と丹野って言う2年生の2大問題児を1クラスに集めるって中々の決断ですよね。」
「おいおい竹塚、丹野はともかく私まで問題児扱いは酷いだろ。」
「何言ってんだよ竹塚、安達はともかくオレまで問題児とか冗談キツイぜ。」
「「は?」」
「類が友を呼んでしまっていますね。」
竹塚は私の事を丹野と同類と言うが、それは無いだろう。
だと言うのに丹野は自分はまともだと勘違いしているし、ここは丹野と出会ったばかりの頃の話をして、竹塚の目を覚まさせてやらなくては。
「あれは2年になってすぐの事だった。その頃から丹野の馬鹿さ加減は変わってない、いや、悪化してすらいると思うぞ。なんたって………」
2年になって同じクラスになるまではお互いの存在を知らなかった。
が、丹野を見た時思ったんだ。
『こいつ馬鹿だ』って。
「よしっ!」
「何やってるんだ?」
「ん?あぁ、安達か。聞いて驚け!」
同じクラスになった丹野が教室で何かしているので気になって声を掛ける。
「筆箱に入ってたペンとかを全部立て終わったところだぜ!」
「は?ペン?」
「授業中からやっててな、どうにか今完成したところだぜ!驚いただろ!」
「…………。」
この男、授業中に何やってるんだよ。
しかもやってる事はめちゃくちゃショボい。
私だったら授業の時間内に余裕で完成させられるし。
「驚きすぎて何も言えねぇようだな。頑張った甲斐があったぜ。」
「こいつ馬鹿だ…………。」
「ん?なんか言ったか?」
「いや何も。」
「そうか。写真を撮るなら今の内だぜ。」
これを馬鹿と評さずして何と言う。
思わず呆れて言葉も出なかった。
「って事があったんだよ。」
「あはははは!丹野は相変わらずですね。」
「しかもその後、私が『そんなにペンを机に建てたいなら接着剤とか両面テープでも使えばいだろ』ってアドバイスしたら『お前………天才か!?』って言って来てさ。」
「安達も相変わらずですね。」
「いや、お前にそれを言われなくても時間が経てばオレは自分で思い付いていたぜ。」
竹塚に私が出会ったばかりの頃の丹野のエピソードを話してやると爆笑する。
そうなんだよ、こいつは出会った瞬間に馬鹿だって分かる奴だったんだよ。
ともあれ、これで竹塚も私と丹野の格の違いを理解しただろう。
「それを言うなら安達だって………」
「これでいけるな。」
「何やってんだよ、安達。」
「丹野か。」
「なんで机にL字の金具的な物を取り付けてるんだよ。普通そう言う金具って壁に釘とかネジで固定して棚を作ったりするのに使うやつだろ?」
「おいおい視野が狭い奴だな。このL字金具に教科書を開いて、こう、適当なページにスポッと挟むと、ほら授業中に寝ていてもバレないだろ?」
「………………こいつ馬鹿だ……。」
「って事があったんだぜ。」
「あはははは!安達は相変わらずですね。」
完璧な作戦を遂行するための準備をしていると丹野に声を掛けられたんだ。
当時、小声で何か言われた時は、きっと内心『スゲェ!』って思ってるのが口からこぼれてしまったのかと思ったぞ。
あまりの天才的な考えにリアクションが出来なかっただけだとも考えたが、そんな事を考えていたのか。
まぁ常人ではとても思いつきそうもない考えだし、当然と言えば当然の反応だが、所詮は丹野。天才と馬鹿の区別もつかないようだ。
「しかもその後『それじゃ不安定だから教科書に穴を開けてネジで固定した方が良いんじゃね?』ってアドバイスしてやったら『お前………天才か!?』って驚いてるんだぜ。」
「丹野も相変わらずですね。」
「いや、私だったらアドバイスされなくても実践してみて気付いていたはずだから。」
丹野に指摘されるまでもない。
私は実体験に基づいて成長できる人間だから。
何も言われなくても、いつかは気付けたはずだから。
「はっ、相変わらずの減らず口だぜ。」
「お前こそ。」
「うーん、類友ですね。」
竹塚、同じクラスになって少し話しただけでも良く分かる程の馬鹿と同レベル扱いは酷いと思うぞ。
「ところで争いって同じくらいのレベルじゃないと起こらないそうですね。」
「争い?私と丹野が?」
「おいおい竹塚、何言ってんだよ。オレと安達がいつ争ったってんだよ。」
「そうそう、こんな奴、争う価値も無いぞ。」
「まったくだ、安達なんか相手になりゃしないぜ。」
「「…………。」」
「普段ならこのタイミングでいがみ合ってますが、堪えてますね。」
私と丹野が同じレベル?馬鹿を言うんじゃない。
丹野も何やら勘違いをしているようだが、まぁ、この場では訂正しないでおいてやろう。
私は、器が大きくて、丹野の妄言なんて、一切!気にしてないからな。
「つまり争わない、とても仲良しな間柄って事ですね。」
「「………そうだぞ(ぜ)。」」
「なるほど。」
私も丹野も同意まで若干間があったが、これで竹塚に私と丹野が同レベルではないと伝わっただろう。
「つまり類友って事ですね。」
「はぁ!?誰がこんな馬鹿と同類だよ!」
「そうだぜ!いくら何でも最馬鹿と同類は有り得ないぜ!」
「それはこっちのセリフだよ!」
「争いが起きている。これは同レベルって事ですね。」
「「…………。」」
「いやぁ、2人とも見ていて飽きないと言うか、面白いですね。」
「それ絶対誉めてないだろ。」
「むしろ馬鹿にしてるまであるぜ。」
そして話が最初に巻き戻る。
うん、竹塚。私達で遊ぶな。
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