ゲームの中で

「こう、ゲームの導入とかワンシーンとかで神様からのお告げでさ、主人公の名前が呼ばれるシーンってあるじゃん。」

「そうですね。」

「それでこの前ネットで見た画像でさ、主人公の名前を『はたらけ』にしてて、名前を呼ばれるたびに『はたらけ』って言われててメッチャ面白いのがあったんだ。」

「そう言う遊びなら僕も良くやりますよ?自由度の高いゲームで主人公の名前を『安達』とかにして暴れまわります。」

「何やってんだよ!?」


私の名前を付けるまでは良い。

勇者の名前とかだったらセンスがあると褒めていたところだ。

行動が最悪だから誉める事は絶対にあり得ないけど。


「そして暴れまわったせいで指名手配が掛けられたり、他のキャラクターから嫌われたり罵られたりしてますね。」

「マジで何やってんだよ………。」


私だったら何してもおかしくは無いと思ってないか?

今すぐにでもセーブデータを消してやりたい。


「安達、頭おかしき者よ。今こそ世界を救う旅に出るのです。」

「誰が頭おかしき者だ。と言うかそんな頭おかしい呼ばわりされるような奴に世界の命運預ける神様とか嫌過ぎるだろ。」

「僕だったら絶対にそんな神様のいる世界滅ぼしたいですね。」

「気持ちは分からないでもないけど、そんな理由で立ち上がる魔王も魔王で嫌過ぎるだろ。」

「碌でもない勇者側と割とまともな魔王側、最近ではそう言う作品も結構あると思いますよ。そう言う作品って基本的に主人公が魔王側だったりしますが。」


どっちもどっち過ぎる。

適当でダメダメな神様と、だからと言って世界を滅ぼそうとする極端な魔王。

何事もバランスが大事なんだな。


「まぁそれはともかく、ゲームで友達とか他の作品のキャラクターとかの名前を付けたりする事はあるっちゃある。私の名前を付けて暴れまわったのはアレだけど、私もRPGで仲間の名前を決める時に竹塚とか伊江とかの名前を付けた事あるし。」


友達と冒険の旅に出るのはロマンがある。

例えゲームでも、苦難や試練を乗り越えて絆が深まるシーンを想像しながら遊ぶのも楽しみ方の1つだろう。


「殺し合いのデスゲーム系でですか?」

「RPGって言ってるじゃん。てかデスゲーム系の作品で友達の名前付けて楽しむとか性格悪過ぎだろ。」


それをやるのは友達同士の関係と言うよりもいじめっ子といじめられっ子の関係ではないだろうか。

とにかく私はそこまで性格は悪くない。


「でも親方辺りの名前を付けたらデスゲームだったとしても誰一人死なせずにクリアしそうですよね。」

「それは分かる。」


親方の見た目とパワーと人望があれば殺し合いなんて起きようがない。

見た目は厳つく、とても殺そうとは思わないだろう。

力は強く、殺し合いが起きそうになっても止められるだろう。

そして何よりも、親方と話して、人となりを理解すれば争いを起こそうなんて奴はいなくなるだろう。


「それを言ったら、どんなゲームでも親方の名前付けられないじゃん。」

「そうですね。流石は親方。ゲームを成立させない究極の存在ですね。その点、安達の使い勝手の良さは凄まじい物です。」

「は?私?」


確かに親方はゲームを崩壊させるほどの才能だが、私はどんな作品でもゲームを壊さずに成立させられる程度の程良い才能具合。

そう言われてもおかしくは無いが………


「安達なら何をしてもおかしくはありませんからね。善行であれ、悪行であれ、問題なく『まぁ、安達だし』で受け入れられるので。」

「だからなんで私に悪い事をさせたがるんだよ!」

「日頃の行い、ですかね。」

「日常的に悪い事してるみたいに言うんじゃない。」


確かに結構な頻度で職員室に呼び出されているけど。

そんな悪い事をしているという事は断じてない。


「してるじゃないですか。頭が悪い事を。」

「いや頭が悪い事って………、身に覚えが無いぞ。」

「真面目に授業を受けず、成績も悪く、多めに出された課題に苦しみ、思い付きで変な事を多々行う。そんな姿を頭が悪いと言わずして何と言いましょうか。」

「竹塚、私は頭が悪い事をしようと思ってやっている訳じゃないんだ。その時やりたい事をやるようにしていたら、結果的に周りから頭が悪い事をしていると思われてしまっているだけなんだよ。ほら、人生楽しんだもん勝ちって言うらしいじゃん。」

「だから僕もゲームの中で安達が楽しんでそうな行動をしているだけなんですよ。つまり安達を楽しませる為でもあるんです。」

「そ、そうなのか………?」

「そうなんですよ。」


そう言われると、納得………出来る、のか?

自信満々に言ってるし、もしかすると本当にそうなのかも知れない。

いや、でも竹塚だし………。

うん、考えても分からないし、とにかくゲームは楽しむのが一番だ!

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