読書感想文
「小学校の頃って夏休みの宿題で読書感想文がありましたよね。」
「あぁ、そう言えばそんな宿題もあったな。まぁ私にかかれば楽勝だった気がするけど。」
「そもそも安達って本を読むんですか?」
「おいおい竹塚、私の事をあまり見くびるなよ?毎日読書に勤しみ、知識を蓄えているんだぞ。」
「毎日読んでるのってマンガですよね。」
「竹塚、まさかお前までマンガは本じゃないなんて言ったりしないだろうな?マンガだって作者さんが頑張って書き上げた立派な本だろ!」
「いえ、僕もマンガだって本であるとは思っていますよ。でもそれはそれとして安達が毎日マンガを読んでいるからと言って読書家気取りは癪に障りますね。」
書を読むと書いて読書なんだし、マンガだって書に変わりはない訳だから、私が日々読書をしていると言っても間違ってはいない。
それに漫画から学ぶことだってあるはずだから、知識を蓄えていると表現しても問題ないだろう。
「では聞き方を変えましょう。安達はマンガ以外の本を読むんですか?」
「……………もちろんだ!」
「更に聞き方を変えましょう。安達はマンガと教科書以外の本を読むんですか?」
「……………一応!」
「と言うか、そもそも教科書すらキチンと読んでいるか怪しいですよね。」
一応教科書を開いて視界に入れてはいるから。
内容を理解しているかどうかは置いておくとして、文字が書いてあることは認識しているから。
だから実質教科書も読んでいると言えるだろう。
「さっき楽勝って言ってましたけど、一体何の本を読んで感想文を書いたんですか?」
「えーと、なんだったっけな………。確か…………。」
なんだっけなー。
記憶が曖昧で思い出せない。
とりあえずなんか読んで書いた事だけは覚えているんだが…………。
「『シートン動物記』でしょ。1巻だけ。」
「あ、沙耶。」
「忘れ物を取りに来たら、懐かしい話をしてるじゃない。」
私が思い出せずに頭を捻っていると、偶然教室を訪れた沙耶が答えを教えてくれた。
「そう言えばそうだった気がする。」
「どうして本人の安達が覚えていなくて沙耶が覚えているんですかね。」
「しかも最初はマンガの感想文を書こうとするし。」
「そうだっけ?でもまぁ、私にかかればどんな本でも良い感じに感想文を書けるから問題ないし。」
むしろマンガの方が良い感想文を書けると思うんだけど。
そもそも何故、感想を強要されなくてはならないのか。
感じ、想った事ならもっと自由にやっても良いと思うんだ。
「あんたまともな感想書かずに先生に怒られてたじゃない。」
「いや、あれは私の書きたかった感想と文章に込められた意図を読み取れなかった先生側にも問題があると思うんだ。テストじゃ『この時の作者の気持ちを答えよ。』なんて問題を出したりしてるのに、私の感想文を理解する事が出来ないのはいけないだろう。」
「『すごかった。』とか『とてもよかった。』ばっかりで埋め尽くされた感想文の原稿用紙から何を汲み取れって言うのよ。」
「当時から安達の語彙力はヤバかったって事だけは鮮明に伝わってきますね。」
作者の気持ちとか言う出題者にすら正確には分からない、正解だって勝手に決めつけているような問題を私たちに出すと言うのに、その本人は私の文章を汲み取る努力をしない。
私がテストで頭を悩ませるように、出題者である先生も私の文章に込められた意味や、それを書いている時の私の気持ちをもっとしっかりと考えるべきだろう。
「なんだよ、当時からって。私はいつだって表現力溢れる詩人的な存在じゃないか。」
「詩人と言うより外国人ばりの語彙力ですよね。」
「おいおい、そんな英語力が高いって褒めたところで何も出ないぞ?」
「今は日本語の話をしているんですけど。」
「敦に皮肉は通じないから直接的な表現をしないと伝わらないわよ。たまに直接的な表現でも伝わらない時があるけど。」
「それは僕も理解しています。やっぱり日本語を勉強していない外国人レベルですからね。」
日本人で国語の授業にも参加しているのに、日本語を勉強していない扱いって何故だ………。
いや、待てよ?今は日本語があまり得意ではないと言う事は………
「つまりは伸びしろの塊って事か。」
「語彙力は低いのに発想の転換だけは一丁前ですよね。」
「無駄にポジティブな所が唯一の長所と言っても差し支えないもの。むしろネガティブな敦なんて見た事無いわよ。」
「それ程の事でもある。」
明るく前向き。
とても良い長所だな。
それに諦めない強い心の持ち主って、響き的にも主人公感があってカッコいいし。
「安達の往生際の悪さは凄まじいですからね。」
「そうね。どう考えても時間の無駄なのに抵抗するのよね。」
「なんで悪い方に言い直した。」
そこは素直に私の諦めない心と言う精神的な強さを、長所を認めろよ。
物は言い様とは言うけれど、わざわざ長所と言うプラスを短所と言うマイナスに変えるんじゃない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます