時代劇
「この前、謎のCM見たんだ。」
「割とありますよね。訳が分からないCM。で、どんなCMだったんですか?」
「なんか時代劇っぽいCMでさ、お爺さんとその部下っぽい男が『ばいきん』って書かれた黒タイツを着た敵と戦うんだ。少し戦った後に部下の一人が消毒液的な物を掲げて『このモンドコロが目に入らぬか!』って言うと消毒液が光り輝いて、光が収まると敵が消えてるってCMだ。」
中々に意味不明だ。
いや、消毒液をアピールしたいのは分かるんだけど、シチュエーションが謎過ぎる。
そもそも時代劇に黒タイツの敵が現れるとか、似合わな過ぎる。
「あぁ水戸黄門のパロディCMですか。」
「ミトコーモン?時代劇のタイトルか?」
「そうですね。水戸光圀公と言う偉い人物が世直しの旅に出るんですよ。」
なんか聞き覚えがあるような、無いような響きだ。
竹塚はミトコーモンの解説を始める。
しかし偉いのならば権力を使って改革的な事をすれば良いのでは?と思わなくもないが、とりあえず話の続きを聞いてみよう。
「旅先で悪人に出会っては部下にコテンパンにさせます。」
「自分じゃ戦わないのか。」
「お爺ちゃんですからね。」
それもそうか。
無双するお爺さんなんて創作の中だけの話だよな。
…………時代劇って創作なんだからお爺さんが無双しても良いのでは?
「最後に『この紋所が目に入らぬか!』ってやって公的権力で屈服させる、と言う物語のお約束があるんですよ。」
「急に権力使ってきた。悪人なんだから捕まえて終わりで良いんじゃないのか?」
「あくまでも改心させる事が目的なんですよ。」
「そう言うもんなのか。」
「そういうものなんです。」
結局権力で解決するなら旅に出る必要ない気がするけど、上から顔も知らない相手から裁かれるよりは直接会って話して改心させる方が良いって事を言いたいのだろうか。
「でもミトナントカって人がいなくなったらまた悪さするんじゃないのか?」
「一回コテンパンにボコボコにしてる上に、『自分は国家的に偉い人間だぞ?また何かしたら、分かるよな?』って脅されてるんで問題は無いでしょう。」
「問題しかないのでは?」
殺されるよりはマシかも知れないけど、権力使って恐喝する人間が悪人を改心させようとするって………。
正義を掲げているからって、それはダメだと思うんだけど。
「権力者だから許されるのです。それに一応、最初は対話で悪事を止めさせようとしますが、悪役が武力で隠蔽しようとしているのでセーフって理屈でしょう。」
「セーフ、なのか………?」
正当防衛って事か?
ダメだ、分からない。
どっちもどっちな気がして仕方がない。
いや、これ以上考えるのは止めよう。
別にそこまで熱心に時代劇について考えようとしてた訳じゃないんだし。
話を変えよう。
「そう言えば結局、モンドコロって何なんだろうな。モンドセレクション的なやつか?」
「あれ?安達、知らないんですか?あれは実は核兵器のスイッチなんですよ。」
「マジで!?」
ボコボコにされた上、そんな物で脅されたら従わざるを得ない。
と、普段の私なら考えるだろうが、
「竹塚、いくら何でも私の事を馬鹿にし過ぎだろ。」
「馬鹿なのは事実なのでは?」
「事実じゃないから。とにかく、時代劇の舞台になるような昔っから核兵器なんて存在しないだろ。それくらい分かるぞ。」
いくら何でも馬鹿にし過ぎだ。
核兵器って結構近代になって登場したような気がするし、そんな時代劇で描かれるような時代には存在しなかっただろう。
「そうですね………。もしも仮に、安達が何もない空間にお金が発生させる装置を作る事が出来たらどうしますか?皆に公表しますか?世の為、人の為に使いますか?」
「いや、こっそり使うと思うぞ。………はっ、そうか!」
「そういう事です。だから実は当時から核兵器を保有していたのですが、同時に厳重に秘匿されていたのです。」
そう言われると納得できる。
核兵器なんて強力な兵器を明らかにしてしまっては警戒されて、いつどこで闇討ちに遭うかも分からない、
それに核兵器を危険視した人間が核兵器を作るかも知れない。
しかし、そんな昔から核兵器が日本に存在していたのか………。
「そう考えるとなんで日本は今、核兵器を持ってないんだ?」
「非核三原則の影響でもありますが、核兵器を兵器として運用するのではなく、人々の為に使おうと考えた水戸光圀公は核兵器のパワーをアルティメット・モンドコロ・フクショーグンによってビーカーにチェンジし、明治維新する事で日本を進歩させたんです。」
「?????なんだか良く分からないけど、とりあえず凄そうな事は分かった!」
竹塚には私に分かるように話してほしいが、ともあれミトナントカって人は凄い人だったんだな。
「まぁ時代劇ではなくて現実の水戸光圀公は世直しの旅には出ていませんし、領民の評判もイマイチだったらしいですけどね。」
ミトナントカって人は凄い人ではなかったんだな………。
まぁ現実は現実って事か。
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