「「雪だあぁぁぁぁぁ!!!」」

「雪が降ると犬と馬鹿は庭を駆け回るってよく言いますけど、実際にその瞬間を目の当たりに出来る日が来ましたか。」

「犬はともかく、馬鹿の部分は初耳だな。あと駆け回ってるのは校庭じゃなくて教室だけどな。」

「そうよ。犬と馬鹿を一緒にするなんて犬が可哀想じゃないの。」

「まぁ雪が降ったらテンションが上がるってぇのは共感できるぜぇ。」


久々の雪に私と丹野ははしゃぎ、竹塚、伊江、沙耶は呆れ、親方は共感する。

雪はテンション上がるだろ。

確かに丹野は馬鹿みたいにはしゃいでいるが、私も人並み程度にははしゃぐさ。

だって雪だもの。

と言うか竹塚だってどっちかって言ったらこっち側の人間だろ。内心テンション上がってるだろ。

あと沙耶もクールぶってるけど、昔雪が降った時にめちゃくちゃはしゃいでたのを覚えてるからな。今もはしゃぎたくてウズウズしてるだろ。

ともあれ、これから何をしようか。

雪合戦、雪だるま、かまくら、候補はいくつも上がってくるが、どれも魅力的で悩ましい。

しかしここはやはり、


「雪合戦しよう!雪合戦!」

「賛成だぜ!雪と言ったら雪合戦、雪合戦と言ったら雪だぜ!」

「待って下さい。何の準備も無しに、そんな危険なウィンタースポーツに手を出すつもりですか。」

「準備?」

「危険?」


竹塚が止めに入るが、私と丹野は顔を見合わせキョトンとする。

一体何が危険なのか理解出来ない。


「竹塚、オレたちは別に雪玉に石とか硬い物を仕込んで投げたりはしないぜ?」

「そうじゃないんですよ。いやそれも危険ですけど。やったらいけない事ですけど。」

「そんな事する奴がいたら制裁が必要ね。」

「それならアレか?寒い中はしゃぎ過ぎていつの間にか体温が下がって凍死するとかか?」

「それは安達や丹野レベルの馬鹿くらいですね。」

「「なんだと!?誰が安達(丹野)レベルの馬鹿だって!?」」

「そういうところだからな。お前ら。」


竹塚に危険な事と思わしき事を答えるがどれも正解ではない。

しかも私が丹野と同レベルの馬鹿と思われているなんて納得がいかない。

伊江、そういうところってどういうところだよ。どっからどう見てもどっちが馬鹿かは明らかだろう。


「いいですか?雪玉に当たると身体に雪が付着しますよね。」

「うん。」

「雪が身体に付着すると真っ白になりますよね。」

「そうだな。」

「すると雪だるまになってしまいます。」

「真っ白から雪だるまの過程をすっ飛ばし過ぎだろぉ。それじゃ何が何だか分からねぇってぇのぉ。」


途中までは理解出来たが、親方の言う通り、最後で訳が分からなくなった。

なんで真っ白になったら雪だるまになるんだよ。

だったらウサギとか白系の存在は全て雪だるまになるだろう。


「雪玉にはなんか氷属性の魔法的なのが掛かってて付着し過ぎると雪だるまになります。そんな設定の物語を読んだことがあるので。」

「雑。」

「しかも設定って言っちゃってるし。」


竹塚にしては設定が荒い。

丹野も伊江呆れているぞ。


「どうせ竹塚の事だから雪でテンションは上がってるけど、雪合戦は疲れるから適当な作り話でもしてるんだろ?」

「ソンナコトナイデスヨ?」

「片言じゃねぇか。」

「それなら素直に雪合戦以外の候補を上げりゃいいじゃねぇか。」


予想的中。設定をもう少しどうにかしろよ。


「という訳で雪だるまを作りましょう。」

「どういう訳だよ。まぁ別に良いけど。」

「でも竹塚にしては普通の案ね。もっと変な事言って来るかと思ったわ。」


沙耶の言う通り、竹塚がそんな普通のアイデアを出してくるなんて思えない。

この後に何時のも竹塚を見せてくれるはず。


「それで?」

「それで、とは?」

「ただ雪だるまを作るだけじゃないんだろ?」

「ただ雪だるまを作るだけですよ?」

「!!?」


馬鹿な!?竹塚がただ雪だるまを作るだけの案を提示するだと!?


「集合!集合!緊急会議だ!」

「あいつ、体調悪いのかな?」

「いや、実は竹塚の偽物って考えも出来るぜ。」

「そういや俺、この前、演劇部の大久保に変装されたんだよなぁ。」

「って事は大久保が竹塚のフリをしてるって事?流石に無いと思うわよ?」

「いや、あいつなら可能かもしれない。あいつの変装技術は私たちにも予想できないくらいだ。」

「何それ。まるで怪盗ね。」


話はまとまった。

代表して私が探偵役をやろう。


「竹塚。私はお前の正体を知っている。」

「なんですか?コソコソと話をしていたと思ったら藪から棒に。」

「お前、実は竹塚じゃなくて大久保だろう!」

「………!どうしてそれを!」

「普段の竹塚の分析が甘かったようだな。あいつは普通の案なんて出さない。いつだって変な事ばっかり言ってるんだ。」


ビシッと竹塚を、いや大久保を指差して推理を披露する。

大久保は動揺するが、構わず推理を続ける。

なんだか楽しくなってきた。

しかしそこで教室に来訪者が訪れる。

それは………




「あれぇ?皆まだ教室にいたん?」

「湊、と………。」

「やぁ、皆さん。こんにちは。」

「大久保!?え?じゃあお前は?」

「大久保のフリをしただけです。なんか面白そうだったので。」

「この発言はまさしく竹塚本人だな。」

「一瞬信じちゃったぜ。」


演劇部の湊と大久保だった。

竹塚、紛らわしい事をするな。

雪合戦で集中攻撃するぞ。こいつめ。

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