第16話特殊のコア(小)
「さて、早速だけど整理してみるかな」
僕は目の前に並べられた各道具を見渡す。
明日より始まる試験で必要と思われる道具を購入したのだ。
『それにしてもマスター買い込みましたね』
受験要項には「ダンジョンに潜っても問題ない用意をするように」と書かれていた。
なので必要と思われる物を次々と購入してはザ・ワールドの中へと放り込んだのだ。
毛布は予備を含めて三枚。ランタンや縄。そのほかピッケル。食料は大袈裟かもしれないが保存食を含めて数週間分用意した。
それらを一つずつ点検していき、問題が無い事を確認する。
「あとはこいつだな」
それらの探索者用の道具とは別に避けておいた購入品を手に取る。
『マスターはやく試してみましょうよ』
イブが作った簡易台の上にそれを並べて行く。
透明な石は大中小揃えて全部で60個。金貨12枚支払ったので1個の価値は大体銀貨20枚になる。
これまで僕のザ・ワールドは魔核を取り込んでは空間を拡張させたり、ダンジョンコアを取り込んでは環境を整え魔法を覚えさせてくれた。
そのお陰もあり、雑魚モンスターに苦戦する事無くダンジョンを制覇したりできたのだ。
僕はこの恩恵は特殊な力を持つ石から能力を引き出すものだと推測した。
であるならば、魔道具を使って引き出せない能力でも僕なら使える可能性があるのでは無いだろうか?
「まず一つ試してみよう」
そう言って台座の上に小さなコアを置く。イブのような球体ではなく、角がゴツゴツしている指先程の石だ。
「イブ。どうだ?」
僕が石を置くと、イブが台座にその石を取り込み。
『少々お待ちください…………………………解りましたっ!』
少し待つと明るい声で返事をする。そして…………。
『マスター。これはスピードの能力があります』
「スピード?」
『使うと敏捷度が2倍になるスキルですね』
「それは……中々強力な能力じゃ無いのか?」
僕のような一般人でもこれがあれば敏捷度だけなら熟練の戦士と張り合えるだろう。
どうやら思っていた通りらしい。特殊ダンジョンのコアは不良品なんかじゃない。
この世界の魔道具では扱いきれないだけで僕には有効なアイテムなのだ。
僕は期待を露わにすると次の石を台座へと乗せる。
『うーん。これはパワーの能力があります』
パワーとは筋力が2倍になるスキルの事だ。これを恩恵として授かった人間は騎士や戦士に就く事が多い。
『こっちはマジック。そしてこちらはラックですね』
小さめの石から順番に鑑定していってもらった結果以下のようになった。
・スピード×10個
・パワー×8個
・スタミナ×9個
・マジック×7個
・ラック×12個
『小さな石なので1回使用すると無くなっちゃいますね』
なんでも、このコアの大きさでは力を溜めておくことが出来ないらしく、一度使えばすべての能力を解放してしまうようだ。
「そうなると1回の使用で銀貨20枚って事か……」
気軽に使う事は出来なさそうだな……。
それでも一時的にブーストを得られるというのは安心感がある。
普通の人間であれば恩恵として一つ授かれば良い能力なのだ。
課金ブーストになるけど全能力を倍加出来るのはすさまじいアドバンテージだ。
「取り敢えずこいつはイブが保管しておいてくれ。使う時は指示をするから」
『はい。任されましたよ』
流石は管理者だけある。快活よい返事をしたかと思うとコアを台座の中へとしまいこむ。
「次は残りの石だな」
残った石は大が2個、中が12個。
恐らくは小のコアよりも大きな能力を秘めているに違いない。
僕はまず、中の石を台座に乗せた。
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