第34話冷室にて魔物を保存する
『マスターお疲れさまでした』
夜になると、僕はザ・ワールドの中へと戻った。
「慣れない事をしたから流石に疲れたよ」
周囲の警戒は引き続きイブに任せている。
ロベルト達にテントに誘われたのだが、流石にそこまでは付き合えない。
「それにしても、結構広くなったね?」
ルーム内は朝の段階よりも格段に広くなっている。カイザーにダイアウルフを食べさせて得た魔核を使ったからだ。
『本当にモンスターさまさまです。美味しいのでもっと一杯来ませんかね?』
イブにかかればDランクモンスターも御飯のような存在らしい。本来は危険な相手なんだけど。
「クエエー」
「おっと、カイザーもお疲れ。良く働いたな」
飛び込んできたカイザーを抱きしめて撫でてやる。そして一日の疲れをとるためクリーンをかけてやった。
「クエックエッ」
機嫌が良いようだ。しばらくの間構ってやっていると満足したのか畑のスペースに用意した自分の巣へと戻っていった。今夜はもう寝るらしい。
「イブ。冷室が見たい」
『はい。あちらですよ』
案内されるままに向かう。
『仕留めたモンスターは血抜きをしたうえでこちらに保存してあります』
ドア一枚を挟むと急激に温度が下がる。
ここはルーム内に用意した倉庫で、モンスターの死体が傷まないように温度を下げているのだ。
「へぇ。結構な数を仕留めたんだな」
余程この辺にはモンスターが溢れてたのか、今まで無人島で過ごしてきた中でも最大の狩果だ。
『解体もできなくは無いですけど、マスターの知識を参照したところあやふやな部分がありますからね』
イブは僕の知識を閲覧する事ができる。なので、エリクとして小動物を捌いた経験は持っているのだが、高ランクのモンスターを解体するのは難しいらしい。
「まあ、街に戻れば依頼をかけてみるよ」
世の中には解体専門の職業が存在する。
冷蔵保存しているので慌てて処理する必要もない。こういうのは専門家に依頼した方が効率的だ。
僕は段々寒くなってきたので確認を終えるとその場をあとにするのだった。
「さて、そろそろ寝ようかな」
すっかりやる事も無くなったしちょっと早いけど休みを取ろう。
着替えを終えて布団に横たわる前に身に着けていた物をテーブルへと並べていたのだが…………。
『マ、マスターそれっ! なんなんですか?』
「ん。それってどれ?」
『そのペンダントですよっ!』
ロベルトから貰ったペンダントにイブは興味を示した。
「ああ、それ? さっきロベルトから貰ったんだよ。お守りだとかなんだとか」
幸運が身に付くラッキーグッズだったかな?
そんなオカルトじみた話がイブに通用するのか考えていると……。
『それっ! コアですよ!』
「なんだって?」
僕は驚きの言葉を漏らすのだった。
『マスター早く見せてください』
イブが急かすので、僕はペンダントを改めて手に持つ。確かに何か凄みを感じるようだが……。
「ダンジョンコアってこんな小さいか?」
大きくなるほどにランクが高くなるように感じる。これでは特殊のコアの小さい石と変わらぬ程度だ。
『基本的にそうなんですけど、そのコアは密度が濃い感じがします』
イブの申告に僕は期待を膨らませる。もしかすると凄いコアだったりするのだろうか?
僕はイブに促されるように台座にペンダントを乗せるとイブの鑑定を待つ。
『やっぱりコアでしたね。現在保有するコアの中でもっとも強い力を備えてますよ』
そう言うと黙り込む。どうやら本格的に調べ始めたらしい。
『マスターわかりました』
随分時間が経つとイブはようやく口を開いた。
「それで、今度はどんなコアだった?」
鑑定結果をはやる気持ちで確認すると。
『はい。このコアの恩恵は【幻惑】です』
「……幻惑?」
いまいちピンとこない名前に僕は困惑した。
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