第288話 次の目標は……?
「では、次に狙うアルカナダンジョンは、ブルマン帝国北部にある森のどこかに存在している。【ⅩⅣ】に決定と言うことで!」
長時間の協議の末、僕らが次に攻略すべきダンジョンが決定する。
「ん、他に選択肢もなかったしね」
僕らがこのアルカナダンジョンを攻略することに決めたのには理由がある。
基本的に、現在所在が確認されているアルカナダンジョンは、それぞれの国が管理している。
アナスタシア王国やシルバーロード王国では【月の欠片】や【太陽の欠片】が重要な資源となっていたし、他のアルカナダンジョンも場合によっては国が利用し、必要な時にのみ入ることを許されているのだ。
そんな中でも【ⅩⅣ】はブルマン帝国の領土にありながら、森の奥のどこかに存在しているとされているため、帝国の管理下にない。
攻略してしまっても後から揉めることがないので、僕らが優先して狙うのならここが一番良かった。
「それにしても、森の奥となると厄介。迷ったら出るのにも苦労する」
聞くところによると、アルカナダンジョンがある森は木々が高く、陽の光も差し込まない天然の迷路と呼ばれているらしい。
迷い込んだ人間が二度と出てこられないと言われており、毎年何名もの人間が入り行方不明になっているとか。
「僕等なら、最悪、ゴッド・ワールドに入ることも、食糧を用意することもできるから飢え死にすることはないと思うけど……」
「マスター、もしもその森がアルカナダンジョンの影響下にある場合、ゴッド・ワールドへの接続が妨害される可能性もあります」
確かに『ザ・デビル』のアルカナダンジョンで、僕らは転移魔法陣の罠で分断された。さらに、ゴッド・ワールドへのゲートも開くことができなかったため、最奥に転移した僕はともかく、ペアでダンジョンを進まなければならなかった皆はそれなりに苦労したらしい。
今回もそれが起こらないとは限らないので、出来る限りの備えはしておくべきだろう。
「多分、空を飛べば脱出は出来るかもしれないけど、ダンジョンの入り口を発見できないなら根本的な解決にはならないと思う」
ルナも問題点について話始めた。今回はダンジョンの入り口から発見しなければならないので、これまでと勝手が違う。
「そうなると、森の中でも方向感覚を失わない人物に案内してもらう必要があるか……」
僕はアゴに手を当てると、これまで出会った知人の中から適切な人間をピックアップしていく。
「誰か心当たりがある?」
ルナの言葉に僕は頷くと、
「まあ、付いて来てよ」
笑みを浮かべると、心当たりへと向かうのだった。
「エリク、随分と久しぶりじゃねえか」
「トーマスさん、久しぶりです」
モカ王国の冒険者ギルドを訪れた僕は『銀の盾』の団長であるトーマスさんと再会していた。
「お前もアカデミー卒業したんだったな、何度も勧誘したのに断りやがって」
過去に、アカデミーに所属している間にダンジョンに入りたかった僕は、荷物持ちのバイトとしてトーマスさんのパーティーに志願したことがあった。
その時に散々世話になったのがきっかけで交流を重ねていた。
「申し訳ありません」
そんな縁もあり、クランに誘ってくれたのだが、僕にはやることがあったので断ってしまったのだ。
「いいから。それで、そっちの二人がお前の仲間か?」
「ええ、イブとルナです」
僕はトーマスさんに二人を紹介しておく。
イブは愛想よく笑うと頭を下げ、ルナは無言で少しだけ頭を縦に揺らした。
「このやろぉ、こんな綺麗な女性二人とパーティーを組むとは、どれだけ誘ってもなびかないわけだよ!」
トーマスさんは僕の首を絞めるとそう言った。心なしか本気で締めている気がする、ちょっと息が苦しい。
彼なりのスキンシップということでされるがままになっていると、じきに解放された。
「それで、今日はどういった用件なんだ?」
トーマスさんは僕を解放すると用件を聞いていた。
「ジンさんはいらっしゃいますか?」
「ああ、奥にいるから、誰か呼んできてくれ」
トーマスさんの声が聞こえたのか、その場にいた銀の盾のメンバーが走って行く。
「エリク。ジンって?」
ルナが僕の服を引っ張ると質問をしてきた。
「ジンさんは、このクランに所属しているエルフで、弓の名手なんだ」
以前、一緒にダンジョンに潜ったことがあるのだが、矢に風を纏わせ的確に敵の急所を射抜く腕前は見事の一言に尽きた。
「もしかして、その人に案内をお願いするつもりなんですか?」
イブは僕の考えを見抜き言葉にする。
「あん、どういうことだ、聞かせろよ」
トーマスさんが怪訝な顔をしたので、僕はアルカナダンジョンを探していることを軽く説明して聞かせる。
「エリク、久しぶり。元気だったか?」
そうこうしている間に、ジンさんが姿を見せた。
「それにしても、大きくなったなぁ」
ジンさんは子供の成長を喜ぶように目を細めると僕に笑いかける。
「そんなに、変わりますかね?」
「知り合ってから三年もたつからな、人族は成長が早い」
そう言ったジンさんは変わっていない。エルフは長寿なので姿の変化には長い時間がかかる。
「それで、俺に用があると聞いてきたんだが……」
ひとしきり懐かしむと、ジンさんは用件を聞いてきた。
「実は、ブルマン帝国北にある森、その中にあるアルカナダンジョンに用があるんです。ジンさんに森の案内をお願いできないでしょうか?」
僕の言葉に、ジンさんは驚き、戸惑いの表情を浮かべた。
「駄目ですかね?」
僕は彼の表情の変化に気付きながらも確認をする。
しばらくの間、苦い表情を浮かべていたジンさんだったが、溜息を吐くと僕らに向き直り話始める。
「以前話したことがあったかもしれないが、俺は親から絶縁されて里を出た。それがその森なんだよ……」
「!?」
ジンさんのその言葉に、僕らは固まった。
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