ペットボトルロケット
「安達くん。丹野くん。今日はどうして職員室に呼び出されたか分かりますか?」
「全く身に覚えが無いです。」
「どうしてっすか?」
何故か私と丹野は職員室に呼び出されてしまったのだ。
理由が思い浮かばない、不思議な事もある物だ。
「もう一度自分の胸に手を当てて考えてみて下さい?」
「今日もオレの大胸筋が元気っす!」
「心臓マッサージの必要は無さそうです。」
「そう言う事じゃありません。そもそも元気な大胸筋って何ですか。心臓マッサージの必要がありそうなら返事は出来ないですよね。」
全く、丹野は相変わらず馬鹿な事を言っているな。
今日も暑いから、ちゃんと生きているかの確認をするように言われたんだろう。
しかし確かに心臓マッサージが必要な状態なら返事は出来そうにないな。
まぁ返事が無かったら必要だろうから、その無回答が回答って事で。
「先生が聞きたいのは、どうしてあんなに大量にペットボトルロケットを飛ばしていたのかと言う事です。」
「先生、これには事情があるんですよ。」
「空から大量にペットボトルが降り注ぐ事態になった事を納得させられる程の理由がですか?」
「…………人によっては納得すると思うので聞いて下さい。実は………」
納得するかは人それぞれだけど、私は決して悪い事をしようと思ってペットボトルロケットを飛ばした訳じゃない。
それだけは理解してもらいたい。
だからこそ、この場で先生に説明を聞いて、納得してもらわなくては!
時は昼休みに遡り………
「丹野、聞いてくれ。私、気が付いたんだ。」
「何にだよ。」
「今日も暑いじゃん。」
「そうだな。」
「太陽があるからじゃん。」
「そうだな。」
「太陽を破壊するなり消火するなりしたら、この暑さもマシになるんじゃないか?」
「安達、お前……………」
丹野は私のアイデアを聞き、口を開けて絶句する。
そうかそうか、そこまで私の天才的なアイデアに圧倒されてしまったのか。
それならば仕方がない。
「天才か!?」
「だろ?」
これほどまでに天才的な発想はそう簡単には耳に出来ないだろう。
もしこのアイデアを実践出来たら、この先暑さに悩まされる事は無くなるのだから。
「でもどうやって太陽をどうにかするんだ?」
「水をメッチャ撒いたらいけるんじゃないか?」
「つっても太陽に水を撒こうにも、ホースとかじゃ届かないぜ?」
確かに太陽まではかなりの距離がある。
ホースを最大まで伸ばしても、恐らくは届かないであろう。
しかし、その問題については既に解決策を考えてあるのだ。
私は先程買ったジュースを取り出す。
「そこでこれの出番だぞ。」
「ペットボトル?ホースよりも水を撒けそうにないぜ?」
おいおい、ペットボトルを見せてやったと言うのに………。
思いつくアイデアがそれだけとは発想力が貧相だと言わざるを得ないぞ。
「丹野、ペットボトルロケットって聞いたこと無いか?」
「はっ!まさか!?」
「そのまさか、だ。ロケットって名前に付いてるんだから、結構飛ぶと思うんだよ。ロケットなら太陽にだって行けると思うんだよ。人類はずっと前に月に到達してるんだし、太陽にだって到達出来ると思うんだよ。」
「確かに、ロケットだからな。いける気がしてきたぜ。ロケットだから。」
なんたってロケットだ。
もう響きからして飛びそうな雰囲気しか感じられない。
むしろ雰囲気すら飛ばしそうなくらいだ。
「でも太陽ってデッカイらしいぜ。1つじゃ足りないんじゃねぇか?」
「それもそうだな。いっぱい飛ばすとするか。」
「空を覆い尽くすペットボトルロケットの大軍、圧巻だろうぜ。楽しみだぜ。」
「これで私達も夏の暑さから地球を救った英雄だな。」
「ニュースとか新聞の取材が来た時に答えられるように準備しとかねぇとな。」
「って言う事がありまして。」
「先生は暑さで頭がやられちゃったのかと思いましたよ。」
「大丈夫っすよ。安達は暑さなんかにやられたりはしないんで!」
「丹野………!」
「そもそも暑さでやられちまうほど出来た頭してないじゃないっすか!」
「丹野………。」
さっきまで私の事を天才と認めてくれていたのに、一気に掌を返したな。
誰が元からダメな頭だよ。
丹野よりは出来た頭してるから。
「でも清涼感的な物があって楽しかったっす!またやるかって言われたらやんないと思うっすけど。」
「やっぱり夏はペットボトルロケットですね。別に毎年、夏にペットボトルロケットを飛ばしている訳じゃないですけど。」
「前々から思っていましたが、君たちは小学生みたいな事ばかりしていないでもう少し落ち着いて下さい。」
「少年の心を忘れていないだけです。」
「オレ、小学生の時にペットボトルロケット飛ばした事無いっす。」
「…………とにかく、そう言ったことをやるなら事前に申請して下さい。」
先生は残念そうな表情で話を進めるが、そもそも楽しい事をしたいと言う気持ちに大人も子供も関係ないと思うんだ。
まぁ、申請は………明日以降も覚えていたらするとしよう。
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