VS

「あずきバーVS凍ったバナナ。」

「は?」

「あずきバーVS凍ったバナナ。」

「いや、良く聞こえなかったとかじゃ無くて。」


いつものように放課後に雑談を楽しんでいると、竹塚が変な事を言い出した。

いつも私は馬鹿扱いされたり、変な事をしているみたいに言われているが、竹塚も相当だろう。


「どちらが強いのか、気になりませんか?」

「別にそこまで………。まぁ確かにどっちが硬いのか、言われてみれば気にならない事も無いけれど。」


でもこの世にあずきバーとダイアモンドよりも硬い存在なんて無いと思うが。

まぁそれでも対決として挙げられると興味を抱かない事も無い。


「そうですよね。世の中には対決させたい存在がいっぱいありますよね。」

「きのこVSたけのことか?」

「それは対決どころか戦争ですね。今でこそ小競り合いですが、もしその戦いが本格的に始まろうものなら、多くの人々の血が流れ、やがては第三次世界大戦の勃発へと発展しますよ。」

「めちゃくちゃ物騒。」


恐ろし過ぎだろ、きのこたけのこ戦争。

流血沙汰になるなんて信じがたいし、ましてや第三次世界とか、どんだけ重要な戦いなんだよ。

適当に対決させた私が言うのもなんだけど、世界を巻き込むな。


「消しゴムの角VS最後の一口はどうですか?」

「文具と食べ物じゃカテゴリが違い過ぎるだろ。」

「いいえ、よく考えてみて下さい。消しゴムの角は最初の方にしか使えない、細かい部分を消す事の出来る大切な時期。そして最後の一口は、その言葉通り、最後の楽しみであり、もし他人に奪われたら怒るでしょう。」

「確かに、新品の消しゴムを貸して角を使われたら嫌だし、沙耶の最後の一口を奪おうものなら命は無いと思うし、そう考えると重要なタイミングと言う意味合いでは納得できる。」


一見、対決させるのは無理がある組み合わせだと思ったが、竹塚の話を聞くと理解出来なくもない。

どちらが嫌かと言われると、結構悩む。

まぁ新品の消しゴムを貸す機会なんて滅多に無いけど。


「ご飯VSパンとか?」

「それだとハブられた麺派が暴れ出しますね。もしも彼らが暴れ出したら、やがて世界中の小麦は麺にされます。」

「お米は?」

「存在を抹消されます。」

「抹消!?なんでパン派は許されてご飯派は許されないんだよ。」

「パン派も許された訳では無いですよ。麺を作る為だけに、小麦は存在を許されたのですから。」


麺派が過激過ぎる。

でも存在を抹消ってどうするんだろうか。

世の中のお米を買い占めて燃やすんだろうか。

あとよくよく考えてみたら焼きそばパンってあるし、やっぱりパン派だけ許されるのでは?


「寝起きVS筋肉痛はどうでしょう。」

「なんだ、その地獄みたいな対決。対決?」

「どちらも身体を動かすのが億劫になるじゃないですか。」

「寝起きは一時的だろうけど、筋肉痛って1日中、なんなら2日間くらいだるいじゃん。筋肉痛の方が強いだろ。」

「しかし安達、考えても見て下さい。寝起きはお布団が付いて来るんですよ?」

「はっ!確かに!」


筋肉痛も動く気になれないけど、それ以上にお布団の力は凄まじい。

お布団には掃除機レベルの吸引力があるぞ。

二度寝へと誘われては、動く気になる、ならないの問題ではないのだ。

二度寝一択なのだ。


「夏休みVS冬休みとか?」

「なるほど、期間が長く、たくさん遊べる夏休みと、クリスマスやお年玉と言ったイベントが目白押しの冬休み。確かにこれは好カードですね。やるじゃないですか、安達。」

「だろ?」

「しかもどちらも安達が最終日に課題に追われる姿を眺めて楽しむ事が出来ますからね。」

「私が課題に追われる姿を夏と冬の風物詩にするな。」


私の、友達の苦境を笑いものにするとか酷い男だ。

毎年協力を頼んでいるが、大体最初に弄られて馬鹿にされる。

そんな友情を疑いかねない行動をされても、竹塚ほど頼りになる奴はいないから結局頼まざるを得ないんだけど。

ただし計画的に課題を進めろと言う意見は受け入れられない。

夏休みは休むものだから。


「山VS海とか?」

「あ、僕はインドア派なんで、そんなに興味をそそられる対決じゃないですね。」

「興味を無くした瞬間雑になるな。」


話を振って来た側なんだから、もう少し話に付き合う姿勢を見せろよ。


「どうせなら栗VSウニとかにしませんか?」

「確かにどっちもトゲトゲしてるけどさ………。」

「どっちの方が攻撃力高いかと思って。」

「栗もウニも食べ物であって武器じゃないだろ。」


形が似ている山と海の代表と言う観点では納得できない事も無いと思ったが、なんで味とかの方面じゃなくて棘が鋭いかで争うんだよ。


「でも世の中には思っていたよりも対決させてみたい存在が結構あるんだな。」

「きのことたけのこですか?」

「それは第三次世界大戦が起こるからダメだろ。」


さも普通と言った表情で世界大戦を望むな。


「でも安達もたまには対決してみませんか?」

「え、誰と?嫌だぞ、私。こう見えても口喧嘩以外はあんまり経験が無いんだ。」

「口喧嘩も弱そうですけどね。人が相手じゃないですよ。」

「それなら勝てるかも知れないぞ。」

「課題って言う対戦相手なんですけど。」

「対戦拒否する。」

「たまには1人で頑張ってみましょうか。」

「断固として拒否する。」


やっぱり時代は友情パワーだろ。

1人では苦しい戦いも、皆で挑むから勝てるんだよ。

だから見捨てないで下さい。

今度飯奢るから。

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