宝の地図

ある日の休日。

私は家でゴロゴロしていた。


「暇だなぁ………。」


誰か誘って遊びにでも行こうか、そんな事を考えていると………


「ん?なんだ、紙飛行機?」


開けていた窓から紙飛行機が入ってきた。

紙飛行機には何か書いてあるようで、広げてみる。


「『宝の地図』?しかもめちゃくちゃアバウトだし。」


やたらと達筆な文字で『宝の地図』と記載されていた。

そこにはとても地図とは言えないような雑さで地図が描かれており、宝の在処らしき場所に矢印と『ここ』と描かれている。


「こんな雑な地図で分かる奴なんていないだろ。………ん?」


呆れていると追加で窓から紙飛行機が入ってくる。

その紙飛行機にも何か書いてあるようで、広げてみると………


「さっきよりはまともな地図だ。」


何が書いてあるか分からない状態の地図と比べ、川や橋、目印になる建築物などが描かれた分かりやすいものとなっていた。

と言うか、私の呟きを聞いて入ってきたと言う事は近くに紙飛行機を飛ばした人物がいるのではなかろうか。

そう思い窓の外を見渡すが、それらしき人物はどこにもいない。

そうだ、また何か文句を言えば紙飛行機が飛んでくるかも知れない。


「でも宝探しなんて面倒くさいな。」


すると予想通り、紙飛行機が窓から入ってくる。

すぐさま紙飛行機を飛ばしてきたであろう人物を探すが………。


「誰もいない………。」


先ほど同様、紙飛行機を飛ばしたと思しき人物はどこにもいなかった。

流石に見ず知らずの他人にこんな事はしないだろうし、私の知り合いの誰かがやったのだろうか。

私の家を知っている知り合いと言えば、代表的なのは沙耶、竹塚、伊江、青木、丹野、親方、長谷道辺りだろう。

沙耶、親方はこういう事はしないだろうから選択肢から除外。

伊江はふざけたり悪ノリしたりするけど、率先してこういう事はしないだろうから選択肢から除外。

青木、丹野は紙飛行機なんて回りくどい事はしないだろうから選択肢から除外。

竹塚、長谷道ならやりかねないが、どちらだろうか。

とは言え結局、実行者は誰か分からなかったし、これ以上考えても無駄だろう。

ちなみに紙飛行機には『早く探しに行くべし 探しに行かないと不幸になる』と書かれていた。

ちょうど暇だったし、仕方がないので探しに行くとしよう。




「見たところ河原にあるみたいだ。橋の右側だけど、目印のスーパーの位置的にこっちから向かったら左の方だな。」


地図を頼りに宝の在処に向かう。

最初の地図だったら間違いなく分からなかったが、2枚目の地図には目印になる建物も描いてあったし、高校の近所だったので迷うことなく到着できた。

そこには………


「なんかあるし………。」


地面はこんもりと土が盛り上がっており、明らかなまでに存在感を放つスコップが刺さっていた。

絶対についさっき埋めたばっかりだろう。

そしてそのスコップを使って、刺さっていた地点を掘れと言う事だろう。


「取り敢えず掘るか。」


ザックザックと柔らかい土を掘り起こすと、ガンッ!と何か硬い物がスコップの先端に当たる。

謎の物体の周囲を掘り、取り出す。


「箱。宝箱って事か。」


出てきたのは何かのお菓子でも入っていたであろう銀色の箱だった。

その箱の中には更に箱が入っており、その中にも更に箱が入っていた。


「どんだけ箱入れてるんだよ!?」


なんかロシアにそんな玩具があったような気がしつつ、箱を開けると、ようやく箱以外の物が出てきた。

それは封筒だった。


「お、これはもしかして小切手が入ってるとか?『好きな値段を書いてくれ』的な描写をマンガで見た事あるぞ!」


宝と言うくらいだから、きっと良い物が入っている事だろう。

ワクワクしながら封筒の中身を確認すると、1枚の紙が入っていた。

そこに書かれていた内容は………


「『君は数多くの困難を乗り越えてここに来ただろう。その経験と輝く夕日こそが最高の宝物だ。』?」


期待を遥かに下回るものだった。

特に困難は無く、時間帯的に夕方でもないので太陽は真上に輝いている。

強いて言うのであれば、最初の意味不明な地図もどきが困難と言えなくもないが、普通に場所が分かって普通に掘り返しただけなのだ。

恐らく、これを埋めた時には探すのにもっと時間がかかる想定だったのだろう。

なんか良い感じな雰囲気でまとめようとしている感が伝わってくるが、こちらには徒労感しかない。


「結局なんだったんだ、これ。」


マジで意味が分からない。

何故紙飛行機で宝の地図を飛ばしてきたのか。

誰がやったのか。

真剣に宝探しをさせたかったのか。

それともおふざけなのか。


「………帰るか。」


何もかもが分からないまま、時間だけを無駄にして帰宅するのであった。

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