第43話見習い探索者(仮)
「さて、今日はまだ日も高いし準備をするか」
僕は得た情報を活かすために早速行動を開始する。
『マスター、妙に張り切ってませんか?』
「時間は有限だろ? 学校が始まるまでにやっておきたいこともあるし」
そう言って訪れたのは装備を取り扱う武器&防具の店だ。
「すいません。駆け出しの探索者用の装備を見せて貰いたいんですけど」
僕は店に入るなり、奥で剣を磨いていたおじさんに声を掛ける。
「それだったらそっちに展示しているセットがそうだな」
僕のように駆け出しの探索者が良く買いに来るのか、短剣に皮鎧とランクⅠのダンジョンに潜るのに不都合が無い装備が置いてある。
「これ下さい」
「はいよ。銀貨10枚だ」
僕は言われた通りのお金を渡すと――
「すいません。ついでに着替えて行っていいですか?」
「構わねえぞ。何か不具合があったら言えよ。調整してやるからよ」
怖そうな顔をしているが意外といい人ぽい。僕は着替えを終える。
『うーん、なんか急に弱く見えますね』
新品の装備ということもあり、どこからどう見ても駆け出しの探索者にしか見えない。実際、その通りなんだけど。
「ありがとうございました」
お礼を言うと出て行こうとする。
「おう、強くなって次はもっといい装備を買ってくれよな」
おじさんは笑顔で送り出してくれた。
『マスター次はどこに向かってるんですか?』
僕が速足で迷いなく進むのでイブが気にしだした。
「取り敢えず、ロベルトに渡して無くなったポーションの補充はしておかないとね」
現状僕は回復させるようなスキルや恩恵を持ち合わせていない。
なので、怪我をしたらポーションを使う必要がある。
そうこうしている内に到着した錬金と魔法の店……つまり以前水を売りに来たお婆さんの店だ。
「こんにちはー」
「おやおや、この前の。また水を売りにきたのかい?」
お婆さんも僕の事を覚えていたようだ。
「いえ、今回はポーションを買いにきたんです」
水に関しては仕入れたいところではあるが、現状では1人ではダンジョンに入れないからね。
お婆さんは僕の注文を聞くと奥からポーションを取ってくる。
「そう言えば試験はどうだったんだい?」
「ええ、まあ何とか合格できました」
「あれまあ、それはめでたいね。お祝いにポーションをサービスしておくよ」
お婆さんはそう言うと更に奥からポーションを持ってきた。
「いいんですか?」
「構やしないよ。あんたがアカデミーを卒業して一流の探索者になってくれれば贔屓にして貰えるだろうからね」
王立総合アカデミーの生徒という肩書はこういうところでも有利に働くようだ。
もっとも、まだ駆け出しの人間にポーションをサービスしてくれるのはお婆さんの優しさに他ならない。
「そう言えば、あれから特殊ダンジョンのコアって仕入れましたか?」
来たついでだ。もし仕入れてあるのなら買い取りたい。
「特殊ダンジョンはあまり出現しないからねぇ。私の販売ルートでも極たまにしか入ってこないんだよ」
残念ながら入荷して無いらしい。
「わかりました。もし入手できたら買い取らせてください」
なので、入荷した時に確実に確保できるように話を進めておく。
「変な子だね。大がかりな魔法陣でも書くつもりなのかい?」
いぶかしむお婆さん。まさか他の用途で使っているとは説明し辛いので……。
「ええ、ちょっと魔法陣の研究をしている人がいて、買い出しを頼まれてるんですよ」
「なるほど、そう言うことなら取っておくよ」
お婆さんと約束をすると店を出るのだった。
『ううん。新しいコアが無いのは残念ですよマスター』
イブが残念そうな声を出す。確かにコアのコレクションはイブにとって重要な要素だからな。
本日、それなりのコアと化け物クラスのコアを見たのだ。それなのに一つも新しいコアが手に入らないのでそわそわしているのが伝わってくる。
『それで、次はどこに向かっているんですか?』
相変わらず目的地へ一直線に向かう動きを見せている僕にイブは疑問の声を投げかけた。
僕は間もなく到着した目的地のドアをバンッと開くと――
「探索者ギルドだよ。ランクⅣのコアを手に入れる為にね」
――そうイブに答えるのだった。
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