第23話風と土のダンジョンⅡ制覇

「さて、そろそろ戦闘にも慣れてきたし他の事をしたいかな」


 あれから、得物をコボルトの長剣に持ち替えた僕は数十程のモンスターと戦闘をして経験を積んだ。


 そのおかげもあってか、戦闘に対する恐怖が薄らぎ、かたさも取れてきた。

 学生の試験会場として使われているだけあってか、苦戦させられるようなモンスターとは遭遇していない。


 魔核の回収にしても、フィールドだといちいち燃やしてコアを取り出さなければならないので手間と時間が掛かる。その上…………。


『やはりこんな魔核じゃ物足りないですね』


 モンスターの強さによって魔核の質も変わるらしく、雑魚モンスターの魔核ではイブも満足できないようだ。


「取り敢えず、他の属性のダンジョンコアでも取りに行くか」


 基本属性の土と風はこの無人島にも存在しているのはイブが教えてくれた。

 なので僕はイブに指示を出すと目的のダンジョンを目指して歩き出した。





『お疲れ様ですマスター。これでお部屋が充実しましたよ』


 ご機嫌な様子で話しかけてくるイブ。あれから急ぎ足で土と風のダンジョンを制覇したのだ。


「とはいっても、ダンジョンランクⅡだったし」


 先日読んだ教本によると、ダンジョンランクはⅠ~Ⅶに定められている。

 単一属性のみの敵が出るのがⅠ~Ⅳまで。


『確かに、火のコアがⅣで他はⅡですからね。私としてもバランスが大事だと思います』


 デュアルダンジョンで拾った火のコアはⅣだった。基本的にダンジョンのレベルとコアは連動しているのだ。

 強力なコアの方が強力な魔法が使える。なので、出来るだけ強いコアを持っている方が先々楽になる。


「それに。ボスが居なければ退屈するのは変わらないしな」


 ボスが存在するのはランクがⅣ以上のダンジョンから。その線引きもあってかⅠ~ⅢとⅣ以上には明確な差があった。


「今思えば、あの時のダンジョンですれ違ったのってボスだったぽいよな?」


 ザ・ワールドに逃げ込んだ時に通り過ぎたあと、何かが蹂躙していた。

 あれはボスモンスターが徘徊していたのだろう。


 ボスの癖にゴールで待たないとかおかしいだろうと思ったりもするが、相手は生物なのだ。そうそうこちらの都合なんて考えてくれない。


 下手をするとダンジョンに入って最初に遭遇する事もあるらしい。

 そう考えるとあの時、ボスが徘徊していてくれて助かった。現時点でなら負けない自信があるのだが、コアもスキルも揃っていないあの時点でザ・ワールドがなければ詰んでいたところだ。


 そんな事を考えていると…………。


『マスター! あぶないっ!』


イブの忠告で咄嗟に顔を逸らすと――


 ――ドゴッ――


 後ろの木に穴があいた。


「なんだ今の?」


『わかりません!』


 何かが動いているのか、周囲で風切り音がする。


「目で追いきれないぞっ!」


 このままでは埒が明かない。正体不明の襲撃者に僕は即座に判断を下す。


「イブ。スピードのコアを3つ使用する」


『かしこまりました。マスター』


 一瞬で世界がスローモーションになっていく。イブが僕の指示通りにスピードのコアを使ったに違いない。


 視界の端にキラキラ光る何かが移る。そして――


「見えたっ!」


 透明な何かが飛行して僕へと突撃してきた。僕は何とかかわすのだが、攻撃を仕掛けようと思った時にはこちらの攻撃範囲外でとらえられない。


「こうなったら……」


 僕は周囲を警戒すると。


「イブ! いまから入り口を開くっ!」


『はい。マスター』


 短く説明をしている余裕はない。だが、イブは僕の考えを読み取ってくれた。


「今だっ!」


 ザ・ワールドの入口を開き、横っ飛びに避けると。


『マスター! 入りましたっ!』


「よしっ! 中で追い立てて檻に閉じ込めろっ!」


 そう言って逃げ道である入り口を消す。


 フィールドならば自由自在に動けるのかもしれないが、ザ・ワールドの中はイブのテリトリーだ。徐々に壁を狭めていき逃げ場を塞いでやればこちらのもの。


『確保しましたっ!』


 程なくイブからの報告が上がってくる。


「よし。僕も見にいくぞ」


 先程見えた襲撃者の正体とある童話の話を思い出すと僕は部屋の中へと入っていった。

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