第5話デュアルダンジョン

 ――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ――


 何かが鳴動しており、僕の身体にも振動が伝わってくる。

 周囲の温度は高く、じっとしているだけでも汗が噴き出てくる。


「夢だったらいいのにな……」


 僕は現実逃避を試みるが、横をみればマグマが流れており、そのマグマの池からは気泡が立ち上るたびに熱気が漂ってくる。


「デュアルダンジョンってやつかな?」


 物語で読んだことがある。


 デュアルダンジョンというのはいわゆる隠しダンジョンのことで、一つ目のダンジョンをクリアしてダンジョンコアを抜き取ると活動を始める。


 ダンジョン内に新たに出現する入口を発見する事で挑めるダンジョンなのだが、どうやら先程のパンドラスイッチが入り口の魔法陣を起動するためのものだったようだ。


「さて、どうしよう?」


 僕は心を落ち着かせるためどうすれば良いか自分に問いかける。


「現状は最悪」


 それというのも、隠しダンジョンで出てくる敵は難易度が跳ね上がるのだ。

 今の僕では逆立ちをしても勝てっこない敵が出てくるのは確定的なので、至急考えを纏める必要がある。


「後続は期待でき無さそうだよな……」


 もしかするとレックス達が追いかけてきてくれるのではないかと考えがよぎる。


「いや、それはあり得ないか?」


 僕らは訓練生なのだ。予測不可能な事態になった場合一度上に報告する必要がある。

 ミランダはごねて救出に向かってくるかもしれないけど、レックスとセレーヌさんが冷静に状況判断をしていたなら今頃は急ぎで入り口に戻って街への救援要請を行っているところだろう。


 そうなると助けがくるまで少なくとも半日は掛かると思った方が良い。


「取り敢えず、こうしてても仕方ないし移動するか」


 立っているだけで体力を奪われてしまう。救援を待つにしてもここで待つのは適切ではない

 僕は休憩可能な場所がないか探すために歩き始めた。






 しばらく歩いていくとマグマゾーンを抜けたのか随分とましな温度に落ち着いてきた。


 周囲は薄暗く、微かに光る壁以外に光源は無い。

 僕はそこらで休憩を取ろうと思っていると、


 ――ズズンズズン――


 何かの足音で文字通り飛び上がった。

 恐ろしく巨大な何かが動いている。そしてそれは徐々にこちらへと進んでいて、このままでは鉢合わせしてしまうのだ。


「これ、絶対やばいやつだ」


 僕は焦りを浮かべると背後を見る。

 ここまでが一本道だったので途中で隠れられるような場所は見当たらない。


『グルルッルルルッ!!!』


「!?」


 その足音よりも別の生き物の声が聞こえる。

 音の大きさに気を取られて聞こえなかったが、すぐ近くまできている。


 多分だが、この足音から逃げているのではないだろうか?

 いずれにせよこのダンジョンで遭遇する敵では勝ち目がない。


 時間にするとあと数秒で鉢合わせする。


「まずいっ!」


 対処方法を思いつかなければ二度目の人生が詰んでしまう。


 僕は脳をフル回転させると――

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