MVP
「MVPって何の略なんだ?」
「今回の課題に『MVP』と言う単語は登場しなかったはずですが。」
「いや、さっき丹野が部活に行くときに『今度こそMVP』とかなんとか言ってて。」
「聞かなかったことにして下さい。」
「いや無理があるだろ。」
話題まで振っておいて聞かなかったことにしておけは無理がある。
そもそも聞かなかったことした方が良い程、マズい情報でもないだろう。
「そうですね。問題を1問解く毎に話を続けてあげましょう。」
「えー。」
「それとも1人で課題を続けますか?僕はサボらないように監視だけしてますよ。」
「よし、さっさと終わらせるぞ!」
2人いるのに1人で頑張れとか心が折れるぞ。
しかも課題をやってる間ガン見されるとか嫌過ぎる。
「そうですね、それじゃあこの問題。『GNP』と『GDP』は何を指し示していますか?選択肢の中から選んでください。」
「うーん………、『GNP』がウの『国家生産力』で、『GDP』がアの『国民総生産』か?」
「ちなみに自信のほどは?」
「私の勘は結構当たるんだ!」
「赤点をギリギリ回避する事は勘が冴えているとは言いませんよ?はい。不正解です。」
「えぇ……。」
なんかいける気がしたんだけど、おかしいな。
「これ系のが確かナントカ生産って名前に付いてたような気がするんだが……。」
「そこまでは覚えているんですか。惜しかったですね。」
「選択肢全部に生産ってついてるじゃん。惜しさの欠片も無いじゃん。」
「ヒントを上げましょう。正確には後半に総生産と付いていますね。」
それは惜しかった。
しかしその情報を聞けば答えはすぐに分かるぞ。
「じゃあ『GNP』がイの『国内総生産』で、『GDP』がアの『国民総生産』か?」
「逆ですね。覚え方としては『N』が『国民』で『D』が『国内』ですね。」
「なるほど。でもまぁ実質1問解けたよな!」
「何が実質かは分かりませんが、まぁ良いでしょう。」
逆だったとは言え、ヒントを貰ったとは言え、正解に近いとこまではいったから、四捨五入的な事をしたら正解だろう。
さぁ、1問解いたから休憩、もとい話の続きだ。
「じゃあ『MVP』の略を」
「そうですね。『M』は『マジで』を意味しています。」
「マジで!?」
流石にそれは予想できなかった。
と言う事は世の中の『M』から始まる略称は基本的に『マジで』って考える事も出来るぞ。
「『MVP』と言えばとても優れた選手を称えるものでしょう。つまり『本気で』と言うニュアンスの言葉を分かり易く、親しみ易くしようとした結果、『マジで』と言う表現になったんです。」
「そうだったのか………。」
確かに本気で称えている感は大事だ。
取り敢えず頑張ってたよね感を出さないようにするのは大事だし、そう考えると納得できる。
「さぁ、次の問題に進みますよ。」
「よし来い!」
「次の問題は……『インフレとデフレの違いを記述せよ。』ですね。」
「インフレは、なんか物価とかがヤバくなって、デフレは……物価がヤバくなる!」
「ヤバいのは安達の頭じゃないですかね。」
さり気なくヤバいディスを入れるな。
いや、ヤバいしか言ってない奴がヤバくないかって言われたらヤバいだろうけど。
「竹塚!ヒント!」
「どちらか片方は物価が上昇します。もう片方はその逆です。」
「分かった!インフレは物価が上がって、デフレは下がるんだ!」
「おや、珍しく正解です。よく分かりましたね。」
「珍しくは余計だろ。いや、漫画とかで最初の方と比べて途中から規模がデカくなりすぎる事をインフレとかって言った気がして。」
「………まぁ、覚えられるならそれでもいいですね。」
若干微妙な表情をしつつ、竹塚は私の覚え方に理解を示す。
そうそう、覚えられれば良いんだ。
テストの時には忘れてる可能性が高いけど。
「竹塚、また1問解いたぞ。」
「はいはい。次は『V』ですが、『ヴィクトリー』の『V』です。」
「えーと、勝つとか勝利とか、そんな感じの言葉だっけ?」
「はい、やはり『MVP』の栄誉は勝者に与えられるので。」
そこは納得だ。
負けた側なんてよっぽど活躍しないと『MVP』には選ばれないだろうし。
「それじゃ、次の問題行きますよ。『自由に漁業や資源採掘を行っていい領海を何と言うか。』」
「日本海!」
「広義的には間違っていない訳でも無い事も無いですね。つまり不正解です。」
と言われても、海って聞いて出て来た単語は日本海だから。
それじゃアレか。もう1つ候補が浮かんでいたけど、そっちだったか。
「じゃあ太平洋?」
「違います。」
「琵琶湖?」
「規模が一気に縮小しましたね。」
「分からない!」
「正直なところは評価します。」
日本海でも太平洋でもないとなると、もう琵琶湖くらいしか思い浮かばないから。
それすら不正解なら、もう何も分からない。
「流石にこの問題は安達には難しかったですか。ちなみに『排他的経済水域』と言う言葉に聞き覚えは?」
「無いぞ。」
「無いですかー。それでは覚えて下さい。」
「覚えた!今日中だったら答えられる自信がある!」
「それは覚えたとは……いえ、いいでしょう。」
これでまた1つ賢くなってしまった。
「よし、1問解いたから最後の意味を教えてくれ。」
「解いたとは言えないでしょう。まぁ良いです。最後の『P』は『パーフェクト』を表しています。」
「完璧、か。そう言いたくなる程に高い評価って事か。」
「そういう事です。」
これで『MVP』の全ての意味が揃った………。
「つまり『MVP』は『マジでヴィクトリーパーフェクト』って意味だったのか!?」
「そういう事です。」
確かにそこまで褒めちぎられたら嬉しいだろう。
なるほど、丹野が目指す訳だ。
「まぁ本当はMost Valuable Playerの略なんですけどね。」
「ん?なんか言ったか?」
「いえ、何も。」
「そっか。でもこれは自慢できる知識だな。」
「そうですね。皆に教えてあげたらどうですか?きっと驚きますよ。」
「そうする!」
皆の驚く顔が楽しみだ。
竹塚も満足げに頷いているし、良い事を知った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます