続々・RPG
※このお話は『続・RPG』の続編です。ご注意下さい。
またしても夢を見る。
そう、なんかRPG風な夢を見ていたが、親方もとい王様の城の牢屋から脱獄したと思ったら、城が覇王に襲撃されていたんだったな。
早く王様のところに向かいたいが、玉座の間へ続く扉の前に倒れ伏した兵士、丹野が邪魔で通れない。
無理やり退かそうとしてもビクともしないし、なんか薬草持ってこいとか言い出すし。
わざわざ夢の中でまで一本道なRPGにありがちなポイントを再現しなくても良いってのに。
「ん?あれは………。」
「どうかしたのかい?」
私は道具屋を探す途中で道の脇をチラリと見て立ち止まった。
仲間の青井は不思議そうな目をして立ち止まった私を見る。
私の視線の先には
「自動販売機。」
「そうだね。でも自動販売機に薬草は売っていないと思うよ。」
「青井、少し実験してみたくないか?」
「実験?」
『実験』という単語を聞いて青井が話を聞く気になる。
肝心なところでRPG的な同じ内容しか話さなくなるくせに、普段の実験好きな人間性は消えていないんだな。
ともあれ私は自動販売機で売っていた緑茶を購入する。
ガコン、という音と共に緑茶の入ったペットボトルが取り出し口に落下する。
「ここに緑茶があるじゃん?」
「そうだね。」
「ラベルを剥がすじゃん?」
「うん。」
ベリベリと緑茶の商品名や成分が書いてあるラベルを剥がし、中身の緑茶しか見えない状態にする。
「これは薬草を煎じて冷やしたものだと言い張って丹野に飲ませる。」
「なるほど、プラセボ効果ってやつだね。」
「その、なんとか効果ってのは分からないけど、あいつ単純だから騙されてくれるんじゃないかと思うんだよな。」
「知能指数が似た者同士だと効果的な方法が思い浮かぶんだね。お見事。」
なんだろう、褒められているんだよな?きっと。そういう事にしておこう。
緑茶もとい薬草を煎じて冷やしたものを持って丹野の元へと向かう。
「待たせたな。」
「すまねぇな。助かったぜ。」
そして丹野に薬草(仮)を渡す。
「ん?薬、草?」
「それは薬草を煎じたものだ。飲みやすいように冷やしてあるぞ。とにかく飲んでみろ。」
「お、おう。ありがとう。」
訝しみながらもゴクゴクと薬草(仮)を飲む丹野。
どうだ、いけたか?
「なぁ、これ緑「薬草を煎じて冷やしたものだ。」茶……。」
マズい、丹野が疑っている。誤魔化さなくては。
「でもペットボトルに入ってるし、味も飲んだ覚えがある味だが。」
「ペットボトルに入れたのは飲みやすいようにするためだ。心遣いってやつだよ。そして知ってる味なのは昔薬草を煎じて冷やしたものを飲んだことがあるだけだろう。だから何もおかしくない。」
「そうなの、か?」
「そうだぞ。」
「そうだったのか。」
よし、誤魔化せた。丹野が単純な奴で助かったぞ。
「とにかく、これで大丈夫だな。」
「お、おう大丈夫?だ。とりあえず助かったぜ。俺も一緒に行こう!」
『丹野 が仲間になった!』
よし、これで玉座の間への道が開いた。
ようやく王様の元へ行ける。
城内を進み、玉座の間へと辿り着くと、そこには………
「うおぉぉぉぉぉぉ!!!」
「はあぁぁぁぁぁぁ!!!」
親方と沙耶が闘気を纏い、今まさに戦わんと構えていた。
なんか周囲の空気が震えて『ゴゴゴゴゴゴゴゴ………』って効果音が聞こえてくるんだけど。
これ到着したは良いけれど、割って入れそうにないんだが。
ん?
「あれは、竹塚?」
玉座の裏側に竹塚いて、何かを抱えている。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴ………』
「いや、この効果音スピーカーから出してたのかよ。一気に残念な雰囲気を感じてしまったぞ。カッコいい空気ぶち壊しじゃん。せめてもっと上手に隠れろよ。」
そう考えると二人の纏っている闘気も何かしらの機材を使った演出なんじゃないのかと疑わしくなってくる。
「「ん?」」
「あ。」
しまった、竹塚にツッコミを入れたら二人から気づかれた。
これ死んだら教会とかで復活できるのかな?
「勇者か、良いところに来たなぁ。覇王が攻めて来た。手を貸してくれぃ。」
「あんた、丁度いいわ。こいつを倒す手伝いをしなさい。」
どっちを選んでもデッドエンドだと思うんだけど。
なんで絶望的な状況にしかならないルート分岐が用意されているんだよ。
それに答えなんて決まっているだろう。
私は、
「どちらにも味方しない。」
「ほぅ?いい度胸じゃあねぇか。」
「へぇ、あたしたちをまとめて相手にするとでも?」
それは違う。
威圧感がヤバくて今にも逃げ出したいが、そもそも二人と戦うなんてつもりはない。
「私は大切な幼馴染と友達が戦うなんて嫌だ。だからどちらにも味方しない。二人には争って欲しくないんだ。だから、もう戦うのを止めよう。そんで飯でも食べに行こう。」
「「……………。」」
二人の無言の視線が突き刺さる。
それでも私は目線を逸らさず、逃げず、引かず、二人を見つめる。
「この状況でその啖呵、まさしく勇者だなぁ。そんな答えを返されちゃあ、拳は降ろすしかねぇなぁ。」
「興醒めね。とんだお人好しもいたもんだわ。でも、そういうの、嫌いじゃないわよ。」
二人が戦闘態勢を解く。
良かった。これで世界が平和になったんだ!勇者的な事全然してないけど、終わり良ければ総て良しって事で。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴ………』
「いやお前はいつまでBGM流してるんだよ。もう戦いは終わったぞ、竹塚。」
しかし音は止まず、竹塚の方を見る。
「人の話を………はぁ!?」
そこには魔王っぽい服装でカッコいいポーズをとっている竹塚の姿が!
『ピピピ!』
アラームの音に目が覚める。
「二人が和解してエンディングを迎えるんじゃないのかよ。」
続く?
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