第17話特殊のコア(中)
「さて、次は少し大きめのコアの鑑定だな」
僕は一つ手に取ると台座に置く。そうするとイブがキラリと光ると早速鑑定を始める。
『これは…………クリーンの魔法が使えるコアですね』
「クリーン?」
いかにも便利そうな名前が出た。
『部屋の掃除をしたり、身体を綺麗にしたり、とにかく身近なものを清浄するスキルのようですよ』
「そう聞くと普通の能力だな」
だが、普通にやることはできても時間が掛かるのは間違いない。
それを魔法一つで解決できるのなら十分使える能力だ。
もっとも、たった一つだけ貰える恩恵がこれの場合は本気で泣くしかないのだが………………。
『早速使ってみてください。マスターは今日一日歩き回って汗臭いですし』
鼻が無いから分かる訳が無い。適当に言っているだけなのだろうが、イブにそう言われると急に気になり出す。
僕はファイアを使う要領で手をかざすと、
「クリーン」
唱えると身体が暖かくなり、蒸気のようなものが立ち上がり始めた。
「なにこれ! 凄いスッキリするんだけど!」
温泉でアカスリをした時のような、身体中の汚れが毛穴の中まで取れたようで肌がスベスベになった。
「これ、普通に凄い力なんじゃ?」
ただの恩恵の域を超えている。試しに散らばっている地面に向けてもう一度クリーンを使うと小さなホコリや砂が消えた。
『マスターの力があってこそですよ。使い手のレベルが低ければここまで強力になりませんから』
「僕ってそんなにレベル高くないだろう?」
先日まではゴブリンにも苦戦する程度の力しか無かったのだ。
恐らくこのスキルを覚えた人間は当然戦闘になど出ないだろうから最低レベルで効果も最弱なのだと思う。むしろ一生使わない事もありえそうだ。
『えっ? だってマスター昨日はあんなに沢山のモンスターを倒したじゃないですか?』
「あっ!」
そこで思い出す。あまりにも簡単に魔法で倒していたので思い至らなかったが、確かに普通に戦えば苦戦する相手だったのだ。
結果として僕のレベルが上がったお陰でスキルもレベルアップしたということだろう。
「という事は、レベルが高ければ恩恵も有用になるのか?」
恩恵やスキルは本人の技量との掛け算なのだろう。熟練の人間が使う事で威力が異なる事はありえる。
『マスターならどんな微妙な能力でも使える力に変化できそうですね』
イブの言葉は的を得ている。
そもそも、なぜ微妙な恩恵と言われるのか。それはこの世界の人間が、微妙な恩恵を持つ人間を育てないからだ。
最初の適正をみてどう考えても使え無さそうな恩恵の場合そのあとは見向きもされない。
適正無しという事で学校に押し込んだあとはお定まりの授業をさせてそのまま街の仕事に就かせる。
経験が積めないのでいつまでもレベルを上げることが出来ない。そうなると微妙な恩恵は陽の目を見る事は無い。
だが、それも仕方ない事かもしれない。
鍛えれば使えるようになるかもしれないといっても、鍛えるのに多大な労力とリスクが発生するのだ。
だったら、最初から使える人材に絞って鍛えた方が良いに決まっている。
僕みたいに微妙な恩恵スタートでも、手を差し伸べてくれるような幼なじみがいれば話は違ったのだろうが……。
レックスとミランダの笑顔が浮かんだ。
「取り敢えず残りの鑑定を進めよう」
僕が次々にコアを台座に乗せていくと、
『毒耐性、麻痺耐性、魅了耐性、混乱耐性、暗闇耐性、睡眠耐性、石化耐性、火耐性、水耐性、風耐性、土耐性です』
イブが次から次に鑑定をしていく。
「そんなに一杯……凄いな……」
ちなみに耐性が恩恵の人間はそれぞれの耐性が必要な仕事に就かされる事が多い。
毒耐性なら毒の沼地や空気環境が劣悪な場所だったりとか……。
有用ではあるが、あまり人気の無い恩恵だったりする。
そして、上位恩恵には【無効】がある。それぞれのバッドステータスを無効化してくれる強力な恩恵なのだが、やはり配属先は…………。
「よし。このスキルを所有している事は誰にも言わないようにしような」
僕は将来の事を考えてこのスキルは秘匿する事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます