ミイラ

ある日の休み時間。

教室にて。


「包帯グルグル巻きのミイラっているじゃん?」

「そうだな。」

「それなら絆創膏ベタベタのミイラがいてもおかしくは無いと思わないか?」

「おかしいな。主にお前の頭が。」


否定するなら絆創膏の方にしろ。

何で初手で私の頭を否定するんだよ。

どこもおかしくないから。


「そうだぜ。全身絆創膏とか、剥がすとき絶対痛ぇぜ。」

「そうだけど、そうじゃない。」

「確かに痛いのは良くないか…………。」


思えば絆創膏を剥がす時は地味に痛いし、そう考えると全身絆創膏マンは非現実的か。

1人くらいは存在しても良いと思ったんだが………。

しかし………


「ノーマルミイラも全身包帯だから実は痛かったりするんじゃないか?」

「あれは別に大怪我を負って包帯を巻いてる訳じゃ………。」

「言われてみれば、その通りだぜ。よくあんな重傷を負って動けるもんだぜ。」

「凄まじい気合と根性だ。」

「そもそも死んでるし動かないからな?動くのはゲームの中だけだからな?」


いや、でも、ほら、気合と根性で死を超越している可能性もあるし。

もしかしたら生きているかも知れないじゃん。

まぁ実際にミイラに会った事なんて無いから真実は分からないけど。


「絆創膏がダメなら糸で縫われたミイラとか。」

「縫い付ける時が痛いぜ。しかも全身縫合とか地獄だぜ。」

「と言うか、それって最早人形だよな。」


確かに麻酔でも無いと無理だな。

家庭科の授業の時に針が指に刺して地味に痛かった記憶があるが、それを全身となるとめちゃくちゃ痛いだろう。

それに伊江も言うように、既に人形と言う存在がいたからパクリになってしまう。

いや、そもそも人形こそが全身を縫われたミイラなのでは?


「全身に湿布を貼ったミイラが………。」

「普通にカッコ悪いし弱そう。ハロウィンとかに出てきても大したイタズラしなそう。」

「そもそも湿布って老人感が凄まじいな。」


存在しているだけで湿布の匂いをまき散らしてる訳だから、実質イタズラになるのでは?しかしイタズラを存在している時点で実行してしまっているという事は、存在している時点でお菓子はもらえないという事か………。

あとミイラって結構昔の存在だと思うから、実質老人的な存在と言っても良いだろう。

かなりのご長寿だし、たまには包帯よりも湿布を貼りたくなる時だってあるだろう。


「全身に軟膏とか塗り薬を塗ったミイラが………。」

「そもそも動けないと思うぜ。仮に動けたとしても寝てるべきだぜ。」

「ヌルヌルしてそうだな。」

「で、滑って転んで全身に包帯を巻く事になる、と。」

「振り出しに戻ったぜ。」


下手すると身体が溶けてるように見えてホラーかも知れない。

ミイラも結構ホラー物に登場するような気がするし、マッチはしてると思う。

しかし滑って転ぶのはダサいし、結局包帯を巻く事になるならノーマルミイラでも良いし、むしろノーマルミイラの方が良いとさえ思える。


「全身が義体になったミイラが………。」

「それって最早サイボーグだよな。」

「でも強そうだぜ。メタルミイラ。」

「近未来的な雰囲気を感じるぞ。」

「サイボーグだからな。」


メタルミイラ………なんだかミイラの上位互換的な響きだ。

10体に1体くらいはメタルミイラでも良いと思う。

もしくはゲームとか映画の終盤で登場しそう。


「そもそもどうしていきなりミイラの話なんてしようと思ったんだよ。さっきの授業でエジプトの話なんてしてなかったし、テレビでエジプト特集でもやってたのか?」

「いや、違う。」


さっきの授業の内容はあんまり覚えていないし、昨日見たテレビはバラエティー番組だ。


「じゃあなんだよ。」

「全身に包帯って暖かいのかなって思って。」

「普通に厚着するべきだよな。」


最近は寒くなって来たから、ふと思ったんだ。

ミイラって包帯グルグル巻きだし、実は暖かいんじゃないかなって。

それでミイラって包帯以外も身に纏ってたりするのかなって。


「身体を動かしてれば暖かいと思うぜ!」

「丹野はいい加減、冬服に衣替えしろよ。」

「まだ大丈夫だぜ!」


私の話を聞いた丹野は運動してれば大丈夫って言うけど、絶対それだけじゃないだろう。

運動してるからって年がら年中半袖で生活なんて出来ないから。

お前の体温と頑丈さはどうなっているんだ。


「お前、去年もそう言って1年中夏服だったよな。」

「うちの高校の校則には衣替えのタイミングは自由って書いてあるぜ!生徒のジシュセーをソンチョーするって校長も言ってたぜ!」

「まぁ馬鹿は風邪ひかないって言うし、実際丹野は去年、風邪で休んだとか無かったしな。」

「馬鹿じゃないけどスゲェだろ?」

「あぁ、そうだな。凄い馬鹿だな。」


小学校で1年中、半袖で過ごす奴がいた記憶があるけど、まさか高校に入ってから同じような事をしてる奴と出会う事になるなんて思いもしなかったよ。

ある意味、小学生レベルって事だから馬鹿って部分は否定できないと思うぞ。

頭にミイラの包帯でも巻いたら良いんじゃないだろうか。

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