ロサンゼルス
「聞いたか、丹野?」
「聞いたぜ、安達。」
「まさかアメリカにあんな秘密があったなんてな。」
「やっぱりアメリカはすげぇぜ。米の国って書くだけあるぜ。」
「まさか、
ロサンゼルスってロス・エンジェルスを表してるだなんて…………。」
アメリカにはエンジェルと、天使と名前の付く街があるだなんて。
「エンジェルだぜ、エンジェル。天使っているんだな。」
「きっとロサンゼルスって天使がそこかしこで飛び回ってる街なんだろうな。」
立ち並ぶビルの隙間を縫って空を飛び交う天使たち。
中々にミスマッチな光景な気がしないでもないが、それはそれで見てみたい。
「それはそれで不穏な感じがするぜ。天使って力尽きた人間を連れて行くイメージがあるぜ。」
「確かに。ある意味、死神的なポジションかも知れない。」
天使がお迎えに来る的な表現をする事もあるし、そう考えると天使が飛び交う街って死傷者が多そうだ。
「って事は実はロサンゼルスってめちゃくちゃ物騒な街なんじゃないのか?」
「言われてみればそうだな。名前しか知らなかったが、一気にロサンゼルスのイメージが鮮明になったぜ。」
今まではアメリカの街、くらいしか知らなかったから、どんな街かと聞かれれば答えられなかった。
しかし今ならば答えられる。
天使の飛び交う、争いや事件が多発する危険な街だと。
でも、そんな街なら私たちの知っている天使はいないのでは?
「物騒な街なら、天使だって今までイメージしていた天使じゃないのかも知れないぞ。」
「天使って言うと、頭にピカピカ光る輪っかがあって、羽が生えてて、白衣を着てるイメージがあるぜ?それがどう違うんだ?ハードボイルドな感じか?ヤンキーな感じか?それともアメコミヒーローな感じか?」
私がイメージしたロサンゼルスに所属する天使は、
「たぶん頭の輪っかはアレだ、土星の周りにある輪っか。」
「マジで!?デカくね!?」
「物騒な街でやってくんだし、それくらいは必要だろ。」
なんたってロサンゼルスだからな。
「それに羽はたぶん全部ナイフで出来てると思う。」
「確かに、物騒な街だったら護身できるようにそれくらいの物は必要か。」
「仮に敵にナイフを奪われたとしても羽に沢山の予備があるから安心だ。」
なんたってロサンゼルスだからな。
「あと白衣は着ていないだろうな。」
「え?全裸なのか?」
「なんでそうなるんだよ。たぶん返り血が乾いて黒くなった服を着てるんだろうなって言いたかったんだよ。」
「なんだ、そう言う事か。」
頭に土星の輪っかを浮かべてナイフの羽を生やした全裸なんて、ただの変態だろう。
いくらロサンゼルスであったとしても、間違いなく警察に捕まるぞ。
「でもよ、オレはロサンゼルスの天使はもう少し違う姿をイメージしたぜ?」
「それはどんな感じの姿なんだ?」
「まず頭の輪っかだが、チャクラムだぜ。」
「チャクラム!?……………ってなんだ?」
忍術を使う時に必要とされるエネルギー的な物か?
「この前見た映画に出て来たんだが、こう、円形の刃物で、飛ばして敵を攻撃するんだ。」
「そんな武器があったのか…………。」
丹野は手で輪っかを作って投げるジェスチャーをする。
でも、それもあり得るな。ロサンゼルスだし。
「それから羽だが、あれはティッシュだ。」
「ティッシュ!?」
「ティッシュなら返り血を浴びても拭けるし、チャクラムが汚れてもすぐに拭って切れ味を取り戻すんだぜ。」
一瞬ショボく感じたが、そう言われると納得出来る。
だってロサンゼルスだし。
「そして白衣だが、医者の着てるアレだ。」
「そうか、分かったぞ。治療が出来るならたとえ傷ついてもすぐに直すことが出来るって事だな?」
「そう言う事だぜ。」
白衣の天使って言う言葉を聞いたことがあるが、そう言う事だったのか。
この言葉の語源はこんなところにあったとは。
でもロサンゼルスだからおかしくはないな。
だってロサンゼルスだし。
「ロサンゼルスって凄いんだな。」
「物騒過ぎて行ってみたくはねぇが、ロマンは感じるぜ。」
「これでまた1つ賢くなった。」
「だな。」
「また馬鹿なこと言ってるが、訂正しなくて良いのか?」
「面白そうなのでそのままにしておきましょう。次のテストにロサンゼルスに関する何かが出て来たら期待できますね。」
「いや、脱線して雑談みたいになった時に出て来た話題が内容が出題される訳ないからな?」
向こうで竹塚と伊江がこっちを見ているが、私達の話していたことが気になるのだろうか。
仕方が無いから、あいつらにも驚愕の真実を教えてやるとしよう。
「竹塚、伊江。良い事を教えてやろう。ロサンゼルスって…………」
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