第14話王都

「ふぅ……やっと到着した」


 疲れ果てた声が漏れる。


『やっとも何も。まだ王都に到着したばかりです』


 イブから呆れが混じった声が聞こえる。


「煩いな。色々あっただろうが」


 ここは王都の駅だ。

 この世界では魔力で動く魔道列車や魔道車といった乗り物が存在する。


 比較的近い距離を移動するのが魔導車。長距離を大量の物資を運んで移動するのが魔道列車だ。


 他にも金持ちだけが使う事が出来る転移魔法陣などの移動手段もある。


 僕は現在、試験を受けるために上京してきたのだが、途中の乗り換えやら何やらで駅内が入り組んでいた為迷子になった。

 最終的に近くを歩く親切な人に声を掛けて事なきを得たのだが……。


『流石王都ですね。ダンジョンの気配をビンビンに感じます』


 一方、イブはうきうきとした様子で王都の様子を探っている。


「やっぱり人が多い場所の方がダンジョンはできやすいんだな」


 人が多く集まる場所ほどダンジョンが生成されやすいという説がある。


 こちらの世界では常に何処かにダンジョンが発生している。

 ダンジョンは様々な恩恵を人間に与えてくれる恵もの。


 もちろん高位のダンジョンともなればモンスターが湧いたりして危険が伴うのだが、国や人類にとってダンジョンから得られる資源は無くてはならないものなのだ。


 そんな訳で、僕が王都行きを決めた理由の一つはダンジョンがあるからなのだ。


『それで、早速ダンジョン潜ります? 私のおススメは最近できたばかりの土と風のダンジョンなんですけど』


「悪いけど今日はそんな事してる暇はないぞ」


 推薦書を受けると言ってからまだ二日。急ぎで上京してきたのは試験が翌日に迫っていたからだ。

 本来なら恩恵に目覚めた時点で通う学校を決めるのだが、僕の能力が未知数だったので受験先が変更になったのだ。


「取り敢えず受験の為の準備と今日の宿の確保だな」


 渡された要項にも書かれている。試験のために必要な装備一式と食料や消耗品各種を用意するようにと。

 僕は諦めきれない様子のイブを窘めると駅を出るのだった。







「すいません。買取をお願いしたいんですけど」


 錬金術の店に入るとお婆さんがいた。


「ほう。これは可愛いお客さんだ。何を売ってくれるのかな?」


「僕もうすぐ16なんですけど?」


「あらら。という事はアカデミーの学生さんかい?」


「いえ、これから試験を受けるんですよ」


「そりゃ失礼。あそこの試験は年々難易度が上がってるからね。落ちたからって落ち込むんじゃないよ?」


 落ちる前提の話に微妙に反応がしづらいが、決して悪い人ではなさそうだ。


「それで、ダンジョン産の水を売りたいんですけど」


「ダンジョンの等級は分かる?」


「えっ?」


 お婆さんの質問の意味が解らない。


(イブ。等級って何?)


『人間界のランク分けは私にはわかりませんよ。この水のコアを見る感じそんなに高くは無いと思いますけど』


 イブに聞いてもわからない。聞く事で恥を掻くかもしれないが、ここで曖昧にしておくと知る機会が無いかもしれない。


「すいません。等級ってなんですか?」


 僕は素直に聞くことにした。


「等級ってのはダンジョンの等級さ。汲んでくる水の質は等級によって変化する。Ⅰ~ⅦまであってⅦが最高ランクさ」


 へぇ。僕の記憶には無いというより、田舎の子供が得られる情報に限界があったんだろう。


「等級がわからないと買って貰えないですよね?」


「今回はこっちで調べるから、その鑑定結果での買取になるよ」


「それで結構です」


「じゃあ、付いておいで」


 そう言うと、お婆さんは奥へと入っていった。


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